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第30話 商会名


 澄み渡る一面の青空の下、今日も商人達や荷車を押す人夫達が、慌ただしく大通りを行き交っている。


 ここ、王都エクロンのメインストリートは、南門にある港から、荷揚げされた物資が運搬しやすい様、街の中心部に向かって伸びる道幅の広い表通りになっており、その道沿いには、フィリスティア王国中の商会の店舗、はたまた、国外の大商会の支店などが、軒を連ねて並び建っていた。



 その一角にある、一際大きな白い建物から、少女のものと思われる、良く通る怒鳴り声がメインストリートに響き渡った…





挿絵(By みてみん)





「このアホベルーー!!」


「なんだって、わたしの商会の名前がこんな事になってるのよーー!? 一遍、死んどく? いや、死になさい!」





 アナは、ベルの首に右腕を回し、左上腕あたりを掴み、その左手で相手の後頭部を押して絞めている。所謂、裸絞めというものだ…


 ベルは流石にギブアップと、アナの身体をタップしようとしたのだが…


 気付いてしまったのだ…


 背中越しに伝わる、アナのまだ新芽の様な膨らみと柔らかさを…







 こ、これは!? もしやアナの…


 まだまだ、お子様だと思っていましたが…


 大人への階段を昇り始めたのですね!


 この年齢の女性にしかない、素晴らしい感触です!


 いやー 僕はなんて貴重な体験をさせてもらっているのでしょうか!


 ありがとう! アナ…





「・・・・・・・・・・・・・・・・・」






 カックン、と項垂れ、意識を天国へと旅立たせたベルであった…










 王都エクロンに居を構えている、商人ギルドのフィリスティア王国エクロン支店。本店は、ザンビアーナ地方にある、アンティゴノス古王国にあるのだが、今は、省かせてもらおう。


 商人ギルドの主な役割は、簡単に言ってしまえば、銀行である。地球に存在する銀行とは、少し形態は違うのだが…


 このギルドにもランクがあり、冒険者ギルドと同じく、星でランクを表している。ランクの上げ方は、解りやすく、年間でどれだけ商人ギルドに、お金を預けられたかで決まるのだ。

 その預けられたお金から、18%を所属している国に税金として支払い、2%を商人ギルドに手数料として取られる仕組みになっている。


 税金で取られるのなら、誰も預けないのでは? と、思うだろうが… この世界のお金は硬貨なのだ。大量の貨幣は、かさ張る上に重たい。

 それに、街から街への商品の移動には、魔獣や盗賊、海賊などの危険が付きものなのだ。

 

 決済を行うには、その街に1つはある商人ギルドで、個人の魔力を認識して他人が使う事のできない魔導具、商人ギルドカードを使う事が、商人同士の安心と信頼に繋がっていた。


 ちなみに、この商人ギルドカードを作れる魔導具も、大昔にバアルと言う名の大魔法士が作ったとされている。





 この商人ギルドで、新しく商会を立ち上げる者達が通される一室で、アナはギルド職員に詰め寄っていた。自分達の商会の名前を直せないかと…


 何故、この様な事態になったかと言うと、そもそもは、アナの不用意な言質がいけないのだ…






「この商会の会頭は、わたしが良いと思う人、手を挙げてー」





「・・・・・・・・・・・・・・・・・」





 1人寂しく挙手をしているアナがいた…






 ベルの胸倉を掴み、脅す様な目で見つめるアナ。






「どーして、ベル君は挙手をしていないのかな? わたし解らないなー あっ! し・に・た・い?」






「はははは… 死にたい訳ないですから… でも、普通に考えてフェルしか会頭はいないと思うのですが…? 頭もキレますし、年長者ですからね! アナは売り上げの計算とかできるのですか?」 





 そこにフェルが割って入ってきた。





「歳は関係ないよ。 私なんかより、ベルの方が適任だと思うよ! ベルの計算の速さは知っているし、なんと言っても、この商会の要は、ベルの作り出す商品だからね!」





「なっ!? 兄さま! こんな、ちんちくりんの顔だけしか可愛くない、平民に会頭なんて任せたら… わたし達の立場が…」






「アナ… 立場なんて関係ないんだよ? できる人間がやるべき事をする、それで良いじゃないか…」


「それに、ベルの顔が可愛いって、どさくさに紛れて認めちゃっているよ?」





「・・・・・・・・・・・・・・・・・」





 ボコッ!

 ボコッ!

 ボコッ!

 ボコッ!





「大丈夫よ! 兄さま! これで、ベルの記憶が無くなる筈だから!」






 ベルが目覚めた時、目の前には、アナが顔を真っ赤にして睨んでいた…






「わ、忘れた?」





「なんの事でしょうか…? 僕にはさっぱりですよ… アナが僕の顔がタイプって事くらいしか思い出せません…」


「そんな事より、アナ! 僕の言う条件を1つ飲んでいただけたら、アナが会頭をやる事に挙手をしてもかまいませんよ?」






 その後、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、殴られようやくベルの記憶が薄れた頃に、条件を交わした…

 それは、ベルに商会の命名権を譲る事だった。 


 その結果、アナが会頭になる事が多数決で、めでたく採択されたのである。喜びの歓声を上げているアナを余所に、ベルは商会立ち上げの羊皮紙に、商会名を記入していくのだった…






 出来上がった、商会用のギルドカードに刻まれた、商会名は…






『ゼブル商会』




















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