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第20話 MPポーション



挿絵(By みてみん)



 ここは、フィリスティア王国・王都エクロン。


 輝くように透き通ったエメラルドグリーンの海に反射する、青い空と白い街並み。


 そして、そこに響き渡る殴打音…




「ぶへっ!?」



 少年が、王宮門衛兵の槍の柄で殴られていた…





 いったい、何故この少年が殴られなくてはならなかったのか…

 時は、前日にさかのぼる。












「おぉぉー 空が広い! 街が白い! ファンタジー!」




 街中で、大空に両手を伸ばし何か叫んでいる銀髪の少年がいた。


 この世界に生まれ出でて苦節5年。べアル・ゼブル・フィリスティアは浮かれている最中である。

 それはそうだろう。何せ、この5年間1度も後宮の部屋を出る事を許されていなかったのだから…






 いやー、素晴らしい街並みですね!


 僕の部屋からは外が見えませんでしたからね…


 ようやく、異世界っぽくなってきましたよ!


 くん・くん・くん… 何か良い匂いがしますね…




 ベルには、浮かれすぎて忘れている事が2つある。1つ目は…


 


「へい、いらっしゃい! 坊主! 王都名物、焼きウサギ魚だよ! 食っていくかい?」





「ウサギ魚!? な、何ですか!? グロイ… だけど、美味しそうですね!」




 ウサギ魚とは、この近海で獲れる、ウサギの下半身が魚になっている生き物だ。海の上をピョンピョンと跳ね回る。その味は…





「おじさん!お1つくださいなー」

 



「おう! ありがとよ! 1つで500エルだよ!」






「・・・・・・・・・・・・・・・・・」






「…僕… お金持っていませんでした…」






 

 ベルは一文無しであった…

 このティルス大陸では、商人ギルドが全ての貨幣を発行しており、ティルス大陸全土で統一通貨である。 




挿絵(By みてみん)





 通貨単位は、エルと言い。ティルス大陸共通語で神を表す。貨幣は神と等しき力を持つと考えている、商人らしい単位だ。

 地球基準だと、1エルは1円と同じくらいの価値がある。






「おい、おい、冷やかしかー このガキがー!」





 露店の店主がウサギ魚の串をベルに向かって投擲した…


   









「ふうー」


「なかなかの投擲能力の持ち主でしたね…」




 ベルのオデコからは、立派な串が生えていた。








 サーヤから、お金を貰ってくれば良かったと本気で後悔したベルであったが、そのサーヤに外に行ってくると言うのも忘れていたのである。

 この忘れていた事の2つ目を、ベルは生涯後悔する事になるのだ…





 あー そう言えば… 気絶していたサーヤを起こすの忘れていました…


 いつもの、この時間帯は甘々に甘やかされるタイムなのですけどね…


 少し、寂しいです…




 彼はまだ知らない。この先、サーヤとの甘々タイムが訪れない事を…








 気を取り直し、本来の目的を思い出したベルは、王都北門へと向かって行った。

 何故、北門なのか?

 それは、MPポーションとアンチネクロゾーマポーションの原料の1つである、ヒオウギ草の採取に向かおうとしているのだ。






 ベルの工房魔法がLV3になった時に、覚えたライブラリーという機能がある。その機能は、図書館。

 様々な物の作り方を教えてくれるのだ。それは、地球由来の物でも機能するのだが…


 そのライブラリーの機能を使いMPポーションの作り方を知る事が出来たのだ。その素材の群生地等も表示される優れもので、ヒオウギ草は、この王都の近くの森にも群生している事が解ったのだ。



 こんな身近に素材があるのだ。何故今まで、MPポーションが作られてこなかったのか…

 ただ単に、製作する者の調合能力が低いのだ。MPポーションが製作できるようになるには、調合能力LV5が必要となる。

 この国最高の薬師、パテカトル・ナボポラッサルでも、調合能力LV4なのだ。ステータスが見えないこの世界の住人達は、技術が進んでいない中、手探りで腕を磨くしかない。ましてや、LVの概念さえなかった…












 

 

「次、そこの子供!」


「何用で、王都の外に出る? 両親はどうした?」





 北門を抜ける為、検問官の前に並ぶ行列。ようやく、ベルの番が回ってきた。




「あっ! 僕ですね!」


「はい、家の用事で、薬草を採取しに行こうと思いまして… 母は病気、父は暴力的な人で… 僕1人で行く方が気が楽なのです… 両親がいないと外には出られないのですか?」



 けして、嘘は言っていないベルなのだった。




「くっ… 苦労しているのだな… 行って良しだ! もし、お前の父親に会う機会があったら俺が一発ぶん殴っておいてやるからな… 元気だすんだぞ!」




「「はははははー」」




 いち、検問官がその国の王を殴る… 見物ですね…



 ほくそ笑みながら、門を潜るベルであった。




「あっ、そうだ! 出る時はタダだが、入って来る時には子供は、1,000エル、税が掛かるからな! 気を付けろよ!」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・」



「そ、そうなのですか… それは、物納でも大丈夫だったりしますか?」 




「おう、物納でも可能だぞ! この時期は魔物はそこまで出てこないが気を付けて行って来いよ!」







 優しい検問官であった…


 この世界に来てからというもの、出会ったおじさんには、酷い目に合されてきたベルにとって涙が出るほど、嬉しかったのだ。何度も頭を下げ手を振り出て行くのだった…










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