第1話 転生、異世界フェニキア
「…ドクッン…」
「……ドクッン……」
「………ドクッン………」
温かい音が聞こえる。
ここが何処だかわからないが、妙に落ち着く場所だ。
何も色がない世界…
怖いくらいに、透きとおった湖の底に沈んでいるような感覚なのだが、恐怖やストレスなどの負の感情が、まったくというほどに感じられない。
絶対的な安心感に包まれ、その存在は思う。
『ここは何処だろう?
えっと…僕は何してたんだっけ…
バスに乗った所までは覚えてるけど…』
何かしなくてはいけない気がするのに思いだせない。
焦りは無いが、ただ、ただ、眠い。
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何か悲しい夢を見てた気がする。
起きてるのか、寝ているのか、ボンヤリとする脳が少しだけ活動を始める。
『あの泣いてた女の子は誰だったけ…?
んーーっ!思い出せそうで、思い出せないや!
なにか大切な事だと思うんだけど…
んんーって、そういえばここは何処だっけ?』
優しい無色の空間に、漂っている感覚の中で、クリアにならない思考の中、その存在は何時間、何日も眠りと、少しの覚醒を繰り返す。
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「…ドクッン…ドクッン……ドクッン……ドクッン……ドクッン…」
「うわっ!?」
ゴボ…ゴボ…ゴボ…!!
『み、水の中にいる!?
お、おぼれ… 溺れない!?
く、くるしぃ… 苦しくない!?』
「・・・・・・・・・・・・・・」
『まっ…こうゆう事もあるよね…
いや!ないから!ありえないから!
そ、そうだ!これって夢だ
僕って、昔から結構リアルな夢見てた気がするし…
よし、早く起きよう
また、学校遅刻したら○○ちゃんに怒られるしな…
って、○○ちゃんって誰だよ… 学校…?
あれ?僕って学生だったっけ??
何か仕事をしていた気もするんだけど…
そういえばさ…』
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「僕って誰だぁぁぁーーー!?」
一頻り騒いで混乱した後、その時は突然やってきた。
世界の崩壊。
いや、後で思えば、これが世界の始まりだった。
気づけば、それまで包まれていた無色の空間が、どこかへ流れて行ってしまい、段々と息苦しくなってくる。
『これってヤバいよね!?』
「…っ!!!?」
それは、万力で頭を挟まれたような痛み、もがいている内に、トンネルのような場所に出た。
『なんなんだよこれ!? 夢なら本当に覚めてよ!』
避難場所だったトンネルの天井が落ちてくる焦燥感と恐怖。
潰れるくらいの圧を受けながら、必死に逃げ道を探していると、遥か先に僅かな光が感じられた。
アソコまで行けば助かる。何故かそれがわかった。
「こんな所で死んでたまるか! 僕はどうしても生きなくっちゃいけないんだ!! ○○ちゃんを見つけるまでは絶対に死なない!!!」
「うるぁぁぁぁーーーーー(オギャーーーーー) やっと出れたぁーーー(オギャーオギャー) いやー本当に死ぬかと思ったー(オギャオギャオギャー)」
『って、さっきから煩いな…赤ちゃんでもいるのかな…?あれ?そういえばもう苦しくなくなってる…って!?』
巨人がいた。それは自分の5~6倍の大きさがあると思われる巨人。
光が眩しくて、はっきりと目が見えてはいないが、確かにわかる威圧感。
「あの… ぼ、僕は食べても美味しくありませんから…(オギャーオギャオギャー)」
迫りくる巨人の腕を掻い潜るために、自分の手でガードを試みたが、いつもの自分とは、明らかに違い腕が重い、身体が動かない。
『なんだこの身体ー!?ぷにぷに??』
「僕、赤ちゃんになってるーーーーー!!(オッギャァァーーーーー!!)」
そのまま気を失ったように、眠りについた…
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「%%$#%&’&%%$’&’&&’&%$#?(また男か…それで、羊水の色は何色だ?)」
「&%&’##$%&%&’’%%$$(そ、それが…無色透明で…)」
「$%#%$&%&%$&%#&%$&%’’’$(ちっ!無属性の…無能か…)」
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