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第17話 初戦闘part2


 イラーフは困惑していた…


 今度は、確かに全力で蹴り飛ばしたはずだった。暗殺者であろう子供も、腸を飛び散らせながら吹き飛んで行ったではないか…


 では、何故この子供は何か叫び、平然と誰かに向かってペコペコ頭を下げているのだろうか…?

 先ほどの腹の傷は、どこに行ったのだ?回復魔法を使ったとしても、あの傷は治せはしないだろう…



 その時…


 この部屋に辿り着く前に感知した、あの膨大な魔力の奔流を子供から感じる!

 冷や汗が垂れる間もなかった…





「パァァン!!!」





 何かが破裂する音が聞こえた…

 

 その瞬間! 飛んできた何かが、頬を掠めて行った… 


 頬に残った傷痕から滴る血を拭いながら、端麗な顔立ちをした悪魔のような子供に問いかける。





「何だー?今の魔法は?こんなもん見た事ねえぞ?」


「お前、何属性だ?」





 この問い掛けに、ベルは少々考えた。



 とりあえず、威嚇射撃は成功でしょうかね。


 これで、引いてくれるといいんですが…


 こんな感じの悪いおじさんに真面目に答えるのも、癪ですが… 嘘を付いても仕方ありませんしね…






「これは、僕の無属性の魔法で作り出した魔術ですね」


「まー、魔術と言っても、あなたみたいに頭の悪そうな方には、解らないと思いますが…」




 嘲笑して対応するベル。それに対して、イラーフは…





「はっ!? お前の方こそ頭悪いんじゃねーの? 無属性ってのは、魔法は使えねえんだよ!」


「ばーか!ばーか!」





 子供の様な対応だった…




 その対応にベルは、プルプル震えながら右手を差し出し、また指鉄砲の構えをとる。

 




『射撃魔術Ver.マシンガン・発動!』





 指鉄砲の構えに警戒するイラーフは、自身の使える最強の防御魔法を展開させた。罵りはしたがベルを強敵と認めてる証であった。





「荒れ狂う風よ、我を守る鉄壁の盾と成せ シールド・ゲイル」





 イラーフの周りに大量の風が吸い寄せられ、体の周りを物凄い速さで回転し始めた。そうしてイラーフは風の球体の中に納まっていった。



 ベルの指先からは、けたたましい連続発射音と共に、幾十もの閃光が、イラーフの作り出した風の球体に放たれた。

 鉛で出来た銃弾が風と衝突し、何かをを削る甲高い音を残し消滅していく。


 


 どれくらいの時間が経過しただろうか…


 1分、2分、3分、4分…


 射撃音と切削音が鳴りやんだ後には、無傷のイラーフが佇んでいた…





 イラーフの作り出した風の球体は、ドラゴンのブレスの一撃並みの破壊力がなければ、びくともしないのだ。人類では、到底届かない領域の攻撃である。

 事実、イラーフのこの魔法は、12年前に戦ったドラゴンに破られた以外は、1度も攻撃を通した事がないのであった。





 うわぁ… すごいですね… あの魔法…


 弾丸全て、止められちゃいましたよ…


 もしかして、僕ってこの世界ではかなり弱かったりするんですかね…





 落ち込むベルを余所に、イラーフは焦っていた…

 後、1分あの攻撃を喰らい続けていたら、イラーフは魔力枯渇を招いていただろう。

 最強に近い強度を有する魔法なのだ。魔力の消費も甚大になるのも仕方がない。魔力を温存する為、イラーフは近接戦闘に移行せざるを得なかった。



 疾風の如き速さで迫りくるイラーフに向けて、ベルは腰を落とし、左手に持つ日本刀の柄に右手を添える。抜刀術の構えであった。

 剣の降り始めは、イラーフの方が早い。ベルの頭上に振り下ろされる直前、抜刀された刀がミスリル製の剣と交差する。

 金属同士の、ぶつかる鈍い音が響く。



 またも、驚きを隠せないイラーフがいた…


 

 国宝アパラージタ、総ミスリルで出来たアーティファクト級の剣である。ミスリルは魔力伝達の優れた金属で、その鉱石は採掘量が極めて少ない。全てミスリルで出来た剣など、滅多にお目にかかれない。


 この剣は、ごく少量の魔力を流してやると、その流した魔力の属性の効果が付与されるのだ。イラーフが扱うのは風属性。切れ味、貫通力に関しては、全属性の中でも抜きん出ている。

 並みの剣では、受け止める事も敵わず一刀両断されるのだ。



 其の筈だった…

 しかも、その剣速でも子供に負けていたのだ…

 冒険者ランク10星のイラーフにとっては、屈辱以外何者でもない。




 鍔迫り合いの中、力で勝るイラーフは、ベルを弾き飛ばす。後方に着地したベルは 焦燥感に駆られていた。




 一撃でこんなに、刃こぼれしてしまいましたよ…


 あの剣、相当な業物の様ですね…


 後、何合打ち合えるでしょうか…


 早めに勝負を決めた方が良さそうですね! 





「ふぅぅー」


 と、息を吐き、自分に魔術を掛けていく。




『身体強化魔術・発動』


『腕力強化魔術・発動』


『敏速魔術・発動』





 光り輝く魔法陣が、ベルの身体に吸い込まれていく。


 異変を察知したイラーフは、させまいとベルに詰め寄ろうとするが、突如、足元に魔法陣が出現し、半径1メートル程の床が、針山へと変わった。

 バックステップを踏んで、ぎりぎりの所で躱すイラーフ。両者の間はまた離れた。




 やはり『剣山魔術』は足止めに効果ありますね…


 これは、どうでしょうか?




『雷魔術Ver.落雷・発動!』




 イラーフの真上の天井付近に魔法陣が現れ、紫電が迸る!



 魔法陣が現れた直後、嫌な気配を感じたイラーフは、すぐさま転がりながら、それを躱す。元いた場所には黒い焦げ跡が残っていた…




 す、すごいですね…


 あれも、躱しちゃうんですか…


 十分に距離もとれましたし… やっぱり、あの技をやるしかありませんかね…


 筋肉痛になるから、あまりやりたくないんですけど…





 ベルは、ゆっくりとした動作で、また抜刀術の構えをとっていった…






「おい、おい、土属性に、雷属性だと!?」


「洒落になってねーぞ! コラ!」






 また先ほどの抜刀術の構えを見せるベルに対してイラーフは、訝しむ。この距離で斬撃が当たる筈もない…

 だが、この悪魔の様な子供に、常識は当てはまらないのが解る。最大限の警戒をするべきであろう。







「荒れ狂う風よ、我を守る鉄壁の盾と成せ シールド・ゲイル」






 この戦いで、最強の盾を発現させるのは、これが最後になる事を覚悟し、ベルを見遣る。







「!?」





 ベルの姿が一瞬で掻き消えた!

 移動スピードが速いなんてものではない!本当に消えたのだ!


 気づいた時には、暴風の吹き荒れる球体を、凄まじい爆裂音と共に一振りの刀が貫き、イラーフの右腕を破壊していたのであった…
















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