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第16話 初戦闘part1

 吹き荒れる風と共にアシエラの部屋の砕けた扉の破片が舞う中、金髪で精悍な顔つきをした偉丈夫が、総ミスリル製の両手剣を肩に担ぎながら、歩を進める。




 すぐに、銀髪で見た事のない顔をした子供に目が留まった。


 こいつが暗殺者か!?


 暗殺者に子供を使うというのは、あまり聞いた事はないが…




 気を取り直し、部屋を見渡す。


 銀髪の子供の近くには、パテカトル爺が驚きを隠せない表情をしたまま、腰を抜かしたように床にへたり込んでおり、アシエラが横たわっているであろうベッドには、侍女が1人泣きながらアシエラであろう物に覆いかぶさっていた。





「チッ!」


 間に合わなかったのか!? 俺は…




 イラーフは、天を仰ぎ目を瞑る。


 そうしている内に、1つの感情が芽生えてきた。


 ここまで、地獄の様な苦しみを味わってきた、最愛の妻の最期を穢した者を許しておけるのか…?


 妻に対して何もできなかった自分ができる事は、最期を穢した者を殺すくらいだろう。


 せめて、それくらいしておかなければ、アシエラに対して申し訳が立たない。





 「はああああああ」



 イラーフは、魔気を開放し、風を身体に纏った。その殺気の込められた風の威力は凄まじく、ベルの肌をビリビリと刺激した。

 サーヤに至っては、その威力に耐えられず、意識を手放しベッドに横たわるアシエラを守るように倒れ込んでしまう。





 んんー、これは、魔気能力ですよね…


 この能力使える人が、僕以外にもいたんですね。


 それにしても、何なんでしょうか、このおじさんは…


 おじさんは剣を担いで扉を壊して部屋に入るのが常識なんでしょうか…?


 異世界って恐ろしいですね…





 そんなおバカな事を考えていた、ベルは目を見張る。そのおじさん…いや、侵入者の身体が一瞬ぶれたと思ったら、 疾風のごとき速さで肉薄してきたのだ!

 剣を構えているその姿に、ベルは戸惑う。このままでは、切られてしまうのではなかろうか?


 焦ったベルは左手を虚空に翳す。



 『搬出・日本刀!』



 無色の粒子がベルの左手に集まり、日本刀の形を成していく。この日本刀は、数年前にベルが工房魔法の力で鍛え上げた刀なのである。






 

 工房魔法内は兎に角広い。多分、端はないのではないかと、ベルは思っていた。


 引きこもりすぎて、体が鈍らないように、工房魔法内で運動をしようと試みた。

 暇すぎて遊びで、ある能力を上げている時に、それは起こった。フラッシュバックである。突然頭の中に日本での記憶が少し注入されたのだ。


 それは、幼い内から近所の家で、誰かと一緒に剣術を習っていた記憶。残念ながら誰かとまでは、思い出せなかったが…

 それから、毎日の運動に剣の稽古を取り入れ、1人で5年間も黙々と剣を振り続けた…

要する5年間工房魔法内で引きこもってたのだ。

 

 






 工房魔法内から日本刀を取り出したベルは、凄まじい速さで迫りくる侵入者の初撃を、ギリギリ鞘で受け止められたものの、流石にまだ5才の身体では、衝撃の全てを受け止めきれず、たたらを踏む。





 目を見張って驚きを隠せないのは、イラーフの方であった。

 何処からとも無く、突然見た事もない形の剣が現れ、しかも全力ではなかったものの自分の一撃を、子供に防がれてしまったのだ。

 子供に防げる程、軟な一撃を放ったつもりはない。


 此奴はヤバい!


 直感したイラーフは、まだふらついている子供の腹を、魔気が込められた本気の蹴りを食らわした!







 激しい音と共に、凄い速さでベルは床をバウンドして行き、部屋の壁に激突した所で転がる勢いが止まる。壁は崩れて庭が見える様になり… ベルは腹を抑えながら吐血する… 

 

 なんとか意識を保っているベルは、恐る恐る腹を見遣ると、何かが爆発した様な痕があり、腸が飛散していた…





「ぐはぁっ!?」


「はぁはぁはぁ…」





 血ですか… これは、拙いですね… 内臓がグチャグチャになってます…





『治癒再生魔術・発動…』




 魔法陣が倒れているベルの腹の上に現れ、身体の中に透過して行く。瞬く間に腹の傷が塞がりベルは立ち上がる。

 口の周りに付いた血を、袖で拭いながら答えた。




「やってくれましたね… やられたら、やり返す! 倍返しだぁ!!」





「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」





「えっと… コホォン!今のセリフは無しと言う事でお願いします…」





 平身低頭謝ったベルは、右手で指鉄砲の形を作った。





『射撃魔術Ver.ハンドガン・発動!』





「パァァン!!!」



 指鉄砲を形どった右手の人差し指の先に、魔法陣が浮かび上がると同時に、乾いた爆裂音が部屋中に木霊した…











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