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終末世界の"ジャック"・ランサー  作者: 小説を書きたい猿
9/15

天使と悪魔 #悪魔祓い

*ーーーーーーーーーーーーーーーーー

欲望の街(バビロン・シティ) 下層

 歓楽街(ネオン・シティ)

 大娼館"ヨシワラ"#大倉庫

ーーーーーーーーーーーーーーーーー*/

レグルスは静かに、無邪気に戯れ合う2匹の子猫を見据える。

短い手足を使い、互いの身体を撫であったり、甘噛みしたりする様は、とても愛くるしい。


しかし白猫の毛並みは赤く染まっているし、時折2匹が舐めたり口にしたりしているのは、"責任者"の血であり、死体であった。

天使(アンヘル)悪魔(ディアブロ)…あの2匹の名前である。

どちらも人界にあらざる、超常の名を冠するモノ。

「E.B.Wか…」


真核生物兵器(E.B.W)。Eukaryotic Biological Weaponは、生物兵器の中でも真核生物を用いたものを指す。

細菌の感染及び毒素による殺傷を目指す、所謂細菌兵器とは違い、主に生物そのものを強化・兵器化することで直接的打撃による損害を目指した兵器だ。

そしてサム・ジェルマン率いるジェルマングループが高いシェアを誇る分野でもある。


あの黒猫は、E.B.Wとして開発されたものが何らかのアクシデントによって逃亡したのだろう。

そして共にいる白猫も、E.B.Wである可能性は捨てきれない。


レグルスは静かに、猫達への一歩を踏み出した。

ほんの微かな足音。

しかし悪魔は、それを敏感に察知した。

黄色い目が、鋭くレグルスを捉える。


レグルスの首筋が不快な熱さを帯びてきた。

久しく忘れていた、死の感覚だ。


さらに一歩、近付く。

ディアブロが姿勢を低くし、警戒体勢になる。

白猫の方は、我関せずといった様子だ。


次の一歩で、完全に黒猫がこちらを敵と認識した。

小さな身体が、不気味な胎動を見せ始める。

レグルスの額を、大粒の汗が伝い落ちた。

そこらのチンピラ相手では決して感じる事のない、"敗北の可能性"。

この黒猫はそれを予感させる。


故に、レグルスは初手から全開を繰り出した。


「ステラ!!シナプス・リンク(超伝神経接続)、レベル3!」

『了解しました、マスター。シナプス・リンク開始。換装式強化義身(エンチャントメント)をオーバーライドします。』


生得的神経回路=|オリジナル・ナーバス・システム《ONS》を機械的神経回路=|オルタナティブ・ナーバス・システム《ANS》がオーバーライド。

エンチャントメントのリミッターが解除される。


ディアブロの身体が急激に巨大化した。

不定形の黒い水となり、レグルスに襲い掛かる。

レグルスはその一撃を、超加速した感覚と肉体で捉える。

流体と化したディアブロの身体は、無数の黒い粒子がそれぞれ意思を持っているかのように蠢いている。

レグルスは粒子全体の動向を把握、その行方を予測する。


黒猫の最初の一撃を、レグルスは回避した。

伸び切った流体に、拳を叩き込む。

鋼をも砕く一撃だが、手応えは全く無い。

まさに水を打ったような感覚。


(ダメージは無し…だが、想定内…!)

レグルスの手腕部には、簡易解析機能が備わっている。

先の一撃で採取した粒子の一部を、手先の吸入針を通して取り込む。

『採集完了。解析を開始します……』


ステラが取り込んだ物質を解析し始める。

ディアブロはいつの間にか身体を戻すと、重心を低く構えた。

その姿勢から、槍のように上半身を伸ばし、突きを繰り出してくる。


完全なノーモーション。

レグルスはヘッドスリップでそれを回避する。

穂先がレグルスの頬を掠めた。


レグルスは反撃のために間合いを詰める。

後ろから、跳ね返るようにディアブロの身体が戻ってきた。

背中、右腕に被弾する。

強固なエンチャントメントに傷が入る。

(くそ…生物の動きじゃねぇ…!)


ディアブロは上下左右、あらゆるところから槍を伸ばすようになった。

ステラの予測を上回る、縦横無尽の攻撃。

(簡易解析にリソースを割いたのが裏目に出たか…!)

ステラのリソースの一部を解析に回している事により、ほんの僅かパフォーマンスが下がっている。

躱しきれず、レグルスは頭部を守ることで精一杯だ。

既に全身傷だらけ、最初に被弾した右腕からは火花が散っている。


《物質の解析をこっちに回して!》

アイが叫ぶように言う。

「何を言ってるっ!?そんなこと…」

《いいからさっさとしなさい!》

ステラが勝手に動き出す。

何処かとVPN接続したかと思うと、データ転送を始めた。


《いいわ!これならリソースは少なくなるでしょ!》

確かにその通りだ。

ステラは複雑な演算処理を止めてデータ転送のみに切り替えた事で、本来のパフォーマンスを取り戻す。


四方八方から襲ってくるディアブロの攻撃を解析する。

まるで液体のような身体を使った攻撃だが、そもそもただの液体がぶつかっただけではレグルスに傷一つ付けられない筈だ。


ウォータージェット。

水に高圧をかけて微細なノズルから噴射し、超高圧水のエネルギーで対象を切断する技術。

ディアブロの攻撃も、同じ原理ではないか?


(とすれば、見るべきなのは穂先じゃない。加圧を行う土台…!)

ディアブロがどのように圧力を掛けるのか、厳密には不明だ。

しかしE.B.Wも結局は人が設計したもの。

ならば所詮、既知の仕組みの応用にすぎないだろう。

そしてあれだけの高圧を一瞬で発生させるということは…


「ステラ!キャビテーションノイズをサンプリングしてモデルを構築しろ!」

『了解しました。データ収集及びトレーニングデータ整形……完了しました。アルゴリズム選択及び評価中……評価結果をもとにモデル構築開始……完了しました。視覚情報モジュールにモデルを統合します。』


レグルスの視覚上で、ディアブロが発しているキャビテーションノイズが可視化された。

本体から分岐し、薄暗い倉庫内に潜む発射台部分が、赤く発光して見える。


目の前の発射台の発光が大きくなった。

超高圧を生み出す内部機構からキャビテーションが発生しているのだ。

通常の機械であれば忌避すべき現象であるが、E.B.Wには関係ないらしい。

流体の再生能力に任せて、力技で処理をしているのだろう。

(そこが攻略の糸口だ…!)


激しく発光した発射台から、ウォータージェットが放たれる。

レグルスはそれを回避し、M500を抜いた。

ハンマーを起こし、トリガーを引く。

火薬の燃焼によりバレル内で加速された弾頭が、撃ち出される。


50インチ弾は、狙い過たず発射台を貫いた。

発射台は流体を飛散させ、活動を停止する。

次々と放たれる攻撃を、レグルスは躱し続ける。

M500のマズルフラッシュが瞬く。


発射台は撃たれた直後は活動を停止するが、すぐに再生、活動を再開してしまう。

(決め手が無い…!)

加えて、レグルスは手負だ。

このままでは…


《解析終わったわ!これって…》

待ち望んだ報告。

「急げ!このままだと押し切られる…!」

《黒い粒子は…全てナノマシンよ!》

「何だと!?」


《敵はナノマシンの集合体…それぞれのマシンは独立した存在、だけどまるで1つの生命体のように振る舞ってる…どこかに、中心となる核がある…?》

アイは独り言のように呟く。

(中心…中心…!?どこだ!?)

レグルスの視界に入るディアブロの流体に、これと言った差は見られない。

「どれが核だ!?見分けが…」

《スパイダーを出して!》

「はぁっ!?何で…」

《早く!死ぬわよ!》


レグルスは訳もわからず、アイの指示に従う。

攻撃の隙を縫うように、バックパックからスパイダーを取り出し、起動する。

《コントロール!貰うわよ!》

言うが早いか、アイがスパイダーをオーバーライドして勝手に動かし始めた。

(こいつ、いつの間にバックドアなんて仕組みやがったんだ!?)

驚愕するレグルスを尻目に、スパイダーは素早く移動すると、最も近くにあったディアブロの流体に取り付いた。


「お、おい!?無茶すんな!?」

スパイダーは隠密行動用のマシンであり、戦闘用ではない。

あんな怪物を押さえ込む力は…無い。


キャビテーションノイズが高まる。

スパイダーがディアブロに触肢を突き刺した。

が、全く効いていない。

「おい!やめろ!無駄…」

《インジェクションするわ!》

「ちょっと待て!?お前…」


ディアブロが槍を突き刺し、スパイダーを破壊しようとする。

しかしその直前、スパイダーの触肢が発光した。

インジェクション・プログラムだ。

《行くわ!》

読んで頂き、どうもありがとうございます!


何故ディアブロっていう名前かというと…

ディアブロ4を買ったからです(*´꒳`*)


いやまあ、元々白黒の子猫、というところから連想していって天使と悪魔…悪魔といえばディアブロか…

という感じになったので、あくまで先に構想があってちょうどそれに嵌った、というだけなのです。

ほんとだよ?ほんとほんと…


感想、コメント等頂ければとても励みになります!

どうぞよろしくお願いします!

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