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終末世界の"ジャック"・ランサー  作者: 小説を書きたい猿
1/15

謎の少女 #レグルス

/*ーーーーーーーーーーーーーーーーー

超深度地下構造体(ダンジョン) 上層 レベル3

ーーーーーーーーーーーーーーーーー*/


「随分な有様だな全く」

男は嘆息まじりに、ダンジョンを進む。

そこら中に、人の残骸…骨、血痕、換装式強化義身(エンチャントメント)等…が転がっている。

男は大柄で、こんな場所には不似合いな黒いスーツを上下に着込んでいる。

スーツの腕や脚の部分ははち切れんばかりに膨らんでおり、却ってその男の屈強な肉体を強調しているようだ。

男の名は、レグルス。

どこの勢力にも属さない、所謂フリーランサーである。


「こんな浅い階層に、大層なこった。」

レグルスは目の前にいる、巨人の如き|拠点防衛用自律戦闘兵器ガーディアンを睨み付ける。

全身に無数の兵器を備えた多脚型の殺戮兵器。

ここにある死骸達を作り出した元凶である。


ブゥゥゥゥン…

ガーディアンが起動し、レグルスにレーザーを照射する。

『対象識別中………エラー……修復処理を起動……エラー……エラー……エラー…』

レーザーは壊れたネオンライトのように七色に変化しながら、そこら中をスキャンし始めた。


『エラー…エラー…最重要(マスター)プロトコルに従い、敵対勢力を排除します。』

「滅茶苦茶だな…迷惑な奴だ…」

レグルスはやれやれと肩をすくめる。


『敵対勢力を排除します。』

ガーディアンがレグルスに、大木のような右腕を向ける。

先端には、戦車の主砲のような砲身。

155mm榴弾砲が爆音と爆煙を噴いた。


レグルスは瞬時に身を翻し、跳ぶ。

換装式強化義身(エンチャントメント)が駆動し、一足で数mの距離を移動する。

着地と同時に、レグルスは腰に下げたホルスターから拳銃を抜く。

爆風をものともせず、狙いを定める。


バレルが長く重厚なリボルバー。

威力だけを追求し、旧世界において暴馬のレッテルを貼られていたその銃も、全身をエンチャントメントしたレグルスが扱えば駿馬と化す。


レグルスはダブルアクションでリボルバーを撃つ。

50インチの弾丸が射出され、ガーディアンの頭部に着弾する。

強化装甲に弾頭がめり込む。

レグルスは続けてトリガーを引いた。

2発、3発。

並の男なら両手でも制御が難しいリコイルを、レグルスは片手で制御する。


ガーディアンが榴弾砲でレグルスを狙う。

凄まじい轟音。

ダンジョンの強固な内壁がたわむ。

出口のない爆炎が荒れ狂う。

レグルスは火龍のような焔を避けながら、間一髪跳んだ。


空中で、さらに撃つ。

撃針が4発目のプライマーを叩く。

プライマーからパウダーへ引火、パウダーの燃焼により生じたガスが、弾頭をバレルへと押し出す。

圧力によって超加速した弾頭が、バレルから飛び出す。

先に撃たれた3発の軌道をなぞるように、弾頭は飛ぶ。


バキッ!!

()()()()()()に撃ち込まれた4発の弾頭によって、ついに強化装甲が破損した。


一瞬、ガーディアンが沈黙する。

レグルスは激鉄を起こす。

シリンダーが回転し、最後の弾丸がセットされる。

チェンバーにあるその弾は、特別性だ。


レグルスは幾分慎重に狙いを定め、トリガーを引いた。

プライマーが撃発され、弾丸が射出された。

狙い過たず装甲の亀裂から内部に突入した弾頭は、ガーディアンの内部構造に突き刺さり、巨大な運動エネルギーと抵抗によって粉々に砕け散った。

無数の破片となった弾頭が、ガーディアンの頭部をズタズタに引き裂いた。


が、人間とは違い、戦闘マシンの頭部はあくまでも1つの部位に過ぎず、破壊されてもその機能を別の部位が代替するだけだ。

現にガーディアンはもう、動き始めている。


しかしレグルスの狙いは別にあった。

最後の弾丸には、弾芯の中にある種のカプセルが含まれていた。

運動エネルギーにより破壊されたカプセルから、ナノマシンが飛び出す。

ナノマシンは機械内通信網(マシン・ネット)に、配線を通して侵入した。

クローズドネットワークであるマシン・ネットを、ナノマシンを通じてハッキングするのである。


「ステラ。」

レグルスは第二の脳オルタナティブ・ブレインであるAI、ステラに指示を出す。

『了解しました、マスター。ナノマシンからの量子通信…受信中……量子演算プロトコルによるハンドシェイク開始……成功………量子ネットワーク設定完了……マシン・ネットに接続………成功……インジェクション・プログラムをアップロード……成功。マスター、どうぞ。』


「インジェクション・プログラム、実行。」

『インジェクション・プログラムを実行します……アンパッケージ……10%……57%……98%……完了……プログラム起動……成功……神経ブリッジ構築中……構築完了…インジェクションを開始しますか?』

「YES」

『インジェクション、スタート』


その瞬間、レグルスは周囲の時間、空間の全てが100000倍に引き延ばされたような、不思議な感覚を覚えた。

それは神経ブリッジを経由して、レグルスの意識がマシン・ネットへと侵入していく時に起きる、感覚拡張によるものだ。

レグルスはあらゆるものが途轍もなく引き延ばされたその感覚が、けっこう好きだった。

難点は、そのすぐ後に意識が途切れてしまう事だが。


/*ーーーーーーーーーーーーーーーーー

マシン・ネット内 MMFマシン・メインフレームメインメモリ

ーーーーーーーーーーーーーーーーー*/

『ソフトウェア側のセキュリティはザルだな。』

一瞬にも無限にも感じた時間の後、レグルス/アバターは星空の中で目を覚ました。

そこはマシン・ネットの中であり、レグルスは神経ブリッジを通って自らの意識をネットワーク内にアバターとして転写していた。


夜空の星のように見える光は、マシン・ネット内にあるノードであり、それぞれがガーディアンの内部構造を管理する何かしらの電子機器である。

レグルス/アバターはそれらの中から、最も重要なノード、MMFマシン・メインフレームを探し出すと、宙を泳ぐようにMMFのすぐそばまでやって来た。


通常、そのような想定外の動きをするパケットは、何かしらのセキュリティ機能により排除される。

しかしガーディアンは、長らくオフラインであった事やそもそもクローズドネットワークであった事から、そのような仕組みがうまく働いていないようだった。


ようやく

IDPS(侵入防止システム)がそれを察知した時には、レグルス/アバターはもうMMFのメモリ空間に入り込んでいた。


レグルス/アバターの知覚コンバータを通して、メモリ空間が可視化され、仮想領域バーチャル・リージョンが構築される。

バーチャル・リージョンは、あたかも現実世界であるかのような空間で、旧世界、終末世界、物や生物、果ては人間に至るまで、あらゆる物が再現される。

再現される世界は、対象となったマシンと由来の深いものであるとされているが、その真偽は不明だ。


実際、今回のバーチャル・リージョンで再現されたのは、学校である。

もちろん、レグルスは学校に通ったも見たこともないため、知識として知っているというだけだ。


正門から入って右手側は運動場、左手側に校舎がある。

バーチャル・リージョン内のどこかに目指す場所、すなわちFCS(火器管制システム)の管理サーバーがある筈だ。

レグルスは校舎側へと足を向けた。


手前には体育館、奥に学び舎といった作り。

体育館を横目に、学生達が勉強に励んでいたのだろう建物を目指す。

学舎のドアは開いている。


レグルス/アバターはリボルバーを抜き、そこから中へと踏み入った。

『敵性プログラムを検知』

ステラが警告を発する。


MMFに常駐していたIDPSエージェントが、緊急排除に動いているのだろう。

一番手前にあったスライドドアが、突然開いた。

黒スーツの男-IDPSエージェントが半身を出し、レグルス/アバターに銃口を向ける。

黒いグロックから9mm弾が放たれた。


レグルス/アバターはそれを()()()()()、弾道から身体を外す。

バーチャル・リージョン内の時空間は通常空間と大きく異なる。

そこではより強い権限を持つもの、より大きなリソースを得られるものが強者だ。


レグルス/アバターは2ステップでエージェントとの距離を詰めると、すでにトリガーに指の掛けた敵の右腕を下から跳ね上げた。

9mm弾が天井に突き刺さる。

レグルス/アバターは左手に持ち替えたM500を胸の辺りで構え、発砲した。

黒服の腹部に命中した弾頭は、貫通する事なく体内で圧壊し、肉体を激しく破壊した。

エージェントは機能を停止し、倒れる前に消えていく。


レグルス/アバターはそれを見届ける事なく、黒服と入れ違いに教室へと飛び込んだ。

先ほどまで立っていたところに、銃弾が飛んでくる。

レグルス/アバターは机を飛び越えながら、もう一方の出口へと走る。

引き戸が吹き飛ばされ、拳大の何かが投げ込まれた。

爆発と閃光。

ほぼ同時に黒服が突入して来る。


敵は2人。

レグルス/アバターは爆発の影響を一切受けず、先頭の1人に向けてトリガーを引く。

50インチ弾がエージェントを破壊する。

銃声に反応し、もう1人のエージェントがレグルス/アバターを狙う。

グロックが3発、連続射撃された。


レグルス/アバターは右へのステップを踏み、それを躱す。

グロックの銃口が狙いを修正するよりも早く、レグルス/アバターは撃っていた。

エージェントが消えていく。


この仮想領域内で、IDPSエージェントは最上位の権限を有し、最大のリソースを使える存在、つまり最強のプログラムである。

しかしレグルス/アバターはそれを圧倒する。


第二の脳オルタナティブ・ブレインであるステラの性能が、MMFの防御プログラムを大きく凌駕しているのだ。

ガーディアンが設計されたのは終末戦争前期。

それからずっとオフラインだったこのガーディアンでは、戦争を経てスコアSのAIとなったステラの演算能力に遠く及ばない。


レグルス/アバターは次々に黒服を撃破し、FCSサーバーのある部屋までたどり着いた。

その部屋は学校を模したその領域では明らかに異質で、ドアを開けたその先には教室ではなくサーバールームが広がっていた。

レグルス/アバターはそこで唸りを上げていたサーバーを、手当たり次第に撃った。

全てのサーバーが破壊されると共に、バーチャル・リージョンは崩壊する。

レグルス/アバターは崩れ行く世界から、神経ブリッジを通じて脱出した。

再び戦場へ…

読んで頂き、どうもありがとうございます!

SF小説を書いてみたいと思い立ち、ダンジョンやサイパーパンクものなどを組み合わせてみました。

頑張って続けるぞ!


また、感想やコメント等頂ければとても励みになりますので、どうぞよろしくお願いします!

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