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2:異世界転生をお使いになられる前に作動部位の名称を確認しましょう

 

 

 (うわぁ、私の事を“奥様”だって…。

 どうしよう、あの女の人の驚く顔、目玉が飛び出そうで無茶苦茶迫力あって凄かったけど、大丈夫かなぁ)


 女性が置いて行ったワゴンに近寄ってみると、病人に水分を与えるための吸いのみがあった。


 (喉渇いてるし水飲みたい!

 これ飲んでも良いよね?)


 背伸びをして、ワゴンの上に乗っている水のみを手に取り、一口飲んでみる。


 (都会の水道水みたいに塩素臭く無いふつうに美味しい水だあ…、天然水かな?)


 行儀悪く吸いのみから水を飲みながらワゴンを物色した。


 ワゴンの上部には、身体を拭く布や熱めのお湯の入った盥、ワゴンの下についている引き出しには着替えらしきネグリジェが入っていた。


 (普通の服が欲しいなあ…。

 お腹も空いてきた気がするし…)


 ワゴンには食べ物は無かった。


 (身体を拭く布があるということは、身体を綺麗にする魔法とかは無いのかな。

 でもさぁ、この髪色とこんなにキラキラした瞳の色で、魔法使えないって絶対詐欺だよね。

 “キュア”とかいって身体ピッカピカになる魔法使ってみたいよお〜)


 空になった吸いのみをワゴンに戻し、寝室の隣に衣装部屋らしき扉を見つけて入ると様々な身長に対応するドレスやワンピースが整頓されてかかっており、大型デパートのブティックと同じ広さだった。


 (うーん、幼児用ジーンズやスウェットなんて無いな、一人じゃ着れないのも沢山ある!

 8年前に兄ちゃんの結婚式の試着で義姉さんのウェディングドレス選ぶのについていった時みたいだ)


 幼児体型に合ったワンピースを何着か見つけ、その内の藍色のシンプルなものを手早く身につけた。


 程なくして驚いて部屋を飛び出して行った女性が向かった方向から、ドタバタと複数の人間の足音が近づいて来て身構える。


 「「「母上様〜!!」」」


 「「お義母様〜!!」」


 「「「おばあちゃまぁ〜!!」」」


 (これは、一体どういうこと!?)


 広い寝室に駆け込んできたのは、二十代から三十代に見える成人(おそらく)の男女が5人と十代の子どもが3人の合わせて8人だ。


 その内三人の男女は自分のことを母上だと言っており、二人の女性は義母だと言っている。


 そして、自分の身長の1.5倍はある子どもたちが私をおばあちゃまと言っているのだ。


 「母上様が目覚めて本当に良かった。

 このまま、母上様が目覚め無くて、万が一消滅するようなことがあったら、私たちは父を切り刻んで禿鷲のエサにしていたところです!」


 (“父を切り刻む〜!”

 いきなり、残酷な表現出た~!

 それに、目覚めないと消滅するって、どういうことかしら?

 前世で、彼氏居ない歴イコール年齢で当然処女のまま、未経験の自分は、美幼女でありながら、母上様と呼ばれる様な出産経験があるのかな?

 いやいや、4、5歳の幼女だよ、似ているけど親戚を養子にしたとか?)


 「あの、私、何も覚えていなくて…。

 自分の名前も、皆さんの名前も分からないんです…。

 教えて頂けますか?」


 私を取り囲み、嬉しそうにしていた人たちが、急に黙ってしまった。


 「母上様、何も覚えていらっしゃらないの?」


 成人している(おそらく)5人の中では、一番若い女性が自分と同じ不思議な色の瞳を潤ませ涙声を震わせて、床に膝をついて視線を合わせてきた。


 「ごめんなさい。

 自分の名前も思い出せないの、皆さんの名前も…。

 ですので、教えてください」


 視線を合わせてきた、前世の自分よりも何歳か若い女性の表情に何故か胸の奥がツキンと痛んだ。


 「母上様の名前は、アルフィアンナです」


 「母上様はアルフィアンナ・ヴィスディア・レクセル。

 レクセル公爵夫人です」


 5人の中では一番歳上らしい男性が屈んで、後を続けた。


 一番歳上で30代前半に見える男性は髪の色は自分と同じ青みがかった銀髪を短く刈り込み、ラピスラズリの様なブルーに金色の星が散った瞳に切れ長の眼で精悍な顔をしている。


 その顔と瞳を見て、更に胸の奥が痛くなった。


 「私はアルフィアンナって、名前なのね…。

 ありがとう!

 皆さんの名前を教えて頂く前に、紙とペンをもらえる?

 書いて覚えたいの」


 「紙とペンって何?!」


 小学生の高学年位の少年が驚いた声を上げ、全員の驚愕した視線が自分に向けられるのを感じた。


 「あ~、もしかして石板(タブレット)のこと?」


 中学生位の少年が4つに折り畳まれた薄い板を胸のポケットから取り出した。


 「おばあちゃま、指先を当てて書くんだよ」


 おそらく、一番歳上の男性の息子なのだろう、髪の色も瞳も良く似た少年が笑顔でスマートフォンよりも薄い板を渡して来た。


 (魔法の石板みたいな?

 私に使えるのかな?)


 不安で押し潰されそうになりながら、薄くて軽い石板を手に取り、表面に右手の人差し指を当てると起動した。


 (凄い!

 ○ップル社のタブレットよりも、薄くて厚紙位しかないのに丈夫!

 ペーパーレス世界なのかな?)


 言葉は通じるのに、こちらの文字は読み書き出来ないらしい。


 (画面のところどころに書いてある小さな文字が読めないけど、ダメ元で日本語書いてみるか…)


 カタカナでアルフィアンナと書くとこちらの文字で記録された。


 「さぁ、歳が上の人から順番に名前と、私との関係を教えてくれる?」


 緊張しながら、この世界の(アルフィアンナ)の家族らしい8人を見回した。


 

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