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1:異世界転生をお使いになられる前に部品が揃っているか確認しましょう

 

 「うん…。

 …、えーと…、コレって巷で評判の異世界転生だよね~?!」


 私は23歳で自動車事故で死んだのは明らかだったのに、それまで見たことも無い病院とはかけ離れた豪華なベッドで目覚めたのだ。


 しかも、自分の両手を見ると白くて小さくて明らかに幼児の大きさだった。


 異世界転生にもいろいろあり、地下牢とか塔の最上階の隔絶された部屋で叔父や叔母、実の両親や兄弟姉妹に酷い扱いを受けている中で前世を思い出すドアマットヒロインの場合や婚約破棄の断罪中で、記憶が湧き出て、痛めつけられて、国外追放など、ドアマット悪役令嬢など、酷い状況スタートもある。


 反対の車道から10tトラックが正面に出て来て、自分の乗っていた母親から借りた軽自動車が回転しながら物凄い勢いで跳ね飛ばされ、シートベルトしたまま逆さまになり、身動きとれないところで、引火し爆発した瞬間で死ぬのだとわかった。


 自分にとってはつい先程の自動車事故の衝撃的な死を思い出して、その時のもみくちゃにされる圧と痛みと認識する前の感覚でガクガクと全身が震えてくる。


 そんな死の直後で、転生してドアマットヒロインになるのは辛すぎる。


 震えながら柔らかい滑らかな絹のような肌触わりのネグリジェの袖を捲って腕に触れるとふよふよの柔らかい幼児の腕に泣きそうになる。


 (多分、この子は痩せ細ってはいないし、虐待はされてないと思う…、良かったのかな…。

 それにしても、このふくふくした感じ、兄の子どもたちが懐かしいなぁー)


 涙をぽろぽろ溢しながら、10歳上の兄のふたりの息子とひとり娘の感触を懐かしみ転生した自分の腕をもみもみと触れる。


 (もう会えないんだなぁ…。

 両親と兄夫婦、甥っ子たちと姪っ子、幼稚園、小中高、大学まで一緒だった幼馴染み、友達、近所のいつも吠えてくる犬だって恋しい。

 両親には先に死んじゃってごめんなさい、生んでくれてありがとうございましたって言いたかったなあ…)


 ひとしきり泣いてから喉が乾いて周囲のことが気になり始めた。


 空気の様に軽くてふわふわの羽根布団から身を起こして、幼児が眠るには大きくて豪華なベッドから部屋の中を観察する。


 (相当なお金持ちみたいね。

 表向きは贅沢して、実は借金まみれで没落寸前だった異世界転生設定もあるから安心は出来ないけど…)


 広々とした部屋の緻密な彫刻を施された窓の外は透かし彫りの手摺が設置されたバルコニーがあり、その向こうに整えられた庭木らしき巨木の青々とした茂る葉と素晴らしい青空が見えた。


 「ふああ、凄く綺麗…」


 ごみごみとした高層ビル群の底辺を新社会人として這い回っていた前世の記憶に残る風景を思うと溜め息を吐いてしまう程の美しさである。


 (もっと窓の近くに行って外を眺めたい)


 ベッドの縁まで四つん這いで進み、ベッドの脇を見ると綺麗な刺繍が施された柔らかそうな布製の部屋履きが並んでいる。


 (私の髪、青みががった銀髪だわ…)


 四つん這いになった時に自分の毛髪がサラサラと顔の横を流れる様に揺れたのだ。


 (ここは、外を見る前に転生した自分の姿を鏡で確認するべき?)


 転生後の姿がこの世界では、呪われている設定もあるあるだと思われる。


 (血のような赤い瞳とか、白い髪とか、黒い髪とかが、悪魔とか神に呪われている設定もあるのよね~)


 幼児の腰まで伸びた髪を

膝で踏まない様に気を付けながら、幼児の身長には高めのベッドから降りて部屋履きを履いた。


 キョロキョロして、広い部屋で鏡を探す。


 (うわっ、鏡、でかっ!)


 広い寝室らしき部屋の壁の一画が巨大な鏡になっていた。


 鏡に近寄ると異世界転生した自分が映る。


 (あらあら、凄い美幼女!)


 青みがかった銀髪に、長い睫毛が縁取る大きな瞳は泣き腫らしていても不思議な素晴らしく美しい色だった。


 瞳をよく見ようと更に鏡に近づくと美幼女の瞳は角度によって色が変わるアレキサンドライトに似ているが緑色が明るくて、赤や紫、鮮やかな青が入り、瞳孔の周りに金色の小さな星が散っている。


 (凄く凄く綺麗な瞳!

 顔も可愛いから、嬉しい!

 でもこれで、美醜逆転の異世界だったら、奈落の底だわ…)


 ナルシストになってしまいそうに鏡の自分に見惚れていると、豪華な部屋の扉がノックされた。


 返事をするべきか迷う間もなく、扉が開きお仕着せをきた栗色の髪を三編みにした女性がワゴンを押して入ってきた。


 ワゴンのキャスターを見ながら進んで来た女性は顔を上げて、ベッドの上を見て固まり青褪めた。


 (私が居ないから、驚いているのかな?)


 「あの、私はここです」


 鏡の前から声をかけると、女性は目玉が落ちそうな位見開き、驚愕の表情を浮かべ後退る。


 (なんだか尋常じゃない位に驚いている。

 やっぱり、美醜逆転世界なのかな?)


 「あ、あ、た、大変です!

 奥様の意識が戻られましたあ!」


 女性はワゴンを置いて、叫びながら部屋を飛び出して行った。


 (言葉は通じるみたいで良かったけど、奥様って一体?

 普通、お嬢様じゃないの?!)


 

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