二章 19
「逆プロポーズもありだよね?」
優子の突然の問いに対し亜矢はポカンとする。
「逆プロポーズよ!逆プロポーズ!こっちから結婚して下さいって言うの!」
亜矢の顔がみるみる赤くなる。
「だって好きなんでしょ?愛しているんでしょ?」
優子の問いに亜矢はコクリと頷いた。
「そういえばもうすぐ拓海さんの誕生日だよね?」
語尾に含みを持たせながら言う優子。
「逆プロポーズ大作戦やっちゃう?大輝にも協力してもらえるように私から頼んであげるからさ」
もはや亜矢の気持ちなどお構いなしに、どんどん話は進んでいく。
「ちょっ…。ちょっと待ってよ優ちゃん!」
すると不意に優子の携帯が鳴った。
優子はスマホの画面を確認する。そして亜矢の方に画面が見えるようにして言う。
「噂をすれば…。大輝からだよ!」
優子が電話に出る。
「もしもし大輝?お疲れ~。ちょうどあなたに話があってさ…」
楽しそうに話す優子。亜矢もまんざらではない顔で見つめていた。
「えっ?亜矢ちゃん?うん。まだ一緒にいるけど…」
突然優子の顔が曇りだす。そして二言三言話すと、不安そうな顔で亜矢を見た。
「亜矢…」
そう一言呟くと、そっと携帯を亜矢に差し出した。
「私?」
不思議そうに聞き返す亜矢。そして静かに優子から携帯を受け取り、自分の耳へと当てた。
「もしもし…」
「もしもし亜矢さん?」
電話の向こうの声は、確かに茂野だった。
しかしいつもの明るさは無く、何やら緊張しており、少し震えていた。そしてその声が亜矢を何となく不安にさせた。
「亜矢さん…。落ち着いて聞いてね…。大橋さんが…」
それから先は、覚えていなかった。




