二章 18
「っていう事で、茂さん。そんな感じで宜しく!」
「了解です。あとこの時の音楽は…」
誕生日逆サプライズプロポーズ大作戦。
大橋と茂野の打ち合わせは着々と進行していった。
「大橋さんもついに結婚かぁ…」
茂野が沁み沁み呟く。
「なんだよ?」
「いや…あの遊び人の大橋さんが結婚なんてって思って…」
「余計なお世話だバカ野郎」
二人は笑いながら話す。
この二人もまた、冗談を言ったり、真剣な話をしたり出来る仲なのである。
だからこそ茂野もまた大橋のこのプロポーズが嬉しくてたまらなかった。
「じゃあ茂さん。そういった感じで宜しくな!」
「了解です。詳しい内容の詰めはまた後日という事で」
「そうだな。あいつには内緒な?今一緒に飲んでる優子ちゃんにもね」
「わかってますよ。あいつら今頃女二人で俺らの愚痴言い合ってるんでしょうね…」
「だろうな」
大橋はふっと笑い飲みかけのウイスキーを一気に飲み干した。
「じゃあ茂さん。そういう事で!チェックでお願いします」
「かしこまりました!8番さんチェックです。ありがとう御座います!」
茂野の声が店内に響き渡ると、一呼吸おき、店員全員が声を合わせる。
「ありがとう御座います!」
会計を終え、店の出口へと向かう大橋。茂野の見送りを寒いからいいと断り、扉に手をかける。
「茂さん!頼むよ!亜矢に最高のプロポーズしたいからよ!」
「任せてください!」
大橋の言葉に自信満々に応える茂野。
大橋もその自信に安心しきった円満の笑顔でこう答えた。
「じゃあまたな!」
勢いよく店の扉を開ける大橋。
そしてポケットに手を入れ、一人静かに出ていった。




