二章 17
「拓海は本当に優しいんだって!」
「ハイハイ…」
優子は少しうんざりそうに相槌を打つ。しかし顔は笑っていた。
「あんた達の惚気話はうんざりするほど聞いてるからね」
「結婚かぁ…」
亜矢はうっとりした顔で、天を見上げる。余計な事を言ったかな…と少し後悔する優子。
しかしさっきまでの亜矢の様子とは打って変わって、幸せそうな顔をする亜矢をみるのは優子にとても気分が良かった。
「でも私。本当に幸せになっていいのかな?」
時折見せる不安な表情をする亜矢に対し、優子は答える。
「今の亜矢の心の声に素直に従っていいと思う。過去にひどい事があったかもしれない。でも今の心のの中にいるのは大橋さんでしょ?」
亜矢はコクリと頷く。
「何より一番大切にしたい人に一生ついていく。それも女にとっての一つの幸せだと思う。せっかくそう思える人が亜矢にはいるんだから、それを逃しちゃ絶対にいけない。大橋さんを幸せにする。それはあなたの義務だと思う」
真剣な優子の話に亜矢も真剣に聞いていた。。
「でもね…」
急に優子が神妙な顔つきになり、続けて一言言った。
「そういう話はプロポーズされてから言おうよ」
優子の言葉に思わず笑ってしまう亜矢。
「確かにその通りだよね」
反論の余地はなく、二人は大笑いするのを必死で堪えていた。幸せそうな時間が二人の周りを包みこむのであった。




