二章 13
「私にとってハルが一番だった…。でもだからこそあんな風に…。私が悪いの…。だから…だからね…」
亜矢の顔が一気に暗くなる。優子もそれを見て無意識に気構えたが、自然と口は動いた。
「大丈夫…。ちゃんと聞くよ…」
ニッコリと微笑み、そんな中でも真剣に亜矢を見つめて…。
そんな優子を見て、亜矢はゆっくりと話し始めた。その顔はさっきまでの暗い顔ではなく、どこか安心した顔だった。
「私が大学3年の時、ハルは東京の会社に就職が決まったから遠距離になったの。でも全然苦にはならなかった。前から話し合ってた事だし、会いに行こうと思えばいつでも会いに行けるし、それに本当にお互い信じてた…。絶対離れることはないって…。でもね…。それは突然やってきたの…」
「突然だったの…私の身体が動かなくなったのは。最初は物をよく落とすようになっちゃって、疲れてるのかなって思ってただけで。でもだんだん手に力が入らなくなってきちゃって、いよいよは一人じゃ動けなくなったの。
もちろんハルには何度も言おうと思った。
でも電話する度に楽しそうに仕事の話をしてくるの。
そんなハルが幸せそうで、でも辛くて…。私なんかのために今の環境を台無しにさせたくないって思った。
誰にも病気のことは知られたくないし、もし知られたらハルの耳にも絶対に入っちゃうから…。
あんな充実してるハルの笑顔を奪いたく無かったの。
でも私自身限界だった。だからね、みんなには内緒で実家に帰っちゃったの…」




