二章 10
「一番最初。亜矢さんの印象ってどうだったんですか?」
茂野が大橋に尋ねる。
「なんか暗い奴がいる。それが亜矢の第一印象だった」
「へぇ~。あの亜矢さんが?信じられないですね…」
「だろ?向こうの課長聞いたら新しく入った新人さんらしいんだけど、どうもこの会社に馴染めないみたいで、会社の若い連中に何とかしろって言ってもダメでさ。大橋君!彼女を君の窓口にするから、持ち前の明るさで何とか頼むよ!って言われてさ。俺この会社の社員じゃないってーの!」
グラスに残ったギネスを一気に飲み干した。
「変わった課長さんですね。でも確かに大橋さんの明るさには何かを期待しちゃうのはわかる気がします。お調子者ですから…」
「お前それ褒めてんのか?まぁいいや…。次はレーベン!」
茂野は笑いながら、注文されたレーベンブロイを淹れに行く。
「半分自棄になって、満面の笑顔で話しに行ったわけですよ。どーも!初めまして!大橋です!ってね…。そしたらさ、笑ったのよ。クスって。誰も笑わせられなかったのに凄くね?」
「きっと頭がおかしい人が来たって思ったんでしょうね…」
茂野がからかいながら、レーベンを持ってカウンターに座る。
「アホか!でも笑った顔がめちゃくちゃ可愛かったのは覚えてる。それからこいつを笑わせようと必死になって…。週4で亜矢に会いに行って…。いつの間にか好きになってて…」
「大橋さん…。仕事は?」
「んなもん二の次だよ!」
出されたレーベンで喉を鳴らした。




