二章 9
「でも何で急にOKしたの?」
優子が不思議そうに聞く。
すると亜矢は一言呟いた。
「急にね…来なくなったの…」
不思議そうに見つめる優子に、亜矢はクスッと笑い続けた。
「それまでホント毎日のように来てたのに、それがある日突然来なくなっちゃってさ…」
「それが理由?」
「タクミはね、本当に楽しそうに毎日話すの。お断りされるのがわかっていてもね…。毎回毎回ホント馬鹿なんだから…。ホント子供みたいな笑顔で…」
亜矢はワインを一口飲み、意を決したように話した。
「私ね。会社でいじめられたの」
優子は突然の告白に驚いた表情を見せたが、すぐに聞く態勢を整えた。
「私が今みたいな会社に入られたのは、お父さんのコネなの。そうじゃなかったら大学を中退した私なんかが入れるような会社じゃないし…
私、今はこうだけど、会社に入った頃は本当に地味で暗くて笑わない人だったの。大学を中退して親のコネで図々しく入ってきたくせに、根暗でニコリともしない。陰湿な女。これが会社の中での私のポジションだった。そりゃ陰口も言われるし、無視もされるよね…。実際、その時は私自身もどうなってもいい。生きていたってしょうがないって思ってた…。毎日会社にいじめられにいって、帰って泣いて寝てまた会社に行く。この繰り返しだった。そんな時だった。タクミと出会ったのは…」




