二章 5
「相変わらずなサプライズだな!」
茂野が大橋達のテーブルにパスタを運んで来た時、大橋が言った。
「えぇ。前々から相談がありまして、色々と準備させて頂きました。いや〜でも成功してよかった」
茂野も嬉しそうに返す。茂野自身も成功するかしないか不安だったのであろう。
「そうだ!大橋さんの出世祝いもやりますか?」
茂野が言う。
「お前な…。ついでみたいに言うんじゃねーよ…」
大橋も笑いながら返す。
「じゃあさ、タクミの誕生日にまとめてしちゃおうよ!誕生日&出世祝いサプライズ!」
「おっ!いいっすね!」
亜矢が提案し、茂野も乗った。大橋はため息を吐き言った。
「お前らな…。サプライズされる本人の前で、サプライズをネタバレさせてどうすんだよ!」
しまった!という顔をする二人。
「しまった!じゃねーよ!ワザとだろうが!」
今度はばれた?という顔をする二人。
「ばれた?じゃねーよ!このやろ!」
「いや〜。大橋さん、相変わらず面白いっすね」
「さすがタクミ! …今の話、忘れて?ねっ?」
「上目づかいで可愛い顔して忘れて?ねっ?じゃねぇよ!」
そのテーブルは笑いに包まれる。
「でもまぁ、節目となる30の誕生日は盛大に祝って貰えそうで安心したよ」
大橋がギネスを一口飲み、安心した顔で言う。
「亜矢さん。ケーキ要ります?」
「いやいいです。特別な事は何もしないサプライズなので。全くと言っていいほど何もしないで下さい」
「了解しました。なんならその日、店も休みます。来たら真っ暗で誰もいないサプライズってことで」
「それいいですね」
茂野と亜矢の掛け合いを、横目で見ながら大橋はあえて無言でギネスを飲む。
茂野と亜矢はつまらない顔しながら大橋を見た。
大橋のささやかな抵抗だった。
「まぁ楽しみにしていて下さいよ、大橋さん。三十路投入スペシャルサプライズを用意しておきますから」
「まぁ楽しみにしてるよ。よし、シゲさん。そろそろチェックでお願いします」
「はい、かしこまりました。7番さんチェックです。ありがとうございます」
大橋と亜矢は会計を済ませ店を出た。
新潟の2月の夜は凍てつく寒さが身を襲う。
二人は無意識に手を繋ぎ、互いを見つめていた。




