一章 14
次の日、会社で小野が話しかけてきた。
「お前結衣ちゃんとどうなんだ?美味しそうなイタリアン食べに行きやがって!」
渡辺は不思議そうな顔をして、小野を見つめる。
「しらばっくれんなよ!SNSだよ!SNS!」
小野に言われ、昨日の事を思い出した。すぐ様SNSを確認する。
『先輩とイタリアン♪美味しいパスタを頂いてます✨』
パスタを頬張る渡辺の写真がアップされている。
こういうことかと今事態を把握した渡辺。
どうやら告白までは知られてないと知って安心する。
そんな渡辺を見て、小野が一言言った。
「お前SNSのこと何も理解してないだろ?」
渡辺はコクリと頷く。
確かにあの飲み会の時は、よく理解しないまま、されるがままだった。
SNSのアプリを開けば、小野や近藤、結衣の投稿が最初に表示される。
それだけで渡辺は十分に満足していた。
「お前な…。よし!昼休みに徹底的に教え込むからな!つうことで今日昼飯奢れ!」
「なぜそうなる?」
「明日の給料日までピンチなのだよ。渡辺君…」
「わかったよ。寿司でも何でも奢ってやるよ。この前世話になったからな…」
渡辺に断る理由は無かった。
「ふーう…。食った。食った…。…痛っ!!」
渡辺は小野の頭を思い切り叩く。
「食い過ぎだアホ!」
「何だよ。たかが1万円だろ?ケチケチすんじゃねーよ!SNSのやり方教えてやったじゃねーか?」
「どこぞのバカが昼飯に1万も出すんだアホ!ったく…高い授業料だよ!途中から頭に入んなかったじゃねーか!」
「またいつでも授業してやるよ。飯奢ってくれたらな」
「二度と頼むかアホ!」
渡辺は覚えはそんなに悪くない。
だからこそ仕事もいち早く覚え、同期の中でも重要なプロジェクトも任されるまでになった。
なのでSNSの使い方もこの昼飯で大体覚えた。
『同期の小野君にSNSの使い方をご教授頂きました!授業料は少々高く付きましたが…っつうか高過ぎたアホ!とにかくこれからちょくちょく更新していきたいと思います!』
最後に美味しそうに大トロを頬張る小野の間抜け顔をアップした。
定時も近づき、仕事もひと段落したのでSNSを見た。
結構な数の通知が来ている。
昼休みに送った大学の友達や地元の友達の承認完了通知。更には友達申請も結構な数来ていた。昼の投稿にも『いいね』が10件以上ついている。
意外と楽しいな。と思いながらスマホを眺めていた。
「渡辺さん!4番お電話です!」
「わかりました!…もしもし、お電話替わりました渡辺です… はい!」
スマホをポケットにしまい、仕事へと戻った。明日から3月。期末で色々と忙しくなる。




