ゾットと
「アンタの部下として配属だからね」
エミリがゾットに言うと、
「前はどこだ?」
と、ゾットがカレンに向かって聞いた。
身長156センチほどの細身で、黒いセミロングの髪を後ろで束ねている。少し釣り目がちで気の強そうな顔に、不釣り合いな大きめの胸が存在感をアピールしている。
「国境警備隊です」
と、エミリが答える。
「ほう、て事は適性検査に引っかかって回されたくちか。ケイト婆さんだな。災難だったな」
と、少し可哀想な顔でゾットが言うと、
「あの、どういう事でしょう?」
首を傾げてカレンが疑問を口にする。
「ん? 聞いてないのか?」
ゾットがカレンに問いかける。
「国の為の仕事だとしか」
カレンがそう言うと、
「おい、ちゃんと説明しといてやれよ、可哀想だろ」
と、エミリの方を向いてゾットが言った。
「国の為の仕事でしょ! 国家を守護する大切な仕事だわ」
エミリが悪びれずに言う。
「そりゃそうだけど、仕事内容、どう考えても知らされてないだろ?」
「それを説明して鍛えるのがアナタの仕事よ」
「めんどくさいのは丸投げかよ!」
「適材適所よ!」
「ちっ!」
「舌打ちしない!」
「わぁったよ! とりあえずイーリン領の南町役所行ってくらぁ。お嬢ちゃん行くぞ」
「お嬢ちゃんじゃなくて、カレンです!」
「はいはい、お嬢ちゃんアイアンホース乗れるか?」
「もう! アイアンホースって魔力がないと乗れませんよね? それに道も知らないんですけど?」
「あー、そこからか。しゃーねぇ、荷台繋ぐか」
ゾットが言うと、
「はい鍵」
エミリが机の引き出しからアイアンホースの鍵を取り出し、ゾットに投げた。
「ほい、サンキュー」
飛んできた鍵を掴み取り、そう言ってアイアンホースの保管場所に向うために部屋を出るゾットと、後に続くカレン。
部屋を出で廊下を少し歩くと、
「お、ゾットじゃん! 仕事かな?」
と、1人の女性がゾットに声をかける。
「おう! マチルダちゃん! 俺が仕事以外でここに来るわけないだろ?」
「そりゃそうよね。またエミリの姉御怒らせたんでしょ?」
と、マチルダと呼ばれた女は大きな瞳でゾットの顔を覗き込む。
「またってなんだよ。俺は何もしてねえよ。姉御が勝手に怒るんだよ!」
と、心外だと言わんばかりのゾット。
「ところで隣にいる女の子は被害者の身内の方?」
マチルダがゾットの隣にいるカレンに目を向ける。
「ほら、やっぱり女の子に見えるってよ。新入りのカレンだ。これから俺が鍛えるんだと」
と、カレンをチラッと見てからマチルダに答えるゾット。
「ありゃ、成人済みだったか、ごめんなさいね? 成人女性は全てゾットの範囲内だから、ゾットに襲われないように気をつけてね?」
セミロングの黒髪を揺らして、ペコリと頭を下げたマチルダに、
「今日配属されましたカレンです、よろしくお願いします」
と、カレンも頭を下げた。
「人聞き悪いこと言うなよ! 俺は誰も襲わねえよ! それにババアはさすがに無理だぞ? それじゃあな!」
と、これ以上余計な事を言われてはたまらないと、ゾットが会話を切り上げて歩きだす。
「失礼します」
と、マチルダに声をかけてから安道を追いかけるカレン。
「アンタにその自覚がないから困るんだよね。ここのみんなも……」
マチルダは胸のところで腕を組んでそう言ったが、マチルダのその声は、ゾットとカレンには届いていない。
腕を組んだことにより、無駄に大きさを主張するバストが、プルンと揺れた。