それは、どのような縁の巡りか
「…………」
あれ、おかしいな。普通に会話ができて、お互いが後は確認できれば多少は不安が和らぐと思っていたのに。
確かに、ところどころ怪しい単語が聞こえたから何かの言い間違いではないかと、
ちょっとだけ、そう、本当にちょっとだけ現実逃避をしたけれど。
いや、まさか。いやいやいやいや
「金……髪? それに、長い耳? 君は、エルフ……なのか?」
「そ、そんな……あなたは人間なのですか?」
お互いに対面してみて、お互いに固まっていた。
さっきまで、日本語で違和感なく話せていたと思っていた相手は、なんと異世界の少女だったのです。
しかも、異世界物の話で筆頭と言っていいくらい出てくるエルフ。実在したんだ。
うわ、めっちゃ綺麗だな
……なんて、すぐに受け入れるのは難しい。
ねぇ、どゆこと?
「さっきまであんなに日本語ペラペラ話してたじゃん。君はどうして日本語を話せているんだ?」
「それはどういう意味ですか? あなたこそ、なぜ《イヴンガルド語》をそんなに自然に話せているんですか?」
「え? じゃあ君が話しているのは日本語じゃないのか?」
「あなたが話しているのも? そんな……そんなはず、ないです。
あり得ません。イヴンガルド語は《精霊単語》ですから、素養がなければ使うことはできないです。なのに……」
彼女は不可解な表情を浮かべ、むむむっとした表情を浮かべる。
普通エルフは緑のシンプルな服装で紹介されているが、彼女は黒を基調とした着物だった。
そんな彼女が悩まし気に頭を傾ける姿は、状況とミスマッチでなんだか可愛らしい。
とまぁ、冗談はさておき。色々と謎が出てきたな。
お互いが話している言語は異なるのに、この場所では違和感なく会話ができる。
それも、互いが理解している言語で互いに理解している。
どんな仕組みでそんなことになるのか不明だが、ここでは言葉の壁が無いらしい。
状況が分かんなくて困っている者同士、そこはかなり助かる。
とりあえず、会話はできるんだな。
「なぁ君。とりあえず、どうしてお互いの言葉を理解できるのかについてはいったんやめないか。俺たちはそれ以前に、今この状況に困っているはずだ。違うか?」
「そ、それは……」
「まず、この状況をクリアするために、お互いの持っていることを共有して協力する必要があると思うんだ。互いの腹の探り合いは、状況に折り合いがついてからでもいいだろ?」
彼女が押し黙る。俺は続ける。