始まりの産声
『人類ハ選バレマシタ』
頭の中に響き渡る、人とも機械とも分からない言葉。
一人かも多数かも分からない声で頭に聞こえているのに、きちんと統一した言葉で理解できることを伝えてくる。
酷く、それが不快なんだ。とにかく、気持ちがいいことではない。
この不快な言葉が、さらに頭に響き渡る。
『人類ハ選バレマシタ。世界ノ決定ニヨリ、コレカラ皆様ニ選別ヲ執リ行ワセテイタダキマス』
『対象条件ハ、全テノ世界ノ人類種。及ビソレニ関係スル者か属スル者。年齢ハ十九以下マデ、ソレ以外ノ年齢ノ人類種ハ全テ対象外ノタメ……トシマス』
頭に聞こえてくる声の中に、明らかに聞きにくい箇所があった。明らかに、その部分だけ言葉に砂嵐のようなノイズがあった。
何だ、いったい何が起こっているんだ??
『選別開始ハ今カラスグ。現時点デ生存シテイル全てノ世界ノ人類種。ドノヨウナ状況デモ選別開始ヲモッテ《迷宮》ヘ転送イタシマス。ソレマデニ、関連スル全テノ対象者様ハ、《迷宮》ヘノ転送ヘ備エテ下サイ』
視界が霞む、自分がどのような状況なのかまったく分からない。
頭で理解できるのは、響いて聞こえるこの声の内容だけだ。
まもなく、景色が消えていき、自分の体が一緒に消えていく。
かすかに残る思考で、最後に言葉が聞こえる。
『人類ハ選バレマシタ。コノ幸運ヲ、ドウカオ楽シミ下サイマセ。皆様ノ旅路ニ、未来ガアランコトヲ』