海上自衛隊の実力
さて海上自衛隊の実戦能力は、どれほどでしょうか。
日米合同訓練では、互いに戦術を駆使して模擬戦闘を行います。
この模擬戦闘に先立って米軍が巡航ミサイルの発射訓練を行いました。
自衛隊はこの巡航ミサイルの迎撃訓練を同時に行って、互いの練度を高めようと本気で取り組みました。
当初は普通の訓練風景でしたが、中盤以降の米軍は本気で自衛艦を撃沈しようと躍起になったそうです。
結果は全弾撃破で、米軍の巡航ミサイルは一発も自衛艦に届きませんでした。
但し、あくまでも訓練ですから、大量のミサイルを放つ飽和攻撃には対処できないと思います。
自衛官の中には「イージスシステムの反応が遅いので、手動に切り替えできませんか?」という猛者もいたとか。
実戦さながらの合同演習では、駆逐艦を潜水艦による攻撃で撃破し、悠々と離脱。
我が国の潜水艦はディーゼル機関を採用していますので、機関停止で無音航行を可能にします。
海中の潮の流れに乗って米軍の中央へ進出、機関再開と同時に標的へ照準を合わせて魚雷攻撃という手順で、駆逐艦に撃沈判定を与えたそうです。
自衛隊の潜水艦はとにかく発見が難しいらしいです。
米軍が本気で探索しても見つからず、事故でも起こしたのかと心配していたら、なかなか見つけてくれない状況に痺れを切らした自衛隊が、米軍艦船の真横に緊急浮上して来たという話もあるぐらいです。
この潜水艦を発見する能力を航空自衛隊が保持しています。切磋琢磨している自衛官に、尊敬の念が芽生えます。
なお駆逐艦の任務は潜水艦をいち早く発見し無力化することです。
最後に零れ話を一つ。
平成十二年七月四日のこと。
二十世紀最後のアメリカ独立記念日を祝う洋上式典に参加するため、世界各国の帆船百七十隻、海軍の艦艇七十隻がニューヨーク港に集まりました。
翌日の五日にイギリスの豪華客船「クイーンエリザベス号」が入港して来ましたが、折悪しくも二ノット半の急流となっていたハドソン河の流れに押された巨大な客船は、あれよあれよと言う間もなく、係留中の我が海上自衛隊の護衛艦「かしま」の船首部分に接触してしまいました。
真っ青になるクィーンエリザベス号の乗組員。
相手は「軍艦」、事と次第によっては国際問題にもなりかねない事態です。
着岸したクィーンエリザベス号からすぐさま、船長のメッセージを携えた機関長と一等航海士が謝罪にやって来ました。
船長が来なかったのは、着岸直後は船長は船にとどまるのが慣例だからです。
謝罪を受けた当時の「かしま」艦長・上田勝恵一等海佐はこう返答しました。
「幸い損傷も軽かったし、別段気にしておりません。それよりも女王陛下にキスされて光栄に思っております」(英語訳)
そのときハドソン川に集結していた他国の船乗りの間でこの逸話は口から口へと語られ、ニューヨークだけでなく、世界中の船乗り達にも伝わり、この日本のネイバル・オフィサーの洒脱を称賛したそうです。
こういう機転は実戦でも役立ちますから、海上自衛隊の能力は高いと言えますね。




