過去戦争(アナログウォー)
「過去戦争」
現代を生きる私達の生活は、日々、未来の進歩によってより便利で快適なものになっていた。
快適を求め、さらに進歩を続ける未来。
これは、そんな未来の進歩する加速をわずかながら食い止めた短編物語である。
時は現代、人々(わたしたち)は目に見えぬ脅威に襲われていた。
その脅威を前に、日々進歩する未来が立ち向かう。
当所、未来は優勢な立場にいた。
人々はこれに安心し、その脅威が去るのも時間の問題と楽観視、また元の生活を夢見る。
しかし、脅威もまた進歩を遂げ、未来に襲いかかった。
未来と脅威の激しい戦いが繰り広げられる中、人々は見守るしか出来ない。
やがて、未来が押され始める。
脅威は学習し、己の判断(自己)を持つようになった。
未来は人々の指示を仰ぎ、判断する。
この差が明暗を分けた。
脅威に支配されていく未来、混乱する人々。
絶望の言葉が脳裏をよぎる。
最早、脅威の存在に抗う術が見当たらない。
未来の敗北が見え始めた頃、人々は、豊な生活を放棄せざるおえなくなっていた。
豊な生活を失い、貧しい生活を送る日々。
そんな貧しい生活が続く中、ある時、人々は気がついた。
失っていた大切なものに。
過去が目を覚ます。
過去は、人々を苦しめる脅威に戦いを挑む。
未来が敗北した脅威に。
自己を持ち、猛威を奮う脅威に過去が勝てるはずがない。
人々はそう思う。
過去はそんな脅威の猛威を少しずつ、後退させた。
脅威は何故、自分が押されているのかわからない。
次第に弱る脅威に、過去は相討ちを仕掛ける。
人々の前から脅威は消え去った。
無論、過去も。
過去が勝てた理由。
それは自己を持ち、進化を遂げる存在は最強と言える、しかし脅威は敗北の痛を知らなかった。
自己を持ち、己を高ぶるだけでは勝者とは言えない。
過去もかつては強者であった、未来に破れるまでは。
敗北の痛を学び、それを生かした故に、過去は脅威に勝てたのだ。
人々は過去に感謝した。
貧しい生活は豊な生活に戻りつつある。
豊な生活を取り戻した人々の元に未来が再び顔を出す。
やがて人々は脅威を無くした過去の存在を忘れ去っていく。
それを静かに見守る過去。
いずれ、破れた脅威は更なる脅威となって人々の前に現れるだろう。
その時、過去(私)を必要とするかは人々の心次第。
過去は再び眠りについた。