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1-11 居候というか守護者というか

 とりあえず、あの封印されていた二冊は天達と一緒にうちに居候する事になった。ついでに勝手に物置から出てきちゃった『婆ちゃん達』も俺の部屋に置く事にした。


 古い本が入っていた本棚を一つ空けて、それを魔導書専用にしたんだ。まあ魔導書ほど古い本じゃなくて、全部マンガの本だけどね


 ラノベじゃあるまいし、そこまでしなくてもいいのだが、一応は区別をつけるという事で。他の種類の本と比べるべくもない特殊性というか、あまりにも濃い連中だからな。


 そして、少し興味があったので親に聞いてみた。

「なあ、母さん。例の三郎さんの写真ってどこかにないの?」


「え? ああ、あれ。ぷぷぷぷ」

「なんで笑うのさ!」


「いや、あれ。あの三郎さんて、本当にあんたにそっくりだからさ。小さい頃も似てたけどねえ、年々似てきてさあ。親戚の人の間でも評判よ~。今はもう本当にそっくり」


 ガーン。今初めて知る衝撃の事実。なんで本人には知らせてないんだよ。くそっ、家中でクスクス笑う魔導書達の気配がする。


 母さん達はあれに気がつかないのかな。ああ、母さんは三郎爺さんの血筋じゃないのか。彼は父方のご先祖様だものな。


 というわけで、俺に似ているという噂の三郎高祖父様の写真を見せてもらったのだが。


「うわあ、百年前に俺がおる。これはセピア色の思い出って奴だねえ」

「ねえっ。似てるでしょう、驚いた? ねえ、驚いた?」


 だが、俺以外の連中も物見高くやってきてしまった。


「いや、本当にのう」

「こうして改めて写真で見直すと、そっくりだわあ」


「三郎様じゃ、三郎様のお写真じゃ」

「おお、懐かしい。モノクロ写真じゃのう」


 なんかこう皆さん、和服で決めちゃっている、御婆ちゃんではなく『見かけは娘さん達』が大勢いた。


 うちにいた『ついてきちゃった』方々だった。でも髪型も昔っぽい感じのもので、なんとなく和風でレトロな雰囲気だ。ついでに例の二人も封印を解いてもらって一緒に写真を食い入るように見ている。


「あら、いつのまにか、お客様がいっぱい。あんたのお友達なの?」

「あ、ああ、うん。まあ(主に三郎爺ちゃんのね)」


「そういう事は先に言いなさいな。御茶お茶、あんた、御茶菓子お出しして。それにしても古風ないでたちのお友達ばかりねえ。最近の流行りなのかしら」


「はいはい」

 今時の女子高生で、こんな格好が流行りなわけないぜ。まあ、それは置いておくとして。


 そして御茶菓子を並べると、しっかり沙耶が座って待っていた。いや、別にいいんだけどね。さっそくあれこれ食べ始めているし。


「ふふ、お構いなく。何しろ長年住み慣れた我が家ですのでねえ」

「そうそう」

「空き巣が入った時なんて撃退してあげているわよ」


 確かに、最近生まれた俺なんかよりずっと長く住んでいるんだものなあ。まるで警備会社か守護霊か。いや知らなかったなあ。婆ちゃん達ありがとう。


「三郎様がお亡くなりになった時は皆でお送りしたものじゃが。子孫の事を頼むと言い残してのう」


「そうそう、三郎様は子煩悩な方じゃった。戦争の時も勇者の力で家族を守っておられた。戦争は嫌いじゃったし、もうそれなりの御年じゃったから戦争にはいかなんだけど、家族を守るためにしょうがなくB29を落とした事もあったなあ」


 まるで竹槍でB29を落とした爺さんみたいだな。


「あれ、そんな年なんだったっけ」

「戦争は七十五年くらい前だし、異世界より帰ってきてから家を興したのが百年前じゃからのう」


「嫁さんは向こうで勇者パーティにおった人じゃぞい」

「ぶふう。マジで⁉」


 し、知らなかった。じゃあ、うちって勇者と異世界人のハーフの子孫じゃないの。そういう資質は誰も持っていなそうなんだけれど。


「お嫁さんはまだ若い人で、何故か向こうの世界から一緒についてこれてしまったのう。魔導書さえ多くの者が弾かれておったのだが。凄い魔法使いだったせいではないかと思うのだが」


「戦争で焼け野原になってしもうたが、そこは勇者や魔法使いの力であっさり乗り切って財を築いておったようだし」


 そうなの? うち、お金なんかありそうにみえないけどなあ。まあそれはいいや。家だけは、昔から続いているものだけど。


 そうか、始祖様が空襲から守ってくれていたんだね。たくさんの魔導書もいてくれてたんだしさ。


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