吊り橋効果
「よお。戻ったよ。」
「おう。ご苦労さん。」
モニターに囲まれた暗い部屋に、組織へ報告を済ませた同僚が戻ってきた。
「首尾はどうよ?」
「いつもと一緒さ。そろそろ確定事項として実験を終了してもいいんじゃないか?」
ここは無人島である。
とは言っても水も食料もたらふく存在し、仮設トイレとシャワーまで設けられている。
本当に無人島なのはこの10個のモニターの先。
そこには年齢や容姿、さらには能力に差のある10組の男女のペアが映し出されている。
これは我が組織が秘密裏に行う実験である。
適当な見ず知らずの男女を拉致して無人島という劣悪な環境下に追い込んだ時、彼らはお互いに協力し合い引いては肉体的な関係を持つかどうかの。
今のところ年齢に大きく差があったり相手の容姿がどんなに悪くてもどちらからとなく惹かれあい、10日以内に肉体関係を持つ可能性は100%。
68組中65組に愛が芽生え、そしてたった今、66組目が誕生した。
この分なら後二組も時間の問題だろう・・・
「はぁ。またカップル成立か。面白いもんだな10日だけだってのに」
「そうだな。信じていなかったが、吊り橋効果というものは本当にあるらしい」
同僚は私の隣に腰掛け、モニターへと目を向けた。
そうそう。
この実験によってもう一つ興味深い事実が判明したのだが、それは組織へ報告するのは控えておこうと思っている。
そうして、私は同僚の手を握り返した。