プロローグ
「っ_______________、_______________」
突然来た眩しさに耐えられず俺は布団被った。
それにしても何故だ?暑い...暑すぎる...
俺の寝室は霧〇峰のクーラーが、冷房そして18℃でフル回転しているはずだ。
なのに、なんだこの暑さは、、、、、、
俺はたまらず布団を剥ぎ取った。
「えっ_______________、」
俺は言葉を失った...
そこはいつもの寝室の風景では無かった。
周りは密林で囲まれ、聞いたこともない鳥の鳴き声に、不快な動物の唸り声。
この現象は何と言うのだろう?
俺はまだ夢を見ているのだろうか?
それならとりあえず思いっきりほっぺをつねってみよう。
「_______________、_______________、」
ジンジンと確かな痛みが寝起きでぼんやりしていた頭を現実へと引き戻したように感じた。
そして、1つ思い出したことがある。最近流行っているラノベとか言うやつに多い。
そう異世界転生や、異世界召喚と...。
イヤイヤそんな理由がない。
そんなのは、マンガや小説で書かれる他人の妄想でしかないのだ。
少しでもそんなことを考えた自分がバカバカしくなってきた。
しかしながら...異世界なんたらを一瞬でも考えたのはいくつか根拠があったからだ。
まず一つ、まるで何かの力で自分の寝室だけを故意にくり抜いたように密林の真ん中に寝室がまるごと置かれているこの状況。
そして二つ目、これは...そう!人間業では無いからだ。現技術のどんな最高峰を使ってもこの所業は、成しえないだろうと、
それならこの世界での自分の存在意義はなんだ?
前の世界ではまだ俺は死んではいないのだから転生ではなく、召喚されたと考えるのが妥当だ。
じゃあ召喚されたとしたらなんのために?
「_______________、_______________」
考えても答えが出るわけがなかった。
今の世界での俺は前の世界でのホームレスになっただけなのだから。
昨日までの俺はは料理人だった。
親も料理人で、全国に名を馳せた料理人だった。
小さい頃から包丁を握らされ、毎日のように料理の特訓。
普通の子供が当たり前にやっていることは何一つできない。それで育ってきた俺は料理人という道でしか
歩くことを許されなかった。
もちろん才能もあった。
だから独立して、自分の店を持つことができた。
しかし、俺の人生の退屈は変わることはなかった。
来る客は皆「○○○の息子」と騒ぎ立て、誰ひとりとして料理を見てくれてはいなかった。
わざと手を抜いた料理を出したことがある、どうなったか?
奴らはそれを世界一上手いと褒め散らかしていた。
この世界での俺の存在意義は無かったのだ。
たしかに俺は金も名誉も手に入れた。
だが幼少期から人とも関わらず、料理ずけの日々により流行に疎い...
社会性もなくコミュ障。
つまり家系が生んだアルティメット童貞。
そんな俺は自殺する勇気もない。
反抗する力もない。
だから俺は、「料理」というもの全てを捨てた。
料理に縛られるくらいなら、例えそれが俺の全てだとしてもいらない。
ただただ自由が欲しかっただけだ...
そして退屈だっだったあの世界はなくなり、今ある世界に俺は無限の不安と溢れる好奇心に埋め尽くされた。
そんな気持ちが逆に清々しい。
神様はくれた、俺に未来を。
俺はタンスからいつもの一張羅を取り出した。(てゆうかそれしか持っていない)
半袖のコック服に腰巻エプロン、そして床にはいつもの包丁セットが置かれていた。
あの日何もかも捨てた、父親の唯一のプレゼントだったその包丁も...
「神様は俺にまだ、料理の資格をくれるのか...?」
俺はそれらを担ぎその密林に足を踏み入れた。
後ろは振り向かない振り向いたらまたあの世界に戻ってしまうような気がして。