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女神さま、降臨

「ゔぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!」

 アタシはキーボードを殴りつけた。

「dv;mKLSAAGJ::-skldjgきせまらてち」に続く無意味な文字の羅列が画面を埋め尽くす。


 書けない。


 一行も、書けない。


 アタシは高校三年生、サトウカナコ。一応大学受験を考えている。

 考えているだけ。感じているってだけかも。で、勉強はロクにしていない。


 そんなんでいいのか? って。いいんだ。だって

 アタシの夢は、もっと高いところにあるの。そう、それは


「作家になってやる、ぜったいに」


 両手をグーにして、天井を見上げた。心の中に輝く一番星、きらりん☆


 高校卒業までに作品を投稿してそれが大賞を受賞してアタシは一挙に著名作家の仲間入りをする。

 そうすればパパもママももう「いい大学に入っていい所に就職してそれから」なんて言わなくなるでしょ?


 今までも、けっこうシツコク色んなところに投稿したわよ。郵送、オンライン、同人誌。

 でも、評判はイマイチ。よく言ってイマイチ、悪く言えばイマサン以下、かも。

 何が受けないのか、さっぱり分らない。どこに聞いていいのか分かんないし。

 第一、家族にも仲のいい友達にも言ってない、アタシが文章を書いてるってことは。

 でもね、野望だけは人一倍なのさ、絶対有名になってやる、絶対、同世代のカリスマになってやる、って……

 何といっても、アタシが目指しているのは、


 ラノベ作家、ですもん♡ きゃん、言っちゃった。


 独りで身悶えているうちにまた、変なキーを押しちゃった。急に画面が暗くなって


  ぼん!


 突然、ものすごい破裂音がするとその画面の裏からもうもうと煙が!


  けふん、けふん


 前が見えない、まずい、パソコン壊しちまった。沁みる煙に何度も目をこすっていると、どこからか


「呼んだかしらン」


 ドスの利いた低い女の人の声が沸き上がってきた。きょろきょろしても見当たらない。

「ここだよ気づけよアホ」がん、と急に後頭部に激しい衝撃が。

「づあっ」

 涙目のまま急いでふり返ると、そこにはマツコデラックスもびっくりな縦横幅たっぷりな黒ドレスのオバサマが立っていた、いや、そびえていた。

 髪型も服装も、そう、あの有名な絵みたいな……ど根性夫人だったっけ? ほら、ルーブルにあるあれ。

 腕もちょうと同じように組んで、謎めいた微笑でこちらをじっと見つめていた。

「あ、アンタは」

 図体から似合わない速さで、また右腕が繰り出される。

 ばすっ、横からの張り手。避けたけど間に合わないで肩に当たった。

「ったい~、誰なの、つうか何なのオバハン」

「頭が高い。敬語をお使い、この愚民。

 我こそは、創作の女神カイチャ・ルケン」

 おごそかな口調のオバサマ。

「オマエの書けない、という心からの叫びと特殊な一連のキー操作によって、我がヅォーフの世界から現世界に呼び出された全ての文章表現における……こらこらどこに電話しとる」

「あっ! もしもし警察ですか? あれ間違えた? いえ火事ではありませんっっだあぁぁ」

 アタシが掴んでいたケータイを、ぶっとい手が横からもぎ取った。

「何すんですかっ!」

 奪いかえそうと手を振りまわすアタシの額を、畑から一人では抜けない大根みたいな腕で押さえている。

「話ぃ、きけや」急にナニワのオバチャンになった女神さま。


「アンタ、有名な作家ハンになりたいん、ちゃうのん?」


 アタシは止まった。

「なんやて?」

 そしてオバサマ、いやいや女神カイチャ・ルケンはおごそかに語り始めた。

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