ある春の舞い
いつの日も訪れる物語をわたくしは受け入れるしかないのであって、それはわたくしのストーリーで、わたくししか味わえない醍醐味なのでございます。
桜がどこかで散ってしまっても、まだ蕾のどこかもありましょう。暖かい光と冷ややかな光と混ざり合いながら、こんなにもわたくしは満たされてゆく。喜びを感じているのです。わたくしなりの喜びです。
けれど生温い陽光はとても素っ気ないのでございます。わたくしはそれを崩すことにアンビションを感じることが出来るのです。わたくしはわたくしの妖気で、この四分の一頁を余すことなく包んで参ります。
わたくしはわたくしのストーリーの中で舞いたいのでございます。きっと底辺には泰然たるものがなければならないのでしょうが、なにせ雑駁なものですから、わたくしはそこまで身命を賭す気はございません。