表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

胸筋番長大西 第1話

作者: 胸板 厚

第1話 『胸筋の大西』


「なんだコイツ!胸にケツがついてやがるぜ!」


そう吐き捨て、チンピラの一人が大西を睨み付けた。


「ごめんねお兄さん。これ、俺らとその娘との問題だからさ。・・・邪魔しないでよ?」


もう一人の男は大きなナイフをチラつかせて大西を威圧する。


チンピラの二人組が前にしている大西という男は、それでも怯んだ様子を見せない。

ただ自らの異様に発達した胸板を一瞥し、


「『ケツ』っていうのは、少し言葉が汚いな。」


そう呟くと、後ろで怯えている女子学生に、


「もう行って大丈夫だよ。」


と、微笑んだ。


どうやら彼は、脅し紛いの絡まれ方をしていた少女を助けているところのようだ。


「ありがとうございます!」


少女はそう言ってどこかへ走っていった。

大西はその姿が路地から出ていくのを見守っていたが、


「おい。」という、


ナイフ男の声に反応して素早く振り向く。

その瞬間、ナイフが大西の胸を切り裂いた。

ナイフ男は、すでに背中をめがけてナイフで斬りつけていたのである。

彼の身に着けていた青と白のストライプ模様のシャツには、じんわりと赤いしみが出来た。


「なーに勝手なことしてくれてんの?殺すよ?」


血を見たことで興奮した様子のナイフ男が、大西にナイフを突きつける。もう一人の男も言った。


「あーあ、ヒロポン先輩怒らせちなったな。お前終わったわ。しゅーりょー」


チンピラ達はその後も大西に向かって何かまくし立てていたが、

大西は斬られた自分の胸を眺めてしばらく黙っていた。


そして、ヒロポン先輩と呼ばれた男の方に歩み寄ると、


「いいナイフだ。」


そう話しかけた。


「はぁ?何だって?」


自分が斬った相手の予想外の反応に、ヒロポンも驚き、聞き返してしまう。


「いいナイフだ。って言ったんだ。振り向きざまとはいえ、僕の胸筋に傷をつけた。」

「ナメてたよ。そんなことができる刃物はそうありはしない。ただ・・・」


大西が何か言いかけたところでヒロポンは急に大声を上げた。


「あーもうめんどくせぇ!」

「わけのわからないことを言ってんじゃねえ!俺たちの遊びを邪魔しやがってよぉ。」

「お礼にてめーのケツみてーな胸板にケツの穴を空けてやるってんだよ!!」


激昂したヒロポンが大西の左胸にナイフを突き立てる。

『ドスッ』という鈍い音とともに、ヒロポンの腕には肉を裂き肋骨を砕いた感触が伝わる。



はずであった。


だがしかし。


「人の話は最後まで聞くもんでしょ。」


大西は何食わぬ顔でそう言い放ち、ヒロポンの手には折れ曲がったナイフがあった。


「え・・・。」


呆気にとられるチンピラを前に、大西は話を続ける。


「確かに、それはとてもいいナイフだと思うよ?うん。」


「ただ、僕が本気で胸筋チェストを固めた時には・・・諦めたほうがいい。」


「俺は番長。胸筋番長、大西だからな。」


第一話 完



次回第2話 『鉞のヒロポン』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ