昔々あるところに_002
昔々あるところにモグさんという貧しい青年がおりました。
モグさんは、ある日「黒猫堂」という骨董品屋で、
「何でも望みを叶えてくれるろうそく」を見つけました。
ろうそくは高さ5センチほどの白いろうの塊で、
真ん中に一本の芯が植わっていました。
<ろうそくを点灯して、その前で手を合わせ、
何でも望みを唱えると、その望みが叶う魔法のろうそく>とありました。
「にじゅうまんえん」という値札が付いていました。
モグさんはろうそくをカウンターに持って行くと「これは本物ですか?」
と聞きました。店主は「ほんものだニャ。
にじゅうまんえんだニャ」と言いました。カウンターに座っていたのは猫でした。
モグさんは、なけなしの全財産二十万円をはたいて、
その魔法のろうそくを買いました。
自宅に戻り、マンションの扉を開けると、真っ暗でした。
電気代を数ヶ月払っていなかったので電気の供給を止められていたのです。
モグさんは「ああ、明かりがほしいなあ……」と、ついつぶやきました。
そして「そうだ、魔法のろうそくをともせば、
明かりにもなるし、願いも叶えてもらえるぞ。いいことを思いついた」
そう言って、暗闇の中、手探りで、テーブルの上を触りました。
堅く、細長いモノを見つけました。
「あった。チャッカマンだ」モグさんはチャッカマンに点火すると、
その火をろうそくの芯につけました。
ぼおおおおおおおおおおおおおおおおお
ものすごい音をたてて、魔法のろうそくは燃え上がり、
一瞬にして火は消え、燃え尽きて後に何も残りませんでした。
あああああああああああああああああああああああああああああああ