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異世界クエスト  作者: 太郎
異世界クエスト中
85/95

第77話-魔法使いチェリー

いや!いや!

あれ無理! あれは無理!


なにあれ!? ラオシャン〇ン!?

どっかの邪神!?


なにあれつよい!

ちょーつよい!


いあ!いあ!くとぅるふ?

いえ!いえ!無茶です!




「……またか」





取り乱して挙動不審になる俺を見て、

アインが虚ろな視線を送る。

他の2人は、もう相手すらしてくれない。


はい。そうね。

もうやめようね。





7月1日 光の日 PM7:45



ここはアルバトロス家の食堂。


ホテルのロビーの様な吹き抜けの大部屋。

床には、お決まりの赤い絨毯。

天井から魔石で出来たシャンデリアが吊るされ、

アホの様な長さの食卓には、数々の美しい食器が並ぶ。


その上には、既に、各々の食事が用意されている。

綺麗に彩られたサラダから、豪快なスペアリブまで、

ライムベリーのジュースや、ワインの様なお酒もある。

どれもこれも、美味そうなものばかりだ。


席順は、上座にはバディさんが座り、

俺たちは少しだけ距離を置いて固まって座っている。

アインの両親は仕事が忙しく、この屋敷には

めったに帰って来れないらしい。


使用人たちを除けば、このだだっ広い屋敷には

俺達しかいないようだ。



「それにしても……!」



と、興奮冷めやらぬ俺は、銀のグラスを片手に

大げさな身振りで、先ほどのセリフを吐いていた。


いや、別に酒でも飲んで酔っているのではない。

今日の『マッシブ・ドラゴン』の強さに驚いていたのだ。



「なにあれ?

 あいつ、強すぎでしょ!?

 もう俺、あんなのと戦うの絶対いやだからね?」



「はぁ……

 ごさんじゃったのぅ……

 まさかエイジでも勝てんとは……」



アインが肘をテーブルにつきながら、

グラスを振って残念そうにタメ息をついている。

プ二プ二とした頬が、手のひらに押されて

大福の様になっている。



「いやいや、俺としては、

 あんなのに勝てると思われていた方が

 ビックリだけどな?」



エイジなら大丈夫とか言われて、

俺もタカをくくっていたが、

あれが大丈夫なわけはない。

過度の期待は子供をダメにする。

やめてママン……信頼が重いよ。



「神殿の魔物を一蹴出来るのですから……

 レベル的には、戦えるはずなのですが……」



と、マリーさんが口にする。

でもこの人、ぶっちゃけ全く戦ってないからね?

騙されるな!






……さて、話が飛んでいるので順を追って説明をしよう。



あれから、俺たちはマリーさんの移転術で

まず【グランキャニオン】まで移動した。


名称にグランとつくことから、

グランポート=港町

グランアルプ=鉱山の町

みたいに考えて、渓谷の町かとも思ったが、

実際の【グランキャニオン】は、ただの渓谷だった。


場所的には、【ドワフィリア】と【エルフム】の

中間あたりにあるらしい。

もっとも、この【グランキャニオン】が広大なせいで、

【ドワフィリア】と【エルフム】の距離自体は

離れているようだ。


ゴツゴツした岩山と、谷底に流れる川。

そして、適度に広がる森林。

元の世界でいうナイアガラの滝みたいな滝も

ごうごうと流れていた。


あの広さだと、少数民族みたいなのも

いるのかもしれない。



移動した目的は、いわずもがな。

『飛行艇』をけん引するドラゴンを確保するためだ。


『飛行艇』の動力はドラゴン。

小さい『飛行艇』なら、小さいドラゴンで事足りるが、

大きい『飛行艇』には、やはりそれなりのドラゴンが必要だ。


ましてやアインの『飛行艇』のサイズで、

3週間もの長距離飛行となると、超巨大なドラゴンが

4匹は必要らしい。


そもそも『飛行艇』買うなら、

ドラゴンも用意しとけよ、と言いたいが

ドラゴン自体、確保するのは難しいのだろう。


だいぶ昔、初めてガーターさんと測定をしたころ、

レベル35オーバーが、4人パーティでも組めば、

ドラゴンを倒せるらしい、という話を聞いた。


逆にいえば、この世界では熟練の域に入る

冒険者が4人がかりでやっと1匹倒せるのが

この世界のドラゴンなのだ。


『カイト・ドラゴン』とか言う

翼竜っぽいドラゴンを既に持っているアインが、

むしろブルジョワなのだろう。


え、俺たちも4人だろ?

残り3人は何してたのかって?



……うん。見てたよ?


足手まといになるだろうから、とか適当な理由で、

遠くから眺めてた。

……ひどくね?



「それにしてもさ。

 俺一人に任せるっていうのは、ひどくない?」



俺は、料理をほおばりながら、

率直に不満をぶちまけてみた。



「でも、レベル的に、

 あたしたちには無理だから……」



まぁ、確かに。

あのドラゴンの大きさだと、誰かを庇いながら

戦うのは無理かもしれない。

俺が見た感じで『マッシブ・ドラゴン』を語れば、

もうあれはちょっとした要塞の様なものだ。


薄紫の巨体に、背中から生える4枚の翼。

トリケラトプスの如く、頭部のほかに鼻頭にも角がある。

後ろ足に比べ前足は少し退化しているが、

2足で立つと、ビルぐらいの巨大さだ。


個体数は少ないようだが、それぐらいデカイので、

何かの拍子に直立すれば、森林から身体が抜き出る。

おかげで探すのは楽だった。


また、マッシブの名に負けず、

筋骨隆々で、鱗も厚い。

なんとこの天空剣の一撃をも弾いたから驚きだ。


あれはもう、決して人間が挑んでいいものではない。



「うーん、でもあのドラゴンを倒すのは

 俺だけじゃ無理だと思うよ?

 天空剣が効かないんじゃ、

 どうせ俺の実力なんて……」



と、俺は、自虐気味に笑ってみる。

同情を誘って、優しい慰め & 戦闘回避を狙う。

これぞ、内向き人間の対人テク。



……が、バディさんを含む

他の4人は、俺の話にハッ? という顔をした。


あれ……?

俺、また何か間違った……?



「エイジ、お前さん

『マッシブ・ドラゴン』相手に、

 ずっと物理攻撃で戦っとったのか?」


「えっ、はい……

 だって、剣しか武器ないし……」


「……アインよ、

 エイジは、バカなのか?」


「……否定は、できんの……」



……ギガひどす。

あっ、まさか岩トカゲみたく、

スキル持ちのモンスター……?



俺は黙ってライクちゃんの顔を見る。


ライクちゃんは、両手でグラスを持ちながら

あざとく可愛い顔で小首をかしげる。



「えっ、なに?

『マッシブ・ドラゴン』は【物理無効】だよっ?

 だめだなぁ、もう! エイジ君はっ!

 ……あれ、

 ……アタシチャントイッタヨネ?」


「言ってないよ!

 なんか最後ほう、カタコトじゃん!

 ライクちゃん、

 ちゃんとマネージャの仕事してよ!」


「あっ、ひどっ、

 エ、エイジ君が聞かないからだよっ!

 だってこんなの、じょ、じょーしきでしょっ!?」



情報提供は、マネージャの仕事のはずだ。

久しぶりに発揮されるドジっ子ぶり。

いや、常識という言葉が本当なら仕方ないのか?

いや、いかん騙されるな。



【物理無効】……魔法やスキル等以外の、物理攻撃を無効にする。

【斬撃無効】や【打撃無効】系統の物理防御系スキルで、

キングスライムなどの持つ【物理半減】の上位スキル。

また、最上位として【物理吸収】がある。

あらゆる物理攻撃が効かないため、

打撃だろうが、斬撃だろうが関係ない。




「ということは、エイジさん……

 物理攻撃だけで『マッシブ・ドラゴン』と

 戦って無事なんですか……」


「バカモノか、バケモノかの

 どちらかじゃな……」



テラひどす。

無事に帰還したことさえ、不気味がられるとは……



「でも、それならさ。

 なおのこと、可能性が無いわけだろ?

【物理無効】なら、どうあがいても勝てないじゃないか」



と、俺はまっとうな事を言ってみる。

しかし、アインが反論してきた。



「なに言っとるんじゃ?

 あっ、そうか。エイジは、これも知らんのか。

 大丈夫じゃ!

『マッシブ・ドラゴン』は【魔法弱点】も持っておる」




【魔法弱点】……魔法攻撃に物凄く弱い。


ちなみに防御系スキルは……

【○○致死】……ダメージに無関係に一撃受けただけで即死。

【○○弱点】……ダメージが倍化。属性によっては何倍にもなる。

【○○無効】……無効やダメージ0になる。

【○○吸収】……ダメージを吸収して回復してしまう。

……と分類されるようだ。



「まったく。

 変じゃと思ったら、そういうことか。

 これで安心じゃな」


「えぇ!

『マッシブ・ドラゴン』は闇属性ですから。

 上級の光魔法なら一撃でしょう!

 エイジさんは、『ライトニング・アロー』と、

 『ホーリー・フラッシュ』どちらを使いますか?」


「……両方、使いませんけど?」


「え、まさかもっと上級の……?

『ホーリー・メテオ』とか、 

『シャイニング・フィンガー』とかですか? 

 いや……まさか……

 でも……エイジさんともなれば……」



マリーさんの口から紡がれる中二病単語の数々……

何か誤解があるようなので、

俺ははっきりと言い切ってみた。



「……っていうか。俺。

 魔法なんて1つも使えませんけど……?」


「えっ?

 まさか、そのレベルで……?」





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名前 エイジ・ニューフィールド(かんちがい)(魔法ドウテイ)←NEW!

職業 

   略 

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