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異世界クエスト  作者: 太郎
異世界クエスト中
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第67話-エイジの決意

……もう一度、思考を整理しよう。

俺が異世界に来たのは、おそらく爺さんの仕業だ。

そのため、俺はこう考えていた。



(1) 爺さんは、若い頃、俺と同じように異世界に呼ばれた。

   呼ばれた理由は、おそらく魔王を倒すため。


(2) 【英雄】になった爺さんは、

   召喚の帰還条件の1つ「役目を果たす」を満たしたため、

   元の世界に帰った。


(3) 老後に、元の世界で行方不明になったのは、

   再び異世界に行ったからであり、

   何らかの用があって、俺を異世界に巻き込んだ。

   よって、原因である爺さんを探せば、

   俺は元の世界に帰ることができる。



しかし、爺さんの名前の前後関係からすると、

今までの俺の推測は、間違っていたことになる。

つまり……



(1) 爺さんは元々異世界の住人であり、

  【英雄】になった後、何らかの理由で、

  俺のいた世界に逆召喚されてしまった。


(2) 老後に、元の世界で行方不明になったのは、

  召喚の帰還条件の1つ「死亡」を満たしたからであり、

  当然、異世界の方でも爺さんは死んでいる。


(3) 俺が異世界に来たのは、偶然か、

  あるいは爺さんが生前に何かを仕組んだか……



もちろん、論理的には、別の可能性もあるだろうが、

俺としては、筋を通せば、後者の考え方に納得がいく。

しかし、これは出来れば認めたくない考えだ。


なぜなら……



「後者の場合には……

 異世界で爺さんを探すのは、

 無駄だっていうことになるからなぁ……」



そう。ひいては元の世界に戻る方法が、

分からなくなるのだ。




ここは、グランポートの街道。

町はすっかり夜を迎え、

家々には明かりが灯っていた。


時間は夕食時をすこし過ぎたくらいだ。



俺は、とぼとぼと街道を歩きながら、

頭の中で必死に考えをまとめていた。

手には一冊の本を抱えている。



クロルを送ってすぐ宿に帰るはずだったのに、

遺品探しのおかげで、すっかり遅くなってしまった。

手に抱えている本は、

あの後、遺品の中からクロルが貸してくれたものだ。


本の名前は『世界アイテム装備図鑑』……



「なんだか、エイジっちには、

 おかしいぐらい常識が無いっす!

 ちょっとは勉強した方がいいっす!」



そう言って、クロルが貸してくれたのだった。


大切なバータさんの遺品だが、

おおもとは俺の爺さんの所有物らしい。

いわゆる借パク状態の本というわけだ。


と言うことは、

よく考えると、孫娘に散々な悪口を言われ、

祖父の借パク本を押し付けられたことになる。


……酷い話だな。


まぁ、せっかくだから好意にあずかることにした。



視線を左右に向けると、

夜のグランポートの町は昼とは違う顔をしていた。

同じ景色でも時間によっては見え方が違うものだ。


商店街の店は早々と扉を閉め、

道を行く人もまばらになっていた。

すれ違う人は皆、足早に帰路を急いでいる。


かくいう俺も、急いで宿へと向かっている途中だしな。



「全く、嫌になっちゃうよなぁ……」



パーティメンバーの選択と言う問題だけでも、

俺は混乱していると言うのに、

ここにきて、別の問題に直面してしまった。



「俺……

 元の世界に帰れないのかもな……」



爺さんが異世界人であるという可能性によって、

俺が元の世界に帰る手段が見失われた。

これは俺にとって重大な問題だった。



「まぁ……

 この異世界が嫌ってわけじゃないんだけど……」



そうなのだ。

重大な問題と言っても、

帰還できないことが、深刻という状況にはない。


こっちの世界では、俺はSランクの冒険者で、

むしろチートと言えるほど優遇された状況にある。


退屈な現実世界での、しがない高校生活に比べれば、

遥かに刺激的な生活を送っているはずだ。



俺は、視線を地面に落とし、ひたすら街道を歩く。

時折、独り言をつぶやいてみる。


言葉に出すと、考えがまとまる様な気がして、

少し気が楽になった。



「それに仲間だって……

 たくさん出来たしなぁ……」



現実世界では、ぼっちの俺にも、

こちらの異世界では多くの仲間がいる。

それも、全員、美少女だ。

これも元の世界ではあり得ない。



「そろそろ、

 覚悟を決める時期かなぁ……」



覚悟とは、なにか?

それは異世界に留まる覚悟。

つまり……帰らないという選択だ。


元の世界にいる両親や知人に会えないという、

寂しささえ捨てれば、楽しい異世界での

生活を捨てる理由も無い。

帰る方法が無ければ、帰らなければいい。

それも1つの決意だろう。



「しかし、そうなると……

 今後の生活を決めるパーティ選択は、

 やっぱり重要だよな……」



こうして問題は当初のものに立ち戻ってしまった。

結局のところ、眼前の問題を片付けないことには、

先に進めないのだ。


思考は堂々巡りだが、

帰路は順調にすすんでいった。


歩調を若干早め、俺は街道を横切る。

もうすぐ、宿屋の入り口が見えてくる距離だ。


結局、何も結論の出ないまま、

宿まで帰ってきてしまったな。



「さて……

 どうしようかな……」



俺は1人で、つぶやきながら宿屋の入口をくぐる。

すると、どこからか明るい声が聞こえた。



「あっ! エイジ君、おかえり!

 遅かったから、心配したんだよっ?」



聞きなれた声に顔を上げると、

宿の玄関で、ライクちゃんが待っていてくれた。

タタタと小走りで近づいて来る。



「あっ、ありがとう。

 わざわざ待っていてくれたんだ?」



わざわざ、玄関まで来てくれていたことに少し驚く。

別に、部屋にいてくれてもよかったのに。



「……うん。

 皆も夕食を食べないで待ってるよ。

 後で呼びに行くから……

 今夜は一緒の部屋で食べようねっ!」



どうやら、夕飯まで待っていたらしい。


用件を伝えると、

ライクちゃんが、笑顔を浮かべて俺の横に並んだ。

部屋までの数メートルの距離を、

一緒に歩いて移動する。


部屋の前に着くと、ライクちゃんはドアの前に立ち、

くるりとこちらを向いた。



「じゃあ、後で迎えに来るからっ!」


「……迎えって、隣の部屋だよ。

 そんな大げさな」


「いーの!

 呼んだら、ちゃんとくるんだよっ!

 絶対だからねっ!」



ライクちゃんは、そう言うと、

いそいそと自分達の部屋に入ってしまった。

俺も自分の部屋に入ることにする。



明かりを付け、部屋に入ると、

散らかっていたはずの荷物が綺麗に整理されていた。

散乱した食料や衣服がまとめられ、

ゴミの類は、すべて捨てられていた。



「……おかしいな。

 部屋の掃除はしてないはずだけど……?」



俺がクエストから帰ったときには、

まだ部屋の荷物はそのままだった。



「……あぁ、3人が片づけてくれたのか」



きっとクロルを送りに行った後、

見るに見かねて片づけをしてくれたのだろう。

本当に、ありがたいことだ。



俺は、1人で勝手に納得して、

テーブルの上に、クロルから借りた本を置いた。


……が、端の方に置いてしまったため、

本の重みでテーブルから落ちてしまった。


衝撃でパラパラと勝手にページがめくられ、

パタン……と本が開いた状態で床に伏せられた。



「あー落としちまった……」



考えることが多すぎて、ちょっとしたことでもダルくなる。

本を拾う動作でさえ面倒だ。

俺は身を屈めて、おもむろに本を拾う。


その時、俺は、偶然開いたページの隅に、

手書きのメモがあることに気がついた。


気になって、少し読んでみる。

……そのまま。

俺は、しばしメモを覗きこんでしまった。



「……なんだよ。

 結局、最後の最後で、

 攻略法を教えてもらっちまったな……」



苦笑いして、本を眺めていると、

ライクちゃん呼び声が聞こえた。

本を閉じ、隣の部屋へと移動をする。



「エイジ君!

 さっ!お食事しよう!」



部屋に入ると、テーブルの上には

様々な種類の豪勢な魚料理が並んでいた。



「えっ!? これは……?」


「今夜で、一緒にお食事をするのも、

 最後になるかもしれませんから、

 わたくしたち皆で、力をあわせて作りました!

 お昼の魚の残りですけど」



マリーさんが、料理に驚く俺を見て、

説明をしてくれた。



「エイジよ!

 わしらは昼間のことは、気にしとらんぞ?

 それに……

 おぬしの決めたことに、文句もいわん。

 さ! はやくすわれ!

 食事がさめてしまうぞ!」



アインが、にっこりと笑いながら、

席に着くように促す。



「あの有名な金竜のバレー様から、

 誘われたんだもん!

 あたし達のことは気にしないでいいよっ!」



手書きのメモの内容、三人の温かい言葉と行動、

頭に残る混乱やダルさは、もうすっかり消えていた。



「……みんな!」



……俺は決意した。

俺のパーティはこれしかない、と!




■■■■■■■■■■■■■■■■■■

名前 エイジ・ニューフィールド(決意)

職業 

   略

■■■■■■■■■■■■■■■■■■




世界アイテム装備図鑑、とある手書きメモより。


『達人は、得物を選ばない。

 弱点の無い武器など存在しないし、

 長所と短所は表裏の関係にある。

 大切なことは、武器それぞれの特徴を見極め、

 使いこなせる様、自分自身を磨くことだ。

 そうすれば、全ての武器を扱うことでさえ、

 難しくは無いだろう』




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