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異世界クエスト  作者: 太郎
異世界クエスト上
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第6話-異世界再構築

いえ、違うんです。

パンツが欲しかったわけじゃないんです。


あっ、いえ、確かに言いましたけど。

だから、それは俺のパンツって意味で。


えっ、はいてませんけど?

あぁぁぁ! 違う、違います。

なんていうか、そう、俺、異国からの旅人でっ!

旅の途中で、洗濯してたら流されちゃって!

どんぶらこ、どんぶらこって。


い、いえ、ふざけてないです。本気です。

本気でパンツが欲しかったんです。


嗚呼、だから! 俺の下着です!

信じてください!






……置物扱いだった騎士が、総出で集まってしまった。

とんだ恥をかいた。

緊張で少しどもったが、注文しただけじゃないか。


それなのに、この仕打ち。

軽くトラウマになった。

それでも僕はやってない。


まぁ、誤解も解けたし。

お姉さんが全力で謝ってくれたから良しとしよう。


涙目になりながら……



「ごめんなさい! ごめんなさい!」 って



あんな可愛い声で言われたら、許さないとは言えない。

まったく、可愛い顔してとんだまったく者だよ。まったく。


それに親父さんも、すまなかったって、高そうなを薬くれたし。

触ってみたら……


【ラスト・ポーションEX】


と出たから、かなりの品なんじゃないか。


おまけにお姉さんが帰り際に……



「あのぅ、(お店のこと) 嫌いにならないでくださいね」



とか手を握りながら言われたら、怒るに怒れないじゃないか。

あぁーあ、ほんと可愛かった。




なんて愚痴りながら、俺は町を歩く。

変なところで弁論の練習をしてしまったので、長々と語った俺の持論は台無しだ。

あれはTPO関係なく、全力投球だった。


昼下がりと言うには、もう日が傾きすぎている。

早く宿でも探さないと、野宿決定だ。

頭を掻きながら、完全に狂った予定を立て直す。


急いで何件か宿を回ってみる。

しかし、どこもいっぱいだった。


えっ、こんな時間からか?

最初は不思議に思ったが、この街はなかなか賑わっている。

それなりに旅人も多かろう。

そう簡単に、飛び込みで泊まれるものでもないのだ。


……まぁ、最後の一軒に断わられたときは茫然となったが。

ハイ!野宿けてーい!



まだ、暗くはなっていないが、町の路地で眠るわけにも行かない。

これ以上警察(騎士団)のご厄介にはなりたくない。

どこか公園の様な場所は無いか探すことにする。

ついてないときは、ついてないのだ。

運が悪いときは、諦めも肝心だ。


もっとも、食料だけは買い込んでいく。

観察がてら試食もしていた俺に死角はなかったが、もう空腹だけは避けたい。

なんせ育ち盛りなのだ。


ちなみに、あの店でちゃんとパンツは売ってもらったので、金貨は1枚分くずれている。

支払いをしたときは、すごく不審がられた。

俺の持っている金貨は大金貨と呼ばれるものらしい。

俺の感覚では、そんなに大きく無い。

せいぜい、500円玉ぐらいの大きさだ。


しかし、貨幣価値は、

大金貨1枚=10万円

小金貨1枚=1万円

銀貨1枚=1千円

銅貨1枚=100円 というもの。


これも、ついでに教えてもらったものだ。

10万円で300円くらいのパンツを買ったのだ。

それは不審だろう。

しかし、大騒動にした負い目もあってか、言及はされなかった。


布袋の中には、まだ100枚以上、大金貨が入っている。

こんな大金持ち出して、騒動になっていないか。

そして、なぜあの神殿にあったのか。

いずれにせよ、真っ当な金ではない気がする。

今後はあまり使用しないようにしよう。


そんなことを考えつつ、俺は買ったリンゴをほおばる。

あまい蜜の味が口いっぱいに広がる。

シャキッという心地よい歯触り。

うーん、新鮮だ。


町中をうろついていると、良さそうな公園を見つけた。

森林公園とでもいうのか。

閑静な雰囲気で、ほどよく手の入った木々が並んでいる。

木陰にはベンチもある。

背もたれが無いが、ベッド代わりには都合が良い。


公園では、子供たちが、キャーキャー言いながら遊んでいた。

時間でいえば、今は4時少し過ぎぐらいだろうか。

ベンチにはそれを微笑ましそうに見つめるおじさん。


子供たちのお父さんかな。

そう思いながら、ベンチに近づく。


こんにちは、と軽く挨拶をした。


細面で、優しそうなおじさん。

身なりが綺麗で常識もありそうだ。

横にはなにかの仕事用だろうか、ビジネス風のバッグもある。

キチッとしていて、初対面の俺でも良い印象をうける人だ。



「おや、こんにちは」



おじさんも、笑顔で、挨拶を返す。

やはり、良い人そうだ。


この人なら、忙しそうでもなく、俺の知りたいこと、つまりこの世界の情報も知っていそうだ。

俺からの対価は……情報では無いが、さっき買った果物がある。

子供たちのおやつに、とか言って渡そう。



「元気ですよね」



子供たちを見ながら、つぶやく。



「あぁ、本当に、生き生きとして素晴らしいよ」



おじさんの目は少し潤んでいる。

かなしい事でもあったのか。

いや違う。

俺は知っている。

うちの爺さんも、俺を見て、たまにこんな顔をする時があった。

子供のパワーは、大人には眩しすぎるのだ。


それから俺たちは、どちらともなく世間話を始めた。

俺も異国の旅人という設定から入り、知りたい情報をそれとなく引き出す。



今は、後ゴルドー歴2012年の春だとか。

この世界にはモンスターがいるとか。

冒険者ギルドがあり、一攫千金を狙えるとか。

男なら冒険者ギルドに入るべきだとか。

あと、魔導機というスマホみたいな機械も見せてもらった。

なんでも冒険者には、必須の道具らしい。



すっかり話しこむ内に、日が暮れてしまった。

遊んでいた子供たちも次々と家に帰る。


そして、最後の一人もまた、楽しそうに家に駆けて行った。



「あれ、お子さんは?」



思わず口に出す。

おじさんは、頭を掻きながら笑った。



「あぁ、勘違いしていたようだね。

 わたしは、ここで暇を潰していただけさ」



そうだったのか、俺の話につき合わせてしまった。

おまけに、果物のおかえし作戦もつぶれた。



「なんか、すいません。

 すっかり、遅くまで話し込んじゃって」



本当に申し訳なかった。

おじさんは俺の質問にちゃんと答えてくれた。

異国の旅人(という設定)、しかも若造の俺を尊重し対等な立場で話してくれた。

また、俺を不審者扱いして逃げることも無かった。


人の優しさに触れ、俺はじんわりと心の温まる思いがした。



「はははっ、いいんだよ」



おじさんは、ほほ笑む。



「どうせ、リストラされて、ここしか居場所がなかったのだから……」 と。



えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。


せつねぇ……




■■■■■■■■■■■■■■■■■■

名前 新原 英治 (へたれ)

職業 

   略

装備 

   略

強さ

   ???

スキル

   【考察】【諜報】【やさしい心】←NEW!

ゴミ箱         

   略

持ち物

   ランタン

   ラスト・ポーションEX ←NEW!

   たくさん食料 ←NEW!

■■■■■■■■■■■■■■■■■■

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