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異世界クエスト  作者: 太郎
異世界クエスト中
68/95

第60話-水の神殿9-そして海原へ……

『アクア・クラーケン』を鎮めるため……

ひいては、【グランポート】での騒動に

終止符を打つため……


俺は、生贄大作戦を決行することにした。



「それじゃ、準備を始めよう!

 皆、俺に協力してくれ!」



号令する俺に、皆が注目を寄せる。

にわかに場が活気づく。


この作戦には、仲間の協力……

特にバレーとクロルの協力が必要だ。



「まず、バレー。

 悪いが、冒険船を貸してくれ。

 多少汚れることになるかもしれないが……

 構わないか?」


「えっ?……あぁ!

 あたいは、別に構わないけど……?」



そう……この作戦には、

まず、バレーの船が必要だ。


船を確保するのは、俺たちを生贄から隔離し、

安全を確保する目的が1つ。


もう1つは、生贄が襲われる凄惨な場面を、

バレーやクロルに見せないためだ。



「よし。

 では、次の準備だ!」



俺は、テキパキと指示を出す。

いつもの俺からは想像できないほどの機敏な動きだ。


それだけ、俺は今回の作戦には気合を入れている。

なにせ、人命がかかっているからな。



「この作戦には、くさり……

 あるいは頑丈なロープが必要だ。

 確かドロップの中に、

【朽ちたロープ】があったな?」


「はいはい!これっす!」



クロルが、集めたドロップアイテムの中から、

ロープを取りだす。



「そいつを、より合わせて、頑丈なロープを作ろう。

 もう、夜も更けてきた……

 徹夜の作業になると思うが、手伝ってくれ!」



わかった、とバレーと、クロルは指示に頷く。

自分のことだけに、ギルド長にも気合が入る。



「でも、エイジっち。

 手作りじゃないとダメなんすか?」


「うん? どうしてだ?

 別に新しいロープがあるなら、

 それでもいいけど?」



ちょっとした事でも確認するように、

クロルが俺に質問する。



「いや、ロープは無いっすけど、

 あちしの【合成術】で、

 合成した方が早いっす!」



えっ!? そんな便利なスキルが?



「それは……すぐにできるのか?」


「合成は一瞬っす!

 アーティファクターなら、

 簡単に使えるスキルっすよー!」



そうか、それならクロルに合成を頼もう。



「じゃあ、クロルはその【合成術】を頼む」


「りょーかいっす!」



クロルが元気よく答える。

さっそくドロップの山から

【朽ちたロープ】を集め出した。



「それで……

 あたいたちは、次に何をすればいい?」



バレーが、クロルを横目に質問する。

仕事が無くなったので、手持無沙汰のようだ。



「……うん。

 ……やること無くなっちゃった。

 もう寝ようか?」


「えっ!

 準備って、ロープと船だけかよ?」



その通りだ。

本来ならば、夜陰に紛れて、

意識の混濁している生贄を確保する予定だったが。

クロルのおかげで、予定が変わった。


俺たちも少し寝て、生贄は深夜に寝込みを襲えばいい。



「あぁ、あとは生贄を確保するだけだからな。

 もっとも、これは一番簡単だけど」


「その肝心の生贄って、

 なんなんだよ?」



バレーが、不思議そうに問う。



「……あぁ、それは後でのお楽しみだ!」



こうして、俺たちは休眠を取ることにした。

こんな狭い部屋に、ごろ寝だが、

皆、疲れているので熟睡できるだろう。

疲れたときは、早く寝るに限る。



「それじゃあ。

 みんな、おやすみ」


「エイジっちー。

 本当にだいじょうぶっすか?

 あちしは、不安っすよー」



クロルが、水路の水面に尾ひれを

ぱちゃぱちゃさせながら、心配そうな顔をする。

自分が生贄にされることを、

心配でもしているのだろうか?


大丈夫、そんな顔するな。

俺は間違っても、大切な仲間たちを生贄にはしない。



「クロル、いいから安心して寝ろよ。

 安心と言えば……

 ギルド長も【水霧の鎧】脱いだらどうですか?

 そんなの着てたら、寝づらいでしょうし。

 さすがに、ここまでは奥さんも来ないでしょ?」



俺は優しい笑顔で、ギルド長に話しかける。



「…お、おう。

 なんだ、気がきくじゃねぇか。

 そうだよ。

 最初から、そうやって下手にでてりゃ……

 悪い様にはしねぇからよ!」



へへっ、と笑ってギルド長は鎧を脱ぎ始めた。

ゴトゴトと音を立て、枕元に【水霧の鎧】が置かれる。



「よし! それじゃ、もう本当に寝よう。

 では、作戦の成功を祈って!

 みんな、おやすみ!」


「おやすみなさい」



全員が目を閉じ、夢の世界に旅立つ準備を始める。

……これでよし!


生贄作戦の準備は、既に万全となった!






そして、次の朝……




こちらは、深海……

『水の神殿』に安置(・・)された【水霧の鎧】……

『アクア・クラーケン』は、護るものを取り返し、

神殿で、プカプカ気泡を吐きながら、

静かな時を過ごしていた……




そして、海原では……



「んー! んー!」



さるぐつわをされ、バレーの冒険船のマスト柱に、

縛り付けられたギルド長。


船の帆には、でかでかと……


グランアルプのギルド長! 

ブル・ダーツここにあり!!


との文字……



「んー! んー!

 こぼう”! 

 ぼれを”、ぶらぎるのが!!」



ジタバタと暴れながら、必死に抵抗するギルド長。

声にならない声で、俺を非難している様だ。



「えーごめーん。

 何言ってるか、ちょっとわかーんなーい」



俺は、ニヤニヤとにやけながら、

ギルド長をバカにする。


おっと! 

そろそろギルド長が乗って来た小舟に、

乗り換えなければならない。


グズグズすると、ギルド長の奥さんが来てしまう。



……そう、生贄とは、ギルド長。

捧げる先は、【神獣】ではなく、

ギルド長の奥さんだ。



俺はあれから、寝込んだギルド長をロープで縛り……

【水霧の鎧】を神殿のあるべき場所に戻した。


だって、そうだろ?


俺たちは、別に【水霧の鎧】を必要としてないし、

【水霧の鎧】を返せば、【神具】を追って、

グランポートに、『アクア・クラーケン』が出没する事も、

ましてや、俺たちが奴と戦う事もない。


さらに、ギルド長が、奥さんに捕まれば、

通り魔事件は解決するし……


ギルド長さえ始末されれば、

ライクちゃんに、俺の恥ずかしい行動を、

バラす人物は誰もいない。


えっ?

仲間を生贄にはしないって言ってた?

ギルド長って、俺の仲間じゃないしね?


というか、俺ちゃんと言ったよね?

助ける「具体的な方法が浮かばない」って?

ギルド長は助けないよ?


えぇ。

不思議なほどテキパキ動いたのも、

自分の命がかかってたからですけど、なにか?



「いいのかなぁー

 あたいは、なんか良心が痛むんだけど……」



バレーが俺たちの乗った小舟を出しながら、

憐みの声を出す。

だんだんと小さくなっていく冒険船の姿。



「大丈夫だろ?

 所詮は、奥さんとの痴話喧嘩だし。

 俺も【ヤンデレ】経験したけど、

 こうして生きてるし……」


「そんなもんすかねぇ……

 しかし、エイジっち……

 外道を超えて、下衆の極みっすね……」



クロルが真っ白な目で俺を見る。

よせやい。そんなに褒めんなよ。



もはや、冒険船は米粒ほどの大きさだ。

さて! これで厄介事は片付いた!



「さぁ! 町に帰ろうぜ!」



俺たちは、爽やかな潮風を感じながら、

港へ船をつける準備にかかった!






そして数時間後……

冒険船に辿りつく、黒い影があった……



「なぁんだ……

 あまりにわざとらしいから

 警戒して来たけど……」



黒いロングヘヤ―をかき上げながら、

ギルド長の奥さんこと、

首狩りクリケットが甲板に降り立つ。

……彼女の眼には、既に光は無い。



「中には誰もいないじゃない……」



そして、マスト柱に縛られた、

最愛の人の姿に気がつく。



「あぁ……

 愛しいあなた……

 どうして、逃げたりするのかしら……」



「ん”ー! ん”ー!」

 


ギルド長は、必死の抵抗を試みるも、

ロープに自由を奪われている。



「分かっているわ……

 他の女と遊ぶのも……

 こうして、私から逃げるもの……

 みぃーんな、あなたの愛情表現なのよね?」



ギルド長の奥さんの手には、首狩り刀……

鈍い光が時折、ギラッと反射する。



「でも……ちょっとやりすぎよ?

 ……私だって、

 あんまりいじわるされたら……

 すこし疲れちゃうわ……

 だから、あなたにも……

 私の心の痛みを分かって欲しいの……

 だって、夫婦だもの……

 痛みは分かち合うもの。

 ……そうでしょ?」



「ん”ー! ん”ー!」

 

涎、鼻水、涙、汗……

ギルド長は、顔中からあらゆる分泌液を垂らしている。

白目をむく瞬間、彼は覚悟を決めた。

もう、自分は助からないのだと……


首狩り刀がヒュンと軽快な音を立てた。



「やっと……

 二人きりになれましたね……」



だんだんと沖へと流れていく船……

そして2人は海原へ……



一方そのころ、エイジは港にたたずみ、

船の見えなくなった沖を見ながら、

静かに敬礼をしていた。



「グッバイ! ギルド長!

 とこしえに!」




グランポート編、完!!




■■■■■■■■■■■■■■■■■■

〔情報図巻〕


職業 【ヤンデレ】


どう行動しても(・・・・・・・・)最終的に刺される(・・・・・・・・)

……あなたがいけないのよ。

他の女と楽しそうに話なんてするから。

アッーーー……

■■■■■■■■■■■■■■■■■■


■■■■■■■■■■■■■■■■■■

〔情報図巻〕


スキル 【首狩り刀】


取得条件

【ほうちょう】を取得していること。

【暗殺者】の職業を得ること。

効果

任意のタイミングで首狩り刀を生み出す。

闇属性。

結構な確率で即死攻撃。

■■■■■■■■■■■■■■■■■■


■■■■■■■■■■■■■■■■■■

名前 エイジ・ニューフィールド 

職業 【英雄の子孫】【冒険者】

   【げすのきわみ RANK UP!】【紳士】

   【拳闘士】【獣使い】

■■■■■■■■■■■■■■■■■■




ピンポンパンポン……

ここで、作者からのお知らせです。


調子に乗っているエイジ君ですが、

ギルド長は生きています。


むしろ、エイジ君の方が、

近い将来、ライクちゃんに首をはねられて死にます。

完全に死にます。

……残酷描写、警告してたよね?






……えっ、まじで?

スキルの効果を訂正。

【ほうちょう】の効果のままでした。

申し訳ありませんでした。

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