第57話-余談-ライクの日記2
ライクの日記より
2012年6月15日(土)
今日、エイジ君が状態異常になった。
私たちの知らない状態異常だ。ちゃんと治るかとても不安。
アイテムを色々試したら、かえって悪くなっちゃった。
ごめんねっ!エイジ君!
でも、お母さんがポーションで直してくれた。
ありがと!
2012年6月16日(闇)
最悪。最悪。最悪。
もう今日は日記はいい。
2012年6月17日(光)
マリーさんに、謝られた。
エイジ君と喧嘩して、つい熱くなってしまったそうだ。
人にはそれぞれ、プライドがある。
召喚士のマリーさんにとって、召喚術がそれなんだと思う。
マリーさんは許してあげる。
エイジ君はー、どーしようかなー。
昨日も隣の壁から ワ―オ! とか聞こえてたし。
反省の色が見えないから、放置しよー。
2012年6月18日(火)
アインさんと、お話した。
『思い出のペンダント』のことを話した。
エイジ君から聞いたみたいだ。
正直に、エイジ君から貰ったものを付けていると答えた。
家族で買ったものは、しまってあると言った。
ちょっと欲しそうだった。
2012年6月19日(水)
今日はグランポートの町にお泊り。
町に着くなり、エイジ君は宿を探しに行ってしまった。
あたしたちは、その間、まちぼうけだ。
せっかくだから、みんなで決めたかったのに……
くやしいから、エイジ君だけ別のお部屋にした。
お部屋でもエイジ君の悪口に、つい花が咲く。
……どうして、エイジ君は、なんでも突っ走ってしまうんだろう。
マリーさんも、アインさんも同じ気持ちの様だ。
もぅ!ばーか!
2012年6月20日(木)
朝、エイジ君が部屋にいないことに気がつく。
町の方、港の方。
皆であちこち探し回る。心配だ。
昨日、エイジ君らしき人が、
金竜のバレー様と一緒にいるところを見た人がいた。
アインさんは、また、女の尻でも追い掛けとるのじゃろ、
と慰めてくれた。でも心配だ。
2012年6月21日(金)
エイジ君の捜索をつづける。
途中で、ギルド長の奥さん、クリケットさんと会った。
牛刀の様な、鋸の様な大きな刃物を持っていた。
おかずのお魚でも裁くのかな?
「ゆうしょくですか?」と聞くと
「りょうじょくです」とにっこり笑って、答えてた。
おかずじゃなくて、サラダかなと思って、
「ぜんさいですか?」と聞くと
「いいえ、せいさいです」と答えてた。
でも、なんでグランポートにいるんだろう?
用事があるからと言って、すぐにどこかに行ってしまった。
「ライクよ なに書いとるのじゃ?」
アインさんが、あたしに話しかける。
「日記だよっ! マリーさんは?」
マリーさんの姿が見えないので、
アインさんに聞いてみた。
「エイジを もう一度さがすといって
出て行ったわい……
もう夜なのにのぅ……」
アインさんは、ふぅ……とため息をついて、
窓の外を眺めた。
宿は高い建物なので港が一望できる。
背が低いので、
ちょっと背伸びしているところがかわいい。
「静かだね……」
潮風に乗って微かに波の音が聞こえる。
「ライクよ これは静かではなく
さびしいと いうんじゃよ……」
振り返ったアインさんに、からかわれた。
あ、あたしは、べつに! さびしくなんかないっ!
「もう……怒ってないから、
早く帰ればいいのにね……」
「そうじゃのぅ……」
2人は、ずっと夜のグランポートを眺めていた。
エイジ君のばーか……




