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異世界クエスト  作者: 太郎
異世界クエスト中
64/95

第56話-水の神殿6-神殿の一夜(クロル)

ここは『水の神殿』の1室。

子供部屋ぐらいの狭いスペースで、

狭い入口以外は、四方を壁に囲まれている。


薄暗いが、全くの闇ではない。

水路の水が壁に反射して、影を落としている。

ゆらゆら揺れて、なかなかきれいだ。


俺たちは今、ここで休憩をしている。


移動と戦闘で、思ったより時間がかかった。

おそらく、神殿の外はもう夕暮れに近いだろう。

予定を変更し、先にここで夜を明かす。



「いやー

 けっこう敵出るなー

 さすが『神殿』はキツイなー」


「いや、いや! おかしいっす!

 エイジっちの強さはなんなんすか!

 何で神殿レベルの魔物を、

 一撃なんすか!?」



クロルが、俺に突っ込みを入れる。


久しぶりにチート戦闘が楽しめた。

まぁ『炎の神殿』のときも、

途中のザコには負けなしだったからな。



むしろ、今回はバレーが居る分、楽だ。

【神具】のある場所も分かっているみたいだし。

いちいち【アナライズ】したり、

探したりしないだけでも負担は減っている。



「だから、あたいが、

 デタラメだって言ったろー」



バレーがクロルの方を向く。

顔は完全に呆れ顔だ。



「でもでもー

 あちしとしては、ドロップいっぱいで

 うれしー限りっす!

 早く帰って店に並べたいっす!」



そうなのだ。

ザコを倒しているうちに、

けっこうドロップがたまった。



「そうだねー

 あたいも、今回のクエストは、

 ドロップだけでいい金額になりそうだよー」



クロルとバレーは、嬉しそうに会話する。

ちなみに、あの巨大な蛇のドロップは、

【朽ちたロープ】だった。

モンスターの名前はクチナワというらしい。


クチナワで、朽ち縄。

うん。ダジャレだ。


しかし、ドロップと聞くと、

この間から何かが引っかかるんだが……



「ところでさ、アホ面。

 『炎の神殿』のときも、

 結構なもうけだったんじゃないの?」



バレーが、ニヤニヤしながらひじ打ちしてきた。

えっ『炎の神殿』?

何か思いだしそうな……



「『フレアコング』のドロップとかさー

 持ってないの?

 ぜひ拝見したいねー」



……ちょっとまて。

フレア・コング?






……やべぇ。

『炎の神殿』でドロップ拾ってねぇ……


いや……行きのときは、

ライクちゃんとかアインが拾ってたような気もするが……

……俺は確実に拾ってない。


……そして逃げ帰るときの戦闘と、

フレア・コングのドロップは、

……確実に拾ってない。



「あのさ……

 ドロップは拾わなきゃ……

 マズイよな……」


「当たり前だろー?

 あたいら冒険者の義務だからなー

 Eランクの初心者だって、やってるね」


「……拾ってない」


「はっ?」


「俺、『フレア・コング』のドロップ……

 拾ってない……

 というか、他のも……」


「はぁ!?」



バレーはブチギレの表情である。

……ごめん。

これは本当にごめん。



「……どうしよう

 魔物が……

 やっぱ、強い魔物が再出現するよな……?」


「っとに、あんた!

 よくそれでSランクを名乗れるねー!」


「エイジっち、あちしと同レベルっす!」



2人から、集中的に非難を受ける。

いや、だって異世界のルールなんて、

そうそう馴染めないじゃん……



「まぁ、やっちまったもんは仕方ないねー

 あんたから聞いた話だと、

 期間的に『フレア・コング』レベルの魔物は、

 再出現までまだ間に合うだろうし」



バレーが、時期を計算しながら答える。

ザコほどドロップが魔物になる期間は短い。

と言うことは、高レベルなら、それなりに時間がかかる。



「さすがに何カ月も放って置いちゃマズイけどねー」


「でも、他の魔物はどうするっす?」



クロルが、心配そうに尋ねる。



「神殿レベルだと、

 高レベルの魔術師の【ダンジョン化】ぐらいか……

 アホ面、スライム系の魔物は倒した?」


「……定かではないが、

 多分、倒してない」


「なら、不幸中の幸いだね。

 スライム系は期間が短いからねー」


「なぁ、俺はどうすれば……?」


「まぁ、帰ったらマネージャーから、

 ギルドに報告してもらうんだね

 自分のケツは、自分で拭きな」



バレーは、呆れた様な、怒った様な顔で、

突き放すように言った。

まぁ、こればかりは反論できない。

……俺も深く反省しよう。


「まーまー

 ミスは誰にでもあるさー

 エイジっち、落ち込んじゃだめっす!」



クロルが慰めてくれた。

ホンマ、ええ子やで……


しかし、ライクちゃん達と離れると、

つくづく自分が彼女たちに、

頼らなければならないことが分かる。


ライクちゃんには、ギルドへの報告を。

アインには【黄金槍】の修理を。

マリーさんには、帰りの移転術を。



「ほんと、ダメダメだな……」



俺は、深いため息をついて落ち込む。



「エイジっち! 元気出すっす!

 ではでは、元気が出るように

 あちしのポーション人形を……」



いや。ゾンビ人形はいらない。

っていうか、グチャグチャで食えないだろ。



「ありがとう。クロル。

 気持ちだけ、貰っておくよ」



初対面の時からクロルは、俺に優しくしてくれる。

ポーション人形は抜きにして、

気持ちは本当にありがたい。



「でもさ、クロルは、

 ポーション人形は下手くそなのに、

 戦闘(バトル)ドールは上手だな?」


「いやだなーエイジっち!

 あちしは、どっちも上手っすよ?」



あっ、自覚は無いのね……


俺が、突っ込もうか迷っていると、

クロルは、少し寂しそうに続けた。



「でも、戦闘(バトル)ドールの方が、

 上手いというなら、

 それはじいちゃんの影響かもっす……」



クロルは、ポーチから戦闘(バトル)ドールを取り出し、

頭を撫でた。



「あちしは、ずっと、

 じいちゃんに育ててもらってたっすから……

 寝物語に、いつもノーレッジ様の冒険の話を

 聞いてたっす……」



クロルの表情は浮かない。

懐かしい故人の遺品でも眺めるように、

じーっと人形を見つめている。



「……おい、アホ面」



バレーが、俺の耳をグイッと引っ張り、

自分の方に身体を引き寄せた。



「……クロルはな。

 早くに両親を亡くしちまって、

 バータじいちゃんに育ててもらってたんだ。

 しかも、そのじいちゃんも死んじまって、

 後は、アウト爺さんのとこに引き取られたんだ

 ……空気を読めよな」



……え、そんな事情があったのか。

おそらく、クロルはそこでアウトさんに師事し、

孫娘のパートナーであるバレーと会った。

……やべ、悪いこと聞いたな。



「悪い、クロル。

 俺、悪いこと言っちゃったな……」


「ん!?

 いいーっす! いいーっす!

 エイジっちが、

 気にすること無いっすよ!」



クロルは口癖の様に「愛してる」や「愛」を使う。

それは「愛」の大切さを、

人一倍、知っているからかもしれない。

明るく振る舞う裏で、

そんな過去を背負っていたのか……



「クロル……

 寂しいか…?」



俺の質問に、クロルは笑って答えた。



「ぜーんぜんっす!

 あちしには、バレーっちや、ミットっち、

 アウト師匠がいるっす!

 みーんな大好きっす!」



そうか……

どうやら、それなりにやっているようだ。

俺は少し安心する。



「それに!

 エイジっちにも会えたっす!

 大丈夫!

 エイジっちも、愛してるっすよー!」



アハハ、とクロルが笑った。

お決まりの口癖だ。



「あぁ、俺も愛してるよ。

 クロル」



でも、俺には今までとは違って聞こえた。

だから、俺も好意を伝えよう。



「……!!

 卑怯っす!エイジっち!

 そんな真剣な顔で、口説き文句っすか!」



クロルは、ビックリして顔を赤らめた。

手で顔を仰ぎながら、どぎまぎしている。



「あーあ、

 2人とも何やってんだかー」



バレーは、またまた呆れた顔をした。

でも、どこか楽しそうだ。



「もう最下層の部屋は目の前だねー

 交代で見張りをしながら、

 今夜はここで休もう」


「あぁ、明日はいよいよ、

 【神具】のある場所で調査開始だ」



俺たちは、互いに顔を見つめ合い、

気合いを入れ直した。

しかし、その時……



「坊主、その必要は無ぇぜ……!」



どこからともなく、声がする。

声の主は、思わぬ人物だった。


あんたは……!ギルド長!?



「助けてくれ。

 俺は、今、命を狙われてるんだ……」




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名前 エイジ・ニューフィールド 

職業

    略

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名前 バレー・ゴルド―・スパイク 

職業

    略

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名前 クロル・スイム

強さ

   友好度   70 ⇒ 【しんきんかん】!! ←NEW!

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