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異世界クエスト  作者: 太郎
異世界クエスト中
58/95

第50話-キス魔

「待つにゃん!

 エイにゃん!

 ちゃんと、ちゅーするにゃん!」


「いや、無理、無理!

 クロル!助けて!」


「アハハハハ!

 いいっすよー、最高っす!

 エイジっち! 逃げて!

 ちょー逃げて!」



クロルは、大爆笑中だが、笑いごとではない。

酔っぱらったバレーは、なんとキス魔だった。



ムゴッ! とゾンビ(ポーション人形)を突っ込んだ直後、

一瞬、目がとろんとなったかと思うと、

バレーは急激に態度を変えた。



「……エイにゃん!ひどいにゃん!

 ポーションなんて飲んだら……

 ……

 ……あたい、がまんできないにゃん!」



怒られるかと、ビクビクする俺を余所に、

バレーは、ぶりっ子ポーズを取った。

うわっ、似合わねぇー


態度の急変に驚く俺にお構いなく、

バレーは、ガバッと抱きつき、

俺を膝に乗せ、強制的に、だっこした。



「んふふふー

 エイにゃん!だいすきにゃん!」



バレーの豊かすぎる膨らみが、俺の背中に、ぽよんとあたる。

ふかふかの弾力。しっとりとした感触。

うす布1枚を隔てて、母性の象徴が、これでもかと主張してくる。


これは……すごいぞ!


じゃなくて、離してくれバレー!!


知っての通り、バレーの身長はかなり高い。

とうぜん、姿勢は、母親の膝に座る子供の様な格好になる。

俺の鎖骨のあたりから、バレーの長い腕が抱きついている。


もがくとぽよん、もがくとぽよん。


うごくとぷるん、うごくとぷるん、である。



「にゃんにゃーん!

 もう離さないにゃーん!」



バレーは、俺の頭に頬ずりしながら、

腕をさすったり、手の甲にキスをしようとする。


にゃんにゃん、にゃんにゃん。


くんくんと俺の髪の匂いを嗅ぎ、

耳に息をふぅーと優しく吹きかける。



「ちょっ!やめて!

 まじ、やめて!

 おい!クロル!たすけて!

 ちょ!本当に!」



俺は、必死で助けを求めるが、

クロルは大爆笑、腹を抱えて転げまわっている。

タライのふちをバンバン叩き、

涙目になりながら、ヒ―ヒ―言っている。



「アハハハハ!

 あー最高っすー!

 面白すぎて、背景に花が咲きそうっすー!

 ひーひー……

 腹筋いたいー!いたいー!」



完全にクロルは確信犯である。

自分が楽しむために、バレーにポーションを飲ませたに違いない。

それにしても、あの姉御ヤンキーキャラが、

ここまで、甘えんぼキャラに変るとは……


キャラ崩壊ってレベルじゃねーぞ!?




「んふー

 えーいーにゃん!

 こっち、向くにゃん!」




俺の顔を掴んで、バレーは無理やりキスをしようとする。

バレーの握力は半端ではない。


やめて! 俺の唇の純潔が!



「んぎぎぎぎ!無理!まじで無理!」



俺は、手をバレーの顔に突っ張って、

どうにか膝から逃げる。



「あーん!待つにゃーん!」



そして、冒頭の追いかけっこである。




「どうして、にげるにゃん?

 エイにゃんのころ、

 こんにゃにすきにゃのにー!」



バレーは両手を突き出して、俺を目掛けて突進してくる。

船の中はもう大騒ぎだ。

バレーは完全にろれつが回っていない。


ガッシャン、ガッシャンと、船内の家具をひっくり返す。



「にげてー!エイジっち!

 にげてー!

 アハハハハハ!

 ほら!つかまるっすよー!」



クロルはその様子をタライから眺めるだけだ。

全然、助けるそぶりは無い。



「つーかーまーえたっ!

 もう、にげられないにゃー

 かくごするのにゃーん!」



そして、とうとう捕まる俺。

もはや、逃げ場は無い。


嗚呼……さらば、若き青春の日々よ……

我が純潔は花と散りけり……



ちゅっ!と唇と唇が触れ、

バレーの熱い吐息が、俺の口に注がれたその時……


なんと、俺の全身が金色に輝き、凄まじい活力がみなぎった!

……いや、性的な意味ではなくてね。



「おっ!回復が始まったっすね!

 エイジっちどうっすか?

 これが、金竜種のブレス。

 【生命のブレス】っすよー!」



どうやら、バレーの隠していたブレスは、

火炎の息吹的な攻撃のブレスではなく、

回復用のブレスだったようだ。



「バレーっちは、あの性格っすからねー

 このブレスは滅多に使わないっす!

 男の子に使ったのは、

 エイジっちが初っすよ!

 ちゃーんと、あちしに感謝してほしいっす!」



確かに、昼間の疲労がウソの様に消えていく。


最高の睡眠環境で10時間ぶっ続けて眠った後、

贅沢な全身マッサージを受け、

バランスのいい最高の食事と適度の運動をしたような、

凄まじい爽快感と健康感が全身を包む。


なんだか、生まれ変わったような気分だ。

すげぇ!なにこれ!



「う―…げんかいにゃー……」



感動に浸っていると、バレーは酔ったまま寝てしまった。


くてん、と俺に倒れかかってくる。

身体がデカイので支えきれない。

急いで、椅子に座らせ、背もたれに倒れさせた。


さっきまでの騒ぎがウソのようなあどけない顔で、

スー…っと、健やかな寝息を立てている。



「あー、バレーっち。

 寝ちゃったすねー!

 どうっすか?

 エイジっち、ポーション人形は嫌いみたいだから

 こういう方法で回復するしかなかったっす!」



クロルは、ニコニコしながら手を振る。

そうか、クロルも俺を回復させようとして……



「雑学を言えば、

 御先祖のトス様も、今のブレスで魔王を倒したっす!

 不死の魔王は、回復技がダメージになる

 アンデッドだったっすから。

 もちろん、口移しじゃないっすけどね!」



クロルは、ひとしきり喋り終わると、

片腕を上げ、うーん! と大きく背伸びをした。



「バレーっちも寝ちゃったし。

 あちしらも、そろそろ寝ましょうか?」



クロルは、そう言うとタライに合わせて身体を丸めた。



「エイジっち、船の魔石の灯り消してー」



クロルに言われた通り、

船に備えつけてあった魔石の照明を落とす。


辺りに闇が訪れる。

波の音だけが、ザー……っと静かに聞こえている。



「明日も早いしな。じゃあ寝るか。

 お休みクロル」



俺も挨拶をして、その辺に雑魚寝する。



「……おやすみエイジっち

 愛してるぜ―……」



この手の女の子の「愛してる」は信用しない方がいい。

でも「愛してる」は、悪い言葉ではない。


波の音を聞きながら、俺は目を閉じ眠りについた。




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名前 エイジ・ニューフィールド 

職業

    略

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名前 バレー・ゴルド―・スパイク 

職業

    略

■■■■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■■■■■■■■■■■■■■■

名前 クロル・スイム

職業

    略

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