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異世界クエスト  作者: 太郎
異世界クエスト中
57/95

第49話-船上の一夜(バレー)

世間の世知辛さと言うのは、

思わぬところで感じるものだ。


助けて欲しいときほど、

救いの手は差し伸べられない。


どんなに人のために尽くしても、

それは同じなのだ。


ア○パンマンも歌ってる。

愛と勇気だけが友達さ……と。


顔まで削っているのに友達ゼロだ。

ジャムとは仕事上の付き合いなのだ。


それがウソだと思うなら、やってみるがいい。

あなたの町でも試せることだ。


……水浸しのタライに、ビッチビチの巨大な鮮魚を入れて、

タクシー拾ってみ?

すげぇ嫌な顔されるから。



「あの……少し……

 休ませて……下さい……」



俺はヘトヘトになりながら、休みを請うた。


クロルの店から、馬車を拾おうとしたが、

どの馬車にも嫌な顔して断られた。



……港までの移動は、まさかの徒歩だった。



魚臭いし、水は跳ねるし。

上半身が美少女で、タライの中から、

励ましの声が聞こえて来なければ確実に挫折していた。


途中、何回となく休憩を挟んだ。

そのせいで、港に着いたのは夕方だった。



「だらしねぇーなー

 早くしろよー!

 あたいの船まで、行くんだからさー」



バレーが、非情な言葉を投げつける。


彼女は、一回もクロルを運ばなかった。

あんなに怪力なのに、だ。


おのれ……この恨み晴らさでおくべきか。



「なんか悪いっすねー!エイジっち!

 ほら!ガンバ!ガンバ!

 愛してるっすよー!ひゅーひゅー!」



クロルが、タライの中でパチパチと手を叩く。

飲み会の合いの手みたいなテンションで、声援を送ってくる。

この手の女の子の「愛してる」信用してはならない。

大体の場合、愛してない。

利用しているだけだ。



肉体の疲労で精神がどんどん卑屈になっていく。


吐きそうなほど疲労困憊した頃、

ようやくバレーの船に辿りついた。



「今日は、もう夕暮だし、

『水の神殿』には、明日、挑戦した方がいいねー

 ギルドの宿泊施設まで戻るのもめんどうだ。

 あんたたち、あたいの船に泊っていきな!」



と、バレーが宿泊を勧めてくれた。

……というか、体力的にもう宿まで帰れそうにない。



俺たちは、船に乗り込み、そのまま夜まで休憩した。






「あーあーあー……

 本当に死ぬかと思った……」



俺は、ガッチガチの足を、

自分でマッサージしながら、ダラダラ椅子に座っていた。

休憩のおかげで、体力はそこそこ戻った。


外は、もう星空だ。



「いやーエイジっち!

 カッコよかったっすよ!

 さすがは『英雄の子孫』っす!」



クロルが、うちわで風を送ってくれる。

申し訳なさそうな笑みが、顔に浮かんでいる。



「そうだ! エイジっち!

 『ポーション人形』を食べるっすよ!

 疲労回復に最高っすよー!」



クロルが、何かアイテムを取りだした。

回復アイテムをくれるらしい。



「はい! どうぞ!

 食べるっすー!」



ニコニコの笑顔で渡されたのは、

……でろんでろんのゾンビ人形だった。


このゾンビ人形、一応、食べ物の様だ。

全身がまんじゅうのような生地で出来ている。

まぁ、人形焼きカステラみたいなもんだ。


しかし……形が異様に気持ちが悪い。

あんこの代わりに、ポーションが詰まっているらしく

首や目玉の部分から、緑色の汁がグジュグジュにはみ出てる。

正直、グロすぎて食べる気にならない。


そもそも回復アイテムに、ゾンビをチョイスって……


俺は人形を処理できず、クロルに話しかけた。



「なぁクロル……これ食べれるの?」


「エイジっちー!

 さては、可愛すぎて食べられないんすね?

 こっちは、お姫様!

 これは、森のくまさんっす!」



お姫様!?くまさん!?

……どちらも、ゾンビにしか見えない。

仕方ないので、バレーに振る。



「バレー食う?」


「いらない。

 あたいにゃ食えない」



はい、全力拒否だ。



「というか、あんた情けないねー

 あれしきでバテるなんて

 『英雄の子孫』が聞いて呆れるよ」



バレーは、グラスにお酒をそそぎ、

水でも飲むように、喉を鳴らしている。

飲み干す度、プハァ―と気持ちよさそうな息を吐く。



「そう言えばさー

 バレーも『英雄の子孫』なんだろ?

 一体、誰の子孫なんだよ?」



そうなのだ、驚いたことに、

バレーも『英雄の子孫』なのだ。

名前からすれば、うちの爺さんの子孫ではないが、

初めて会った同類だ。

誰の子孫かすごく気になる。



「はぁ!?

 あんた、あたいのこと本当に知らないの?」



バレーは驚いたように答えた。

そういえば、バトーさんも同じ様なこといってたな。

首をかしげる俺。

横から、クロルが口を挟む。



「いやー本当に珍しいっすねー

 ところで、エイジっち!

 今は何年でしょー?」



なんだ? 

俺は、いきなり年を聞かれて少し戸惑う。

たしか、ガーターさんに聞いたのは……



「後ゴルドー歴2012年……?」


「当たりー!

 では、バレーっちの名字は?」


「ゴルド―か……?」


「またまた当たりっす―!」



えっ? まさかゴルド―歴って……?



「最初の魔王である『不死の魔王』を倒した英雄。

 トス・ゴルド―・リベロを知らないっすか?

 バレーっちは、その子孫っす!」


「まぁ、2012年前の英雄だけどなー」



暦の基準になる様な英雄かよ!

うちの爺さんとは、スケールが違うよ!



「ちょっと待て!

 それは凄いんじゃないか?」



俺は驚き、2人に質問した。



「いや? 古い英雄ほど、子孫は多いからな。

 特に凄いことは無いよな?」


「そうっすねー

 むしろ、バレーっちが尊敬されているのは、

 バレーっち自身の実力が理由っすねー」



なるほど。

直系の血縁さえあれば子孫だから、

当然、古い英雄の家系には『英雄の子孫』が多いのか。

だから皆、隠さないのね。



「そうなのか。

 ところで、職業【英雄の子孫】って

 なんかメリットがあるのか?」



前々から気になっていたので聞いてみる。

自分じゃ何も実感しなかったからな。



「あー?

 大したことは無いねー

 人間だと、五感が鋭くなるくらいか?」



えっ? そんなもんなんだ。

俺の感覚がときどき研ぎ澄まされるのは、

そのせいだったのか。



「じゃあ、竜人族だと?」



そうだ、バレーは人間では無い。

俺は、質問を変えて聞いてみる。



「……教えてやんない」


「えっ!? なんで?」



顔をそむけるバレー。

またまた、クロルが口を挟む。



「竜人族だと息吹能力、

 つまりブレスの強化っすよー

 でもでも、金竜種のブレスは特殊でー……」


「あっ!こら!クロル! 

 勝手にばらすなよ!」



バレーが慌てて、クロルの口をふさぐ。

ムグムグー!とクロルは、声にならない声を出している。


なんで、そんなに隠すんだ?



「……モガモガモガ!分かったっす!

 ブレスのことは、話さないから、

 もう離すっす!」



バレーの手を振り切り、クロルが拘束を逃れる。

一息ついたクロルは、俺を手招きした。


近づくと、そっと耳打ちをする。



「エイジっち!

 今日は、お世話になったから、

 お礼に、良いことを教えるっす!」



クロルの顔がフフフ……と悪代官の顔になる。

おっ!なんだ、なんだ!?



「さっき、バレーっちが、

 ポーション人形を食べなかったのは、

 食べたくないのではなく、

 身体的な問題があったからっす!」



なに? 身体的な問題?



「金竜種の竜人族は、お酒には強いけど、

 微量のポーションでも酔っぱらってしまう

 特徴があるっす!」



ほうほう!



「バレーっちのブレスの秘密が知りたければ、

 ポーション人形を食べさせるっす!

 フフフフフ……

 面白いことがおこるっすよー!」



なるほど。

これは、先ほどの恨みを晴らすチャンスだ。

では、では、さっそく。



「おい、バレー

 ちょっと、用事があるんだけど……」



俺は、先ほど処理に困っていたゾンビどもを手に隠し、

バレーのもとに近づいていく。



「あー?

 こっち来るんじゃねーよ

 あたいは、美味い酒を飲んでんだからさー」



バレーは、顔をしかめて俺を拒む。


ふふふ、そんな態度が出来るのも今のうちだけだ。



「そうか、でもこれはもっと美味いぜ?

 ほれ!くらえぇぇぇぇ!」



俺は、ムゴッ!っとバレーの口に、

ポーション人形を突っ込んだ!



するとバレーは……?




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名前 エイジ・ニューフィールド 

職業

    略

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名前 バレー・ゴルド―・スパイク (にゃんにゃんもーど❤!)

職業

    略

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■■■■■■■■■■■■■■■■■■

名前 クロル・スイム

職業

    略

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