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異世界クエスト  作者: 太郎
異世界クエスト上
5/95

第4話-異世界の車窓から

ガサゴソと森の中を歩く。

膝上まで伸びる草がうっとうしい。

剣でなぎ払いながら先に進む。

すでに日は高く昇っている。


せわしく手を動かしながら、

俺は昨日を振り返る。


……あれから、

俺は夜を越すためにいろいろ準備をした。


まずは、周囲の散策。

まぁ、日も落ちていたから、

本格的には出来なかったが。


歩いてみると、昨日の遺跡は、

周りをぐるっと森に囲まれていた。

散策がてら、

辺りのヤブを叩いて回ったりしたが、

モンスターは出てこなかった。


予想通りだ。


あの地下廊下で感じたモンスター臭っていうか、

気配っていうか……

そういうものが、この辺には無い。


まぁ単なるカンなんだが、

10時間も彷徨ったことで培われたものだ。

ちょっとは信じても良い。


結局、朝まで出てこなかったから、

あの辺りには居ないのだろう。

とりあえず、身の安全が確保できたというわけだ。


散策の収穫は他にもある。


遺跡の近くに小川があったのだ。

これは幸運だった。


生水は怖かったが、我慢できずに飲んだ。

蒸留しようにも、器が無い。

水は澄んでいたし、大丈夫だろう、と高を括った。


おかげで、喉は潤っている。

空腹も水腹でごまかせた。


えっ、腹の調子?


大丈夫、期待通りの下痢気味だ。

言わせんなよ、はずかしい。


おかげで、空腹とは別の意味で腹が鳴って困った。


汚い話で悪いが、

そのせいで俺はここが異世界と

強く思うようにもなった。

さすがに人の腹具合で便を変えるなんて、

ゲームの自由度の限度を超えている。

ゲームなら、作ったやつは間違いなく変態だ。


それから、枯れ枝を集め、

ランタンの火打石を利用して焚き火もした。

火は獣を寄せ付けないって聞くし、

思ったより冷え込んだから。


結局、あまり眠る事は出来なかったが、

朝にはどうにか動けた。

これが若さか。


その後、小川で顔を洗い、身支度をして森へ、

そして今に至る、というわけだ。


森に入るのは不安だったが、

丁寧に草をなぎ倒しながら進めば、

けもの道のようなものが出来る。

あまりに森が深ければ、引き返すつもりだった。

タイムリミットは正午。

引き返す時間も考慮すれば、それぐらいで諦めねば。



「ふん……ふん、はっ、ふっ……」



大分息もあがってきた。

日の高さからすれば、もうリミット一杯だ。

この地味な草刈りもつらくなってきた。


しかし、俺はあきらめない。

もうひと踏ん張りだ。


めずらしく頑張るって?

大きなお世話だ。


まぁ実を言うと……

さっきから……何というか雑踏の音が

聞こえるのだ。


えっ、違う。俺はまだ、正常だ。

そんな優しい目で見ないでほしい。

これは断じて幻聴ではない。


すぐ近くに人がいる。

だから、もうすぐ森を抜けるはずなんだ。

俺の頭がおかしくなっていなければ。



もう少し。



あと少し。



やれ少し。



ほんの少し。



バシュ



突然、草が途切れる。


目の前に道が現れた。


あぁ、下ばかり見て、夢中で草を払っていたから、

距離が分からなかった。



……俺が出た道は、街道と呼ぶには

若干心許ない広さの道だった。


石畳を敷いてあるわけでも、

手入れがされているわけでもない。

ただ、人がしょっちゅう往来するため、

自然に道になった道。

まさにアニメやRPGで描かれる田舎道だ。


幸か不幸か、道にはだれも居なかった。


森から出てきたことで、

不審に思われなかったのは幸い。

雑踏の音が聞こえるなんて言っちゃったのが不幸だ。

……どうしよう、俺、頭おかしくなっちゃったのかな?


まぁしかし、これで町に行く目途が立った。

道なりに歩いていけば、いつかは町に着く。


仮に、町までは距離があろうとも、

人に会うことぐらいは出来るだろう。


もう何も怖くない。


いざ、行かん文明の下へ。



ポテポテと俺は歩き出す。

歩きながら、人に会ったときの設定を考える。


とりあえず「道に迷った」、これは鉄板だろう。

情報を聞き出すには、ゲームだろうが、

異世界だろうが、不自然ではない設定だ。


言葉が通じなかったり、

さらに突っ込まれたら「異国からの旅人」。

これでいこう。

あながち、嘘というわけでもない。

常識の欠如も、ごまかせるはずだ。


いろいろ作戦と妄想を練りながら、道を歩いて行く。

道はいたって平坦だ。

森の中に比べれば天国。

ただ、ひたすら歩を進める。



てくてく、てくてく、てくてく、と……



……とまぁ、そんなこんなで、

俺はとうとう町が見えるところまで来たわけだ。



えっ、「そんなこんな」を喋れ?


……ほぅ、俺が誰にも会えず、

ひたすら2時間も無言で孤独に歩く様を描写しろと?

貴様、ボッチの運命力を舐めているな。

よろしい、あとで特別番組「異世界の車窓から」を

耳元でたっぷり語ってやろう。


とまぁ、冗談はさておいて、

いよいよ町に行けるわけだ。

そりゃあ、テンションも自然に上がってくる。


ハーレムなんて銘打って、

4話すぎるまで野郎1人出てこない

孤独ライフともおさらばだ。

えっ、いや、気にすんな、こっちの話。



「町についたらどうするかな」



まぁ、情報収集も兼ねて、消費活動に勤しむか。

食堂があると良いな。

もともとVRでも武器や道具を見るの好きだったし、

アイテムショップも見て回ろう。

金貨の価値も知りたい。


久しぶりの人との交流。

食欲、物欲、文明、町の灯り!


思えば、どこだか分らぬ「こっち」に来てから、

しんどい思いばかりだった。

ようやく一息つけそうだ。


まだ見ぬ町に思いを馳せて、

俺はわくわくしながら、歩を進めるのだった。




■■■■■■■■■■■■■■■■■■

名前 新原 英治 (へたれ・テンションUP) ←NEW!

装備 

   略

強さ

   ???

スキル

   略

ゴミ箱

   略

持ち物

   略

■■■■■■■■■■■■■■■■■■

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