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異世界クエスト  作者: 太郎
異世界クエスト上
37/95

第36話-炎の神殿下

固唾をのんで、俺の作戦を待つ仲間たち。

絶望的な戦況。

俺は脳をフル回転させ、逆転の一手を考える。


RPGのコマンドを思い出してほしい。

……たたかうもダメ。

……どうぐもダメ。

……ぼうぎょもダメ。

そうなれば、やることはひとつしかない。



「みんな……全力で……逃げるぞ」



「こ の へ た れ !!」



そう、俺が「最強にして最後の手段」と言えば、これしかない。

作戦「にげる」である。



「マリーさん、ドリアードをそのままにして。

 皆、早く逃げるぞ!」


矢継ぎ早に指示を出す。

戦闘を放棄し、皆が部屋の出口に向かう。



「……おっと、こいつを持って行かないと!」



拘束が解けそうなフレア・コングを尻目に、俺たちは全力で部屋を出る。

階段を駆け上り、通路を突っ切り、来た道をひたすらに走り続ける。

だが、勘違いしないでほしい。


これは「戦略的」撤退なのだ。単なる逃亡とは違う。


時間はあまりない。

フレア・コングに追いつかれたら、お終いだ。

詳しい説明をしてはいられない。


途中、息を切らしながら、アインが俺に声をかける。



「エイジ! おい!

 聞いておるのか!」


「なんだ? 喋ってる暇があったら走れ走れ!」


「はしれではない!

 おぬし それを持ってきては、逃げる いみは ないぞ!」



アインが見つめる方向には、真紅の槌。

そう、俺の手には【神槌・火炎槌】が握られている。



「話を わすれたのか!?

 【神獣】は【神具】を持って逃げると……

 どこまででも 追ってくるのじゃぞ!!」



アインがそれを捨てろとばかりに迫る。

だが、せっかく苦労して手に入れたものだ、捨てるわけにはいかない。



「大丈夫、大丈夫!」



そう……大丈夫だ。

あの場所で戦うから勝ち目がないんだ。

あそこまで……あそこまで行きさえすれば!



全力で逃げる俺たち、しかし、後ろから壁をぶっ壊すような音が聞こえる。

フレア・コングの拘束が解けたようだ。

どうやら、障害物を壊しながら全力で追ってきているらしい。


俺は先頭を走り、ザコ敵を一掃しながら考える。



……どこまででも追ってくる敵。

……全身、超高熱の炎のゴリラ。

……そしてあの場所。



後を追う音は、どんどん大きくなる。

チリチリと首筋が焼けるようなのは、プレッシャーのせいだけではない。

姿は見えないが、フレア・コングは、すぐ後ろまで近寄っているはずだ。



「皆! 走れ、走れ!!」



ようやく、神殿の入り口が見えてくる。

バッ!

と飛び出した先、外の世界が広がった。



「皆は先に吊り橋を渡れ!

 そうだ、アイン、これも持って行ってくれ!」


俺は、アインに【火炎槌】を渡す。



「そんな!?エイジ君は!?」


「まさか、エイジさん、囮になるつもりですか!?

 いけません!

 1人で犠牲になろうなんて!!」



ライクちゃんとマリーさんが心配そうな声をあげる。



「……大丈夫!

 さぁ、時間が無い。急いで!」



ためらう彼女達に吊り橋を渡らせ、向こう側に行かせる。

俺は吊り橋の真ん中に立ちすくみフレア・コングを待つ。



グルルルル……



たいして間も開けず、フレア・コングが神殿から出てくる。

獲物を狙うように喉を鳴らし、俺の方に近づく。

フレア・コングの歩幅は大きい。

この歩幅なら、あの距離もすぐに追いつかれてしまうはずだ。



一歩。



また一歩。



だんだんと迫りくる重圧と熱気。

とうとう、フレア・コングが吊り橋に足をかける。

じりじりと詰め寄り、完全に吊り橋の上に乗る。

吊り橋の真ん中で対峙する俺とフレア・コング。


あとは、時間を稼ぐだけだ……


俺は出来るだけ剣を突き出して、コングとの間合いを広げる。

フレア・コングも、俺を追い詰めたと理解したのか、

間合いを詰めようとはしない。

チリチリと焦げ臭い匂いが辺りを包む。


俺は、横目で後ろを振り返る。

3人とも、もう吊り橋を渡り終えたみたいだ。



「もう十分だ……」



「エイジ君!!」


後ろからはライクちゃんの心配そうな声が聞こえる。

そんなに心配しなくても良いのに。

俺はつぶやき、剣を鞘に収める。


そして……






その瞬間、吊り橋に炎が燃え移る!!



ウホッ!?



うろたえる様に左右を振り返るフレア・コング。

だが、もう遅い。


「どこまででも追って」くる「炎を纏う」モンスター

「乾燥し老朽化した橋床」の「木造」の「つり橋」

「ビュービューと崖からの風が吹き抜ける」その場所で

「超高熱の熱」がそこに加えられる

「チリチリと焦げ臭い匂い」がするほど時間を稼ぎ

「崖の深さは半端ではなく、崖の下には激流の『川』」

「水」が弱点の「火」属性

……落ちれば、まず「助かる見込みは無い」


もう、分かってもらえただろう。




「お前の敗因を教えてやるよ」



俺は大急ぎで吊り橋を駆け抜ける準備をする。

この先、橋がどうなるか知っているから。

そして、フレア・コングに向かい諭すように言った。



橋床は焼け崩れ、フレア・コングの足場が抜ける。

炎は広がり、もう逃げ場は無い。



ずっと、石ばかりの神殿の奥で【火炎槌】を守り続けたモンスター。

想像できただろうか、部屋の外には、木製の吊り橋があることを。

想像できただろうか、自分が籠っている間に、吊り橋が老朽化することを。



「言っただろ、『ぼっち』と『ひきこもり』は違うって?」



ガラッ……



神獣の居た橋床は完全に燃え尽き、あとには断末魔だけが響いた。




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名前 エイジ・ニューフィールド 

職業 【英雄の子孫】【冒険者】

   【くされげどう RANK UP! 】【ヘンタイ 】

   【拳闘士】【獣使い】

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名前 ライク・ブルックリン 

    略

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名前 マリーシア・スローウィン

    略

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名前 アイン・アルバトロス 

    略

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