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異世界クエスト  作者: 太郎
異世界クエスト上
27/95

第26話-鍛冶

5月2日、木の日。

俺は、鍛冶屋の親方に呼ばれていた。



「トカゲパンツに話がある。

 明日、鍛冶屋の作業場へ来いと伝えてくれ」



ガーターさんにそれだけ言って、親方は帰って行ったそうだ。

ライクちゃんと町から帰ってくると、そう伝えられた。


……そして、俺は今、鍛冶屋の裏手に来ている。

店の裏手がちょうど作業場だ。

作業場はレンガと岩を上手に組み込んで作られている。

火を扱っているせいで、室温が高い。

プシュープシューという音が場内に響く。

素材を打つ、ガン!ガン!ガン!という力強い音も聞こえる。

鉱石、かまど、ハンマー、工具……。

ギラギラと光る汗臭い漢たちの仕事場だ。


俺に気がつくと、親方が手を止めた。

パンパンに張った筋肉に滴る汗を拭きながら、こちらに歩いて来る。

途中、ガチャリ、と立てかけてあったチート剣を取る。



「よう、トカゲパンツ」



俺も、こんにちは、と頭を下げる。

わざわざ呼ばれるなんて、チート剣の攻撃力のことか? とも思った。

しかし、ギルドで測定でもしない限り、攻撃力がバレることは無い。

案の定、話は違うことだった。



「昨日、店の主人(おもてのほう)から渡されたが……

 こいつはウチじゃ、手に負えねぇぜ……」



ガシャっと剣を投げる。

俺は投げられた剣を受け取りつつ言う。



「えっ、やっぱりそんなにボロいんですか?」



俺は言う。

親方がムスっと返す。



「……いや、そうじゃねぇ。

 こいつは【神鉄】で出来ている。

 単に、俺の手に負えねぇだけだ……」



俺が問う。



「しんてつ?

 それって、オリハルゴンより、希少なんですか?」



親方が答える。


「馬鹿言うな、神鉄に比べりゃオリハルゴンなんてただの石よ。

 なにせ、この世に7つしかねぇ【神具】と同じ素材だ」


さらに……


「武器は冒険者の命だから、出所はきかねぇ……が

 こいつは、相当ヤベェもんだな」



……あー。爺さん、一応「英雄」だもんな。

そういう曰く付きの武器の可能性は十分だ。



「じゃあ、修理は無理なのか……

 まぁ、別に困ってないし、このままでいいや」



俺はあきらめて言う。

すると、親方が……



「そいつは、もったいねぇぜ、トカゲパンツ。

 見たとこ、ガタのせいで、そいつの性能はいいとこ半分だ。

 しっかり、整備してやりゃ、もっと良い武器になる」



……今のままでも十分チートだが。

しかし、性能アップは魅力的だ。



「でも、直せないんじゃ、仕方がないですよ」



俺は気を使って言う。



「いや、絶対直せねぇ、とは言ってねぇ。

 【神鉄の巫女】なら可能だ」



親方が返す。


【神鉄の巫女】……ドワーフ女性の固有職業。

そして、鍛冶師として【神鉄】を扱える唯一の職業でもある。

もっとも、【神鉄】自体がほとんどないものだ。

鍛冶師よりは、文字通り巫女としての側面が強いらしい。



「そんなの、知り合いにいませんよ」



アハハハ、と後頭部に手をあてて答える。

ガハハハ、と親方も豪快に笑う。



「そうだな、ドワーフでもめったになれるもんじゃねぇ。

 当代じゃ、アイン・アルバトロス嬢ぐらいなもんだ」



笑いながら親方にバシバシと肩を叩かれる。

……はい、知り合いにいました。








「……と言うわけで、剣の修理に行きたいんですが」



家に帰って事情を話す。

ガーターさんとライクちゃんは呆れている。



「まさか、あのアルバトロス家と知り合いとは……」


「話に出てきたアインが……

 あのアイン・アルバトロスなんて思わなかった……」



2人とも額に手をあててうなだれている。

アインのやつ、そんなに偉いんだろうか?



「まぁ、クエストのこともありますし……

 無理にとは言わないんですけど……」



まぁ、俺の本音だ。

正直、クエストをこなすには十分だし。

一応、相談しているだけだ。



「そのことなんだが……」



とガーターさんが話しかける。

すこし、目が泳いでいる。



「……張り切ってくれるのは嬉しいんだが。

 エイジ君が頑張りすぎると……

 ……その、今年はもういいかなって」



なにやら、ごにょごにょ言っている。

要するに、俺が稼ぎすぎると他の冒険者に迷惑らしい。

それもそうだ、岩トカゲ騒動であれだけ稼いだのだ。

他のクエストも同じ調子でこなされたら、ギルド側も困る。

なにせ、マネージャー制なのだ。

明らかに収入が偏る。



「……最近、同僚の目が冷たいんだ」



両手で顔を覆いながら、うつむく。

苦労してんだなこの人……


まぁこれで、心配ごとの1つは消えた。

しかし、まだ相談はある。



「それで、ライクちゃんも一緒に連れて行きたいんですが……」



えっ? という顔でライクちゃんが俺を見る。

あっ、今の顔、ちょっとかわいい。


……すいません。のろけました。

しねとか言わないでください。

あっ、イタイ。

やめて、モノは投げないでください。



……いや、真面目に話そう。


1つ目は情報のことだ。

前回の岩トカゲの【斬撃無効】のこともある。

やはり、俺だけでは異世界の戦闘を勝ち抜くことは出来ないと思い知った。

攻撃力だけのゴリ押しではダメということだ。

得られるならば、情報のサポートは欲しい。


しかし、アルプ鉱山で考えたこともある。

確かに、今回は遠方へのクエストではない。

だが、ガーターさんを連れていくのはやはり危険だ。

レエンさんと離れ離れにするのも忍びない。

2人ともデートするほど仲がいいのだ。


この点、ライクちゃんはマネージャーを目指すだけあって博学だ。

これまでも「光の遺跡」で色々教えてくれたりもしている。

ガーターさん抜きで情報を得る。

これを実現するには、ライクちゃんが適任なのだ。

まぁ、率直に言うと。

どうせ、ダメならダメおっさんよりもダメ少女ということだ。


そして、2つ目は……

……言うな。

……そう、ヤンデレ化が怖いからだ。



とまぁ、率直にお願いしてみたのだが……

めずらしくガーターさんが渋ってしまった。

さっきから、腕を組み仕切りに悩んでいる。

やはり、娘を危険な旅に出すのは躊躇われるのだろうか。



「……いくらエイジ君とは言え

 嫁に出すのは早すぎる」



そこまでいってねぇよ!?

あんた、今まで何を聞いてたんだよ!

修理につれてくだけだよ!


心の中で激しく突っ込んでから、訂正する。

ほんと、クエスト情報以外はダメだこのひと。



「だけど……」



今度は、ライクちゃんから物言いが入る。



「私まだ、正式のマネージャーじゃないよ?」



そうなのだ。ライクちゃんは正式なギルド職員ではない。

だから、魔導機は使えないし、ギルドも利用できない。



「それに、すぐに正式なマネージャーになるのは無理だよ」



曰く、ギルドマネージャーになるには、年に2回開かれる選択式試験をパスし……

その後、アイテム学、魔物学、地理学、歴史学などの論述試験を経て……

3日間に及ぶクエスト実技研修を終え、やっとなれるものらしい。


マネージャーには、ギルドの管理運営義務があるのだ。

好き勝手クエストをする冒険者とは違う。

まぁ、難しい仕事なのだろう。

良い冒険者と組めば、労せず一攫千金だし。



「それについては、俺に考えがある」



俺はこう言い放った。

数十分後……


~~~~【特例通達】~~~~~~

本日、この書面の到達をもって

ギルド長特別権限により

ライク・ブルックリン 殿を

冒険者ギルドマネージャーとする。

   冒険者ギルド長 ブル・ダーツ 

~~~~~~~~~~~~~~~~~



俺は、ギルド長の許可を片手に家に帰る。



「なななっなんで?」



ライクちゃんが、ぽかんと口を開けている。

書類を手にとって透かしたり、なぞったりしている。

いや、偽造じゃないからね。

まったく信用されてない。


不思議に思うかもしれないが、今回は不正な手段など使っていない。

そう、ただ単にギルド長に取引を持ちかけただけだ。

ヤンデレ治す方法ありますけど聞きたくないですか? っと。


……知ってるか?

ヤンデレって撫でると治るんだぜ。


美人の奥さんが、あのハゲに……

きゅん! と言わされるのは癪だが仕方がない。



こうして俺は、武器修理をすることになった。




■■■■■■■■■■■■■■■■■■

名前 エイジ・ニューフィールド 

職業 

   略

装備 

   略

強さ

   略

スキル

   略

ゴミ箱         

   略

持ち物

   ランタン

   ギルド長のゆうあい ←NEW!

   サバイバルメモ

   皮のジャケット

   皮のよろい

   岩トカゲの皮

   たくさん鉱石

   魔導機おそろい

■■■■■■■■■■■■■■■■■■


■■■■■■■■■■■■■■■■■■

名前 ライク・ブルックリン 

職業 【マネージャー RANK UP!】【夢見る少女】

   【世話焼きっ子】

装備 

強さ

   略

スキル

   略

ゴミ箱         

   

持ち物

   略

■■■■■■■■■■■■■■■■■■

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