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異世界クエスト  作者: 太郎
異世界クエスト上
22/95

第21話-めぐりあい、山

サー……という雨音だけが聞こえる。

周りの草が放つ青臭く湿っぽい匂い。


……どのくらい時間がたったのだろうか。

俺は気を失っていたようだ。

仰向けに、子供を抱き締めるように寝転んでいる。


「痛っ……」


アルプ鉱山は断崖絶壁の山ではない。

だから、崖から飛ばされても、真っ逆さまというわけではなかった。

それでも、何度も岩肌に叩きつけられ、強い衝撃を受けた。

怖かった……

必死に身体を丸めこみ、この子を抱えながらゴロゴロと斜面を下った記憶がある。

本当に死ぬかと思った。


胸に乗っかっている子供をゆっくり横に退かす。

ギシギシする上半身を起こす。

大丈夫だ。体は動く。


周りに草木がある様子からすると、山をかなり下ってしまったらしい。

雨で湿った岩肌の隙間から雑草が顔を出している。


一般の人がどのくらい丈夫かは知らないが、さすがは生命力、守備力ともに420。

痛みは強いが、目立った負傷は無い。


横に目をやる。

あの子は大丈夫だろうか?

あの状態で、崖を転がったのだ。

もう手遅れかもしれない。


子供の身なりは、山登り用の軽装といった格好だ。

破れているが、白いシャツに赤を基調としたデザイン。

小さい金属製の手甲と皮のブーツ。

頭には、魔術師がつけているようなドーム状の大きな帽子。

髪の毛は帽子の中にすっぽりと収まっている。


ダメもとで口元に耳を近づける。

……ッ! まだ息がある!


トカゲが打撃攻撃のみだったのが不幸中の幸いだ。

ドーム状の帽子がヘルメットの代わりになったのだろう。


半分あきらめていたので、助かると思うと動揺した。

俺はわたわたと急いで【ラスト・ポーションEX】を取り出す。

よかった。割れてない。



キュポン! 



と蓋を抜き、急いで薬を飲ませようと……



「まてよ?」



そういえば、俺は回復アイテム使うの初めてだ。



「これって飲み薬、塗り薬?」



ラベルには名前しか書いていない。

液体ってことは飲み薬?

……いや待て待て、虫刺されに効くあれも液体だが塗り薬だ。


匂いを嗅いでみる。


……ドクダミをスポーツドリンクで煮込んで、青汁で割った様な匂いがする。

まぁ、見た目もそんな色だしな。


……とりあえず、いきなり飲ませるのは怖い。


人体実験みたいで申し訳ないが、試させてもらう。


まずは、数滴たらしてみる。


おぉ!

すげぇ、内出血による青あざが消えていく。



「うぅぅっ」



可愛い幼顔が、苦しそうにうめく。

待ってろ、いま助けてやる。


塗って効くことは確認した。

でも、いちいち負傷部位を探して塗っていては、埒が明かない。

それくらい重傷だ。

ぶっかけてもいいが、それでは薬が足らない。


少し指につけて舐めてみる。

舌を鳴らして味を確かめる。

あれ!? 青リンゴサワーみたいな味だ。

匂いと全然あってない!



「……飲んでも大丈夫じゃね?」



ゴクッ


瓶に口をつけ、一口飲んでみる。



うまいっ! テーレッテレー! 



身体のギシギシが治っていくのが分かる。

多分、飲んでも大丈夫だ。


子供の首に手をまわし、ゆっくりと頭を持ちあげる。

薄紅色の小さな唇に瓶を近づける。



「飲んでみてくれ」



聞こえているかは分からないが声をかける。

……ダメだ。

口をこじ開け、無理やり飲ませる。

ゴフッ……!

最初はむせていたが、顔が安らいでいくのが分かる。



「……よかった」



ペチぺチと顔を叩く。



「おい、坊主、大丈夫か?」



うぅぅん……とうめく。

うっすらと目が開く。

どうやら気がついたようだ。



一応、傷が無いか確かめるか。

服のボタンに手をかける。

服を脱がせようとしたとき……






「なっなっ……なにしとるんじゃぁ!!」




張り手を食らった。

もうやだ、にんげんきらい。



「こら、坊主、なにすんだ!」



俺は全力で抗議する。



「そ……それは、こっちのせりふじゃ!

 ひとのねこみをおそうなんて

 どこのヘンタイじゃ!!」


ズリズリと後ずさりしながら、言い放つ。

命の恩人に対してその言いぐさは酷過ぎる。



「ちがう!

 傷が無いか確かめようとしただけだ!」



必死の弁解。


自分が重傷を負っていたことを思い出したのか……

相手もむぅぅぅ、と反論できない。



「……ほんとうか?」


「本当だ嘘じゃない!」



俺は両手を広げて警戒心を解く。



「いちおう、念のため【アナラズ】だけは、させてもらうからの……」


カシャ!



…………


…………



「なんじゃ!!」

 やっぱり、ヘンタイじゃないか!



「だぁあああ、またこの展開かよ!」



俺は頭を抱えてうんざりする。


「どいつもこいつも、人のことヘンタイ、ヘンタイって!

 さっきから、命の恩人に対して失礼だぞ!」


ズビッ! と指をさし指摘してやった。


「うっ……うるさいうるさい!

 それに、なんじゃ!

 さっきから、おぬしこそ、しつれいなやつじゃ!」


えっ?


「わしは、こどもでも、おとこでもないっ!

 ……誇りたかき、ドワーフのおんなじゃ!」



ドーム状の大きな帽子をガバッと取ると……

銀髪ドリルの縦ロールが、ぽろんと現れる。



……うそだろ



だって、お前、ぺったんぺったんつるぺったん……



ゴフォォ!



強烈なボディブローをくらい、俺は再び気絶することになった。




■■■■■■■■■■■■■■■■■■

名前 エイジ・ニューフィールド 

職業 

    略

装備 

    略

強さ

   レベル  42

   生命力  403 -17のダメージ!!

   攻撃力 2920

   守備力  420

   魔法力  420

   素早さ  420

スキル

    略

ゴミ箱         

持ち物

    略  

■■■■■■■■■■■■■■■■■■

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