第20話-ライクの日記
ライクの日記より
2012年4月20日 (土)
今日は買い物に行った。
めずらしく騎士団が出動していた。
なんでも、ケットお姉ちゃんの店にヘンタイが出たそうだ。
店の奥からサーブさんが駆け付けたから、事なきを得たらしい。
こわいよぅ。
追記
夜遅く、お父さんから報告があった。
明日、冒険者の人が来るらしい。
お父さんがお世話になった人だって。
うーん、気になるけど、ねむい……Zz。
2012年4月21日 (闇)
昨日の冒険者さんは、あたしと年が近いんだって!
それなのにSランクなんてすごい!
しかも、しばらく居候するそうだ!
歓迎会を開かなくっちゃね。
追記
「エイジ」って変な名前。
黒髪黒眼だし、さすが異国の人だ。
ぱっとしないけど、悪い人じゃないみたい。
お母さんに照れてて、ちょっとかわいい。
明日は、虹色コガネのクエストだ。
なんと、厳しい「お父さん許可」も、今日は一発クリアだった!
明日が楽しみ!
2012年4月22日 (光)
今朝は早かったので、朝の日記はお休みだ。
森では、キラービーがすごく出た。
こわかったぁ。
あと、転んだときに下着も見られたかも。
しかも、「良く見えなかった」だって。
さいてー。
……でも、いきなりペンダント渡すんだもん。
驚いた。
しかも、思い出のペンダントだ。
家族で買ったのがあるけど……
男の人から貰うのは、はじめて。
2012年4月23日 (火)
今日はエイジ君と「光の遺跡」までお出かけ。
せっかくのお出かけなのに、エイジ君は準備もしてない。
お父さんと、カシャカシャ魔導機ばかりいじってる。
さいてー。
どうしよう。エイジ君、捕まっちゃった。
あたしが騒いだりしたからかなぁ。
お父さんに相談したら、大丈夫って言ってくれたけど……
エイジ君、ごめんね。
でも【ヘンタイみならい】はない。
2012年4月24日 (水)
エイジ君が、アルプ鉱山に一人で行った。
しかも、あたしがいけない様に、わざと危ないクエストを選んだ。
さいてー。
でも、エイジ君がいないと、なんだかつまらない。
早く帰ってきなさい!
2012年4月25日 (木)
雨。エイジ君、今日も帰ってこない。
さいてー。
どこにも行けない。
なんか、つまんない。
2012年4月26日 (金)
あーあー
エイジ君、今朝も帰ってこない。
連絡に、一度帰ってくればいいのに。
帰ってきても、夕飯抜きにしてやるっ。
菜園が見えるテラスで日記を見返す。
お母さんは、洗濯物を干している。
「……なんだか、エイジ君が来てから、エイジ君のことしか書いてないなぁ」
「なに? 何か言ったライク?」
「ううん、なんでもない」
「ねぇ、お母さん、お父さんは?」
「今日もギルドの事務仕事よ」
「遅くなるから、先に夕ご飯食べなさいだって」
あたしは、ペンを上唇にのせて挟む。
「ふーん、エイジ君も、お父さん連れてけば良かったのに……」
「お父さんじゃなくて、『あたしを』じゃないの?」
「なにそれ、ぜんぜんおもしろくない冗談ね。
……今日で3日だよ? なんの連絡もよこさないで」
「鉱山からどうやって、連絡するのよ」
「……エイジ君なんか、アルプの岩トカゲに食べられちゃえばいいんだよ」
遠くに、うっすらとアルプ鉱山が見える。
あたしは、ふんっと鼻を鳴らして、そっぽを向く。
「ばーか……」
菜園の手入れでもしておこう。
そろそろ、コ―ムの実が食べごろだ。
エイジ君にも食べさせてあげよう。
「お母さーん、籠どこー?」
……あたしは、4人分の実を採りに菜園に出た。