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異世界クエスト  作者: 太郎
異世界クエスト上
18/95

第17話-決意の朝に下

……徒歩で2時間というのは結構な距離がある。

俺は道すがら、習ったばかりの【アナライズ】の使用法を試しまくった。


カシャ


■■■■■■■■■■■■■■■■■■

名前 パムパム草

効果 毒。食すべからず。

■■■■■■■■■■■■■■■■■■


カシャ


■■■■■■■■■■■■■■■■■■

名前 ライムベリー

効果 食用。果汁水が美味。

■■■■■■■■■■■■■■■■■■


カシャ


■■■■■■■■■■■■■■■■■■

名前 魔除の岩

   注意!! 魔法付与!! 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■



何でもかんでも、【アナライズ】を試す。

凄く楽しい。

たぶん、男はこういうの好きな奴多いと思う。



「エイジ君、すっかり魔導機がお気に入りだね」



水筒を開けながら、ライクちゃんが呆れたように言う。



「……うん、いろいろ知りたいからね」



返答も雑になる。

携帯ゲームに夢中になる子供とお母さんの図



「……ねぇ、これ何?」



魔導機を指し出して最後の表示をみせる。

「魔除の岩」について聞いてみる。



「あぁ、これは危なくないよ。

 魔物が来ない様に【プチバリア】が、かけられてるんだと思う」


「…ふーん、ありがとう」



付与されてる魔法の内容までは分からないのか。


俺は魔導機に目を戻しながら、ライクちゃんにお礼を言う。

心なしか、ライクちゃんはつまらなそうだ。



「まっ、分からないことがあったら何でも聞いてよねっ!」



ドン、と無い胸を叩くライクちゃん。



「ごぼぉ、えほっ、えほっ、み……みじゅ」



まぁ、水を飲みながら胸を叩けばむせる。

安定のトラブルメイカーだ。



2人はどんどん【グランアルプ】を離れていく。


ライクちゃんは、つばの広い白い帽子とワンピースといった行楽服。

肩からは水筒を下げている。

俺も危険は無いとのことなので、皮の鎧部分は外している。

布の部分だけだと、野球部のユニホームみたいだ。

アンバランスな服装の2人。


洗濯はしてるけど、そろそろ服も買わなきゃな。

俺もこの組み合わせは変だと思う。

近いうち、もう一度市場に行こう。


カシャ……


カシャ……


しばらく魔導機に夢中になっていたが、なぜか、だんだんと見覚えがある風景になってきた。

何の特徴も無い田舎道が延々と続く。


うん?


「特徴も無い田舎道」


ここは……特別番組「異世界の車窓から」の道じゃ……。

不安に思った俺は、ライクちゃんに質問する。



「お墓ってこの先にあるの?」



ライクちゃんが答える。



「うーん、違うよ。

 ちょっと怖いけど、森を突っ切るの。

 あっ、このへん魔物はいないから安全だよ」



森を抜ける……

まさか……



ガサガサ……


「こっち、こっち!」


道の適当な場所から森に入っていく。


「わっぷ。わっ、ぷっはぁ」


間抜けな息継ぎをしてライクちゃんが茂みから顔を出す。

俺の胸ほどしか身長が無いのだ。

蔦や草が絡んで大変なことになっている。



「こっちで、本当にあってるの?」



不安になりながら尋ねる。



「だいじょうぶっはっぷ」



何言ってるか分からない。

まぁ、転ばないだけ今回は良い。


しばらく歩いて森を突き抜けていく。


……辿り着いた先は、予想通り、あの神殿のある遺跡だった。



「この建物の中には、入っちゃダメだよ。

 キラービーなんて目じゃないレベルの、こわーい魔物がウヨウヨいるからね」



わざと怖い顔で脅すライクちゃん。

この建物とは、当然、あの地下廊下へと続く祠だ。



「ここ、お墓だったんだ……」



俺がつぶやく。



「正確に言えば、この『祠』だけだけどねー」



よっと。

ライクちゃんは両手を広げ、遺跡で平均台遊びをしている。


……ここの遺跡全体は「光の遺跡」という聖域らしい。

聖域の割には、俺たちの他に誰もいない。

あの時も、誰にも会わなかった。


聖域ならもっと人がいても良いんじゃないの?

とも思ったが、日本でも名のある神社が全て賑わっている訳ではない。



「めったに人は来ないよ。

 昔々の建物だもん。

 みんな毎日忙しく生活してれば、忘れちゃうよ」



はっ。

ぴしっと着地して、ライクちゃんは事もなげに言う。



「それで、なんでこんなとこに『ニューフィールド』さんのお墓が?」



尋ねてみる。



「うんとねー。確か行方不明になった後、魔王を倒したときの仲間が作ったんだって。

 なんでも、残ってた財産とか全部大金貨にして、遺品と一緒に納めたって。

 さっきのおっかない魔物も【ダンジョン化】の魔法で遺品を守るためだから、外には出れないよ」



遺品……

俺は、腰の剣に手を添える……

カチャリ、何かに頷くよう剣が鳴る。



「宝さがしにでも行ってみる?」



ライクちゃんはくるっと回って後ろを向く。


はははっ、と乾いた笑いで誤魔化す。

その宝、もう持ってますとは言えない。


遺跡を一通り見て回る。

もう一度「祠」の前に戻ってくる。

まぁここは、あまり広くは無い。

それは、散策した時に既に知っている。



「この先に小川があるから、休んで行こうか?」



提案してみる。



「おっ、いいね!

 お魚食べようよ」



ライクちゃんがのってくる。

釣り道具なんか無いってば。


俺は小川に向かって歩き出す。

すると、ライクちゃんが。



「おやおや、エイジ君ここで【アナライズ】しないとは通じゃないね。

 さっきまで、散々カシャカシャしてたのに」



どういうことだ?



「まぁまぁ、とにかくやってみて」



カシャ


魔導機で【アナライズ】してみる。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■

名前 記憶の祠

   注意!! 魔法付与!!

   注意!! 魔法付与!! 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■



「魔法付与が2回?」



俺は首を傾げる。



「これって、【ダンジョン化】以外にも魔法がかかっているってこと?」


「当たりぃ」



ライクちゃんが、指をさす。



「ここには【レコード】の魔法もかかっているんだよっ!

 ほら、あそこの石だけ、微妙に色が透明なのわかる?

 『祠』をつくるとき、一か所【レコード】がかかった魔石を使ってるの」


「行き先も告げず居なくなった英雄への腹いせに……

 仲間が悪戯で、格好悪いところを音で残したんだって」



これって、有名な話だよ?

とライクちゃんが教えてくれた。



「今でも英雄の生声が聞けるの?

 それ、凄い事なんじゃ?」



俺は言う。



「まぁ、凄いと言えば凄いけど……

 たかが、50年前だからねぇー

 とにかく、聞いてみてよっ」



50年もの間、自分の格好悪いところを誰彼かまわず聞かれるのか。

しかも、そのために魔石とやらを引っ張り出して再利用するなんて……

……英雄の仲間ってたち悪りぃな。



「その祠の前で『リプレイ』って唱えれば、聞こえるよ」


「とにかく、変だから」



とライクちゃん。

俺は祠の前に移動する。



「『リプレイ』」



祠の前で唱える。

おぉ!ほんとだ、何か耳元で聞こえる。

うっ、ちょっとノイズが凄い。

耳ぃ痛ぇ。















……ザッ……ザッザッ………………


………ザッ―――……………………


あーあー…おっ、大丈夫みたいだな。


……おい……本当に喋んのかよ……


……当たり前でしょ…………ザザッ


このあたしが用意した魔法よ………


ザッ…魔王と戦って死んじまったら


骨も残らねぇんだ………ザッ………


……遺言ぐらいしとけって…………


…ザッ…遺言なんかねぇよ…………


俺は天涯孤独だぞ……………………


ちょっと、そんなに魔力……………


続か……ないわよ…ザッ……………


……………ほら、……喋れよ………


………あー……………………………


えーと…………………ザッ…………


まぁ、何だ……………………………


もし、曲がりなりにも……俺の……


後継ぐ奴ができたら…………………


まぁ、あれだ…………ザッ…………


とにかくまぁ……「強くなれ」ザッ…


ザッ……プッ!何それー!…………


……うっせーな……止めだ止め!……












「ぷぷぷっ、変だよねー」



ライクちゃんが、後ろで笑っている。


……風が吹き抜ける。



「間抜けって言うか、締まらないって言うか…

 こんな人が「英雄」なんだから、笑っちゃうよねー」







……間違いなかった。


ちょっと声が若いが、あの声は爺さんの声だ。


「ノーレッジ・ニューフィールド」=「新原 則冶(のりじ)


俺の仮説の正さが証明された。



でも、そんなことは、どうでもよかった。

俺は泣きそうだった。



「どうしたの?」



ライクちゃんが心配そうに聞いて来る。



「うん、なんでもない」



俺は天を仰ぐ。

今度は、涙がこぼれないように。


この世界のどこかに居るであろう爺さんに。

万感の思いを込めて。



……遺品

……ダンジョン化

……大金貨



俺のチートな能力の秘密。



「……そっか、俺は爺さんに守られてたんだな」




■■■■■■■■■■■■■■■■■■

名前 エイジ・ニューフィールド 

職業 【英雄の子孫】←NEW!【冒険者】

   【げどう】【ヘンタイみならい】

装備 皮のよろい

   皮のブーツ

   形見の剣 ←NEW!

   やせいのパンツ

強さ

   略

スキル

   略

ゴミ箱         

   略

持ち物

   略

■■■■■■■■■■■■■■■■■■


■■■■■■■■■■■■■■■■■■

名前 ライク・ブルックリン 

職業 

   略

装備 布の服

   つば広帽子

   質素なしたぎ

   おてごろダガ―

   星屑の腕輪

強さ

   略

スキル

   略

ゴミ箱         

   

持ち物

   略

■■■■■■■■■■■■■■■■■■


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