第15話-虹色コガネ下
ちっさー。
蜂ちっさー。
えっ、かわいい。
しかも、ちょっとデフォルメされてて、かーわーいーいー。
何これ、こんなもん?
いや、でかいけど!?
通常のスズメバチより全然でかいけど!?
バスケットボールぐらいじゃん!
キラービーの出現に、俺は別の意味で戸惑っていた。
……確かに、町は魔王戦レベルの武器を扱っていた。
しかし、だからといって周りの全ての森や洞窟のレベルが高いわけではない。
そんな理屈が通るなら、そこで生活している町の人のレベルも高いはずだ。
武器の質に見合う場所も多いだろうが、それ以外の場所も無ければおかしい。
当然、モンスターのレベルにもバラつきはある。
当たり前だ。
そして、ここはEランクのクエストを行う森だ。
モンスターのレベルは、低いのが自然だろう。
それでも俺は、俺の身長ぐらいのモンスターは覚悟していた。
なぜかって?
俺の中でこの世界のモンスターとは、総じて、「でかい」、「ゴツイ」と思っていたからだ。
思い出してほしい。
地下廊下で戦った敵を。
狭い廊下とはいえ、スライムだって「道をふさぐような」大きさだった。
俺は、でかい、ゴツイ、を連発していたはずだ。
ひょっとして、あいつらザコじゃなかった?
俺の頭にある仮説が浮かぶ。
まぁ、いいや。
今はこの蜂を倒そう。
「ちょっと、待ってて」
一応、ライクちゃんを後ろに庇う。
俺はバスケットボールぐらいの蜂めがけて、剣を打ち下ろす。
ズバッ!!
当然、チート剣の威力は半端じゃない。
一撃で蜂を倒した。
蜂は消えていき、後には何かアイテムが残った。
「すごいっ!」
後ろでライクちゃんの驚く声が聞こえる。
……ふふっ、これや、ワイの求めていたのはこれやったんや!!
これぞ、異世界チート、ハーレムの醍醐味や!
苦節15話にして、ようやく出来たんや。
現実では、味わったことないで、ホンマ。
ほぼ逝きかけたから、思考を落ち着かせる。
変な関西弁が出た。
俺は関東人だ。落ち着け。
ライクちゃんを後ろに庇って良かった。
今の顔は見せられない。
「……もう、大丈夫だよ」
3組に入れそうなサワヤカさで、ライクちゃんに声をかける。
「エイジ君、本当に強いんだね。
見直しちゃった!」
良かった、機嫌も直ったみたいだ。
「さっ、行こうか」
先に行こうとする。
早くしないと、虹色コガネが地中に潜ってしまう。
しかし、キラービーのドロップアイテムを放置したら、ライクちゃんに怒られた。
もったいないという話ではない。
曰く、ドロップアイテムを放置すると、再びモンスターになるらしいのだ。
最悪、ドロップアイテム同士が混ざり、より強力なモンスターになることもある。
スライムの結合体、キングスライムなども、この方法で生まれるらしい。
そうならない様、回収する。
一度回収し人の手が入ると、それはアイテムになるだそうだ。
要は加工すればいいのか。
「アイテム回収は、冒険者の義務だよっ!」
めッ!のポーズをとりながら、ライクちゃんが教えてくれた。
……その後、俺たちは順調に虹色コガネをゲット……するはずだった。
しかし、ライクちゃん。
ことあるごとにトラブルを起こす。
なんと、キラービー遭遇率は、驚きの8割だ。
お前は、伝説のバッターかよ!
多分、作者の悪意を感じるから、血のつながりで親父と同質なんだろう。
おっと、疲労でわけのわからんことを口走った。
虹色コガネの捕獲ノルマは10匹。
さんざん、ライクちゃんに引っ掻き回されながら、どうにか11匹までゲットした。
もちろん帰りも散々だった。
日はすっかり昇っている
もう昼だ。
「おぉ、無事だったね」
森の切れ間、今朝の集合場所にガーターさんが待機していてくれた。
一応、俺のマネージャーなので、クエスト中はギルドの仕事に拘束されず自由に動けるらしい。
「エイジ君ね、本当に強かった!」
ガーターさんに飛びつくライクちゃん。
今日の成果を嬉々として報告していた。
強いと思ったから、ボディガードにしたのではないのか?
まったく、あたしゃ疲れたよ。トホホ。
……でも、俺には、まだやることがある。
ガーターさんに虹色コガネ10匹を納品し、クエスト終了を確認。
ガーターさんがあとの手続はやってくれるらしい。
雑務を押しつけてばかりで悪いと言ったら……
「これが、マネージャーの仕事なんだよ」
とのこと。
なるほど、冒険者が命をかけて調達し、マネージャーが雑務を管理するのか。
効率的ではある。
そのおかげで、ギルドまで足を運ばず現地で解散することが出来た。
ライクちゃんを家に帰す。
俺は、その足で市場に向かう。
手には1匹の虹色コガネ。
工房を探し、これを「思い出のペンダント」に加工してもらう。
……いいか、くさいとかいうなよ。
俺は、このペンダントをライクちゃんにあげるつもりだ。
彼女がクエストに参加した記念。
これから、お世話になるんだ。
それくらいしてあげたって、罰は当たらない。
ちっ、違うからね。他意はないんだからねっ!!
……ブルックリン家に帰ると、ライクちゃんは装備を庭で干していた。
春風が、彼女の髪を揺らす。
俺は、彼女に近づき優しく告げる。
伸ばした手には、思い出のペンダント。
「今日は、お疲れ様。
これ、クエストの記念品」
口元に片手を添え、彼女は驚く。
そして、戸惑いの表情を浮かべる。
クリっとした瞳が俺を見つめる。
そして……申し訳なさそうに言った。
「あっ……それ、もう持ってるよ」っと
春
突き抜けるような青空。
俺は天を仰ぐ。
この世界のどこかに居るであろう爺さんに。
万感の思いを込めて。
思いよ届けと言葉を紡ぐ。
「虫取りなんてつまらねぇわ」と。
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名前 エイジ・ニューフィールド (精神的に死亡) ←NEW!
職業
略
装備
略
強さ
略
スキル
略
ゴミ箱
略
持ち物
ランタン
ラスト・ポーションEX
ギルド長のうらみ
サバイバルメモ
はちみつ X 74個 ←NEW!
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名前 ライク・ブルックリン
職業 【マネージャーみならい】【夢見る少女】
【世話焼きっ子】
装備 布の服
質素なしたぎ
おてごろダガ―
星屑の腕輪
強さ
レベル 3 ←NEW!
生命力 13
攻撃力 12
守備力 15
魔法力 2
素早さ 16
友好度 30 ←NEW!
スキル
略
ゴミ箱
持ち物
思い出のペンダント(だいじなもの) ←NEW!
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