第14話-虹色コガネ上
朝。
まだ、薄暗いうちから用意を始める。
『虹色コガネ』は早朝に樹液を吸いに水晶の木に集まる。
それ以外の時間は、地中に潜ってしまうそうだ。
何か変な虫だ。
まぁ要するに、採集するのはこの時間しかない、ということだ。
「本当に、大丈夫かい?」
ガーターさんが不安そうに尋ねる。
ガーターさんは、あの後、娘の全力拒否によってお留守番が決定した。
ギルドでクエスト受理の事務をしてくれるそうだ。
俺のステータスを知っているから、娘の同行も許したのだ。
その面では、文句は無い。
男が娘と二人きりというとこも、俺を信頼してくれているようだ。
「大丈夫?」発言は娘を思うゆえの心情だろう。
「大丈夫よ、お父さん。
本番に近い形で、クエストを経験してみたいの。
Sランクのエイジ君に、
Eランクのクエストが出来ないわけないでしょっ!」
父さんが来る方が危険になるとは言えないらしい。
笑いながら、ライクちゃんが諭す。
今日のライクちゃんは冒険者らしい軽装だ。
皮のベストとグリーンの布のスカート。
腰にはバックルの大きいベルト。
スカートとは言っても、森に入るため、生足ではない。
腿まであるハイソックスと皮のロングブーツ着用だ。
ざんね……いや。
当然だろう。
おいそこ、軽蔑の視線はやめろ。
癖になったらどうする。
ぶっちゃけ、俺より装備が良い。
ギルドのランクは、EからSまであるらしい。
自分のランクまでの依頼は、どれを受けても良い。
つまり、Sランクの俺はどの依頼でも出来るのだ。
『虹色コガネ』は、「思い出のペンダント」というアイテムの材料になるみたいだ。
この町の技術レベルでは加工も楽で、すぐ仕上がるらしい。
そのため、定期的にEランクにクエストの依頼があるとのことだ。
「不安だなぁ」
ガーターさんがつぶやく。
しかし、さすがは、情報サポートだけはナンバー1。
穴場の場所の地図と要点をまとめたサバイバルメモを渡してくれた。
どちらも、よく整理されており見やすい。
こういうとこはさすがに一流だ。
「いいなぁ……わたしも行きたいなぁ……」
ガーターさんはまだ言ってる。
なんか単純にクエスト行きたいだけなんじゃ?
子供かこの人は。
このままだと尾行してでも来そうなので、早々に出発した。
……森の中は、早朝と言うこともあって視界が悪い。
はぐれない様、ライクちゃんと手をつなぐ。
ん?
うらやましいか?
くっくっくっ……
手袋2枚重ね着用だよ。
チクショー!!!
いや、これは俺が嫌いなわけではない。
水晶の木は鋭い枝もあるらしく素手では危険なのだ。
本当だ。
嫌われてない。
大丈夫だ。
自分に言い聞かせながら森を歩く。
ガーターさんがくれた地図を、灯で照らし確認する。
ギルドで使ってる蛍光灯並みの灯だ。
どうやら、中で石が光っている。
火を使わないらしい。
ついでに言うと、冒険者ギルドに所属したので、魔導機も使用できる。
「使用できる」と言うのは、許可があると言う意味だ。
【アナライズ】以外にも魔導機には多彩な機能がある。
一般人が易々と使うことは出来ない。
冒険者とマネージャー、一部の例外者のみが使用できる。
まぁ【アナライズ】だけでも、個人情報の一部が分かってしまうのだ。
これぐらいの規制はあるだろう。
俺は、自分の魔導機をまだ買っていないので借り物だ。
とりあえず【アナライズ】のやり方だけ教えてもらった。
ぶっちゃけ、写メと同じです。
ハイ、残念。ファンタジー感ゼーロー!
「あっ、あったよエイジ君!」
10分ぐらい歩くと、横から声がかかった。
ライクちゃんが、前方に水晶の木を見つけたらしい。
本来なかなか見つからないらしいが、こっちには穴場の地図がある。
さすがに早い。
しかし、この薄暗い中で見つけるとは、ライクちゃん優秀なんじゃ?
「すごい! 早く行こう!」
あっ、急に走ると危ない。
っと言うが早いか転倒した。
見事な三回転半ひねり。
優秀だと思った矢先、ずっこける。
こやつ……出来るっ!!
ライクちゃんがスカートを抑えながら、うつ伏せの姿勢でこっちを見ている。
「エイジ君……見えた?」
水晶の木だろうか?
「薄暗くてよく見えなかった。
俺も目が良ければなぁ」
正直に言う。
「エイジ君のえっち!!」
ライクちゃんが姿勢を直して、近くの木をバシッと叩く。
えっなんで?
俺、悪い事言った?
そのとき。
ぶうぅうううぅうんという、羽音がした。
ライクちゃんが急いで俺に近づく。
酷くびくびくしてる。
「どうしよう……あたし、キラービー呼んじゃった……」
森の中には、巨大な蜂の魔物がいる。
樹上に巣をつくるから、やたらと木を叩いてはいけない。
事前にガーターさんから注意を受けていたことだ。
羽音はだんだん大きくなる。
「くそっ、戦闘か」
俺は剣を抜き、両手で正面に構えた。
そこに現れたのは……
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名前 エイジ・ニューフィールド
職業
略
装備
略
強さ
略
スキル
略
ゴミ箱
略
持ち物
ランタン
ラスト・ポーションEX
ギルド長のうらみ
サバイバルメモ ←NEW!
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名前 ライク・ブルックリン (動揺) ←NEW!
職業
略
装備 布の服(緑スカート)
皮のベスト
皮のベルト
質素なしたぎ
おてごろダガ―
星屑の腕輪
ハイソックス
皮のロングブーツ
強さ
略
スキル
【トラブルメイカー】 ←NEW!
ゴミ箱
持ち物
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