第13話-やっとこさ、ヒロイン
それでは、あらためましてっ!
ようこそ、エイジ君! ブルックリン家へ!
パチパチパチと拍手が鳴る。
テーブルの上に並べられたご馳走。
チキン・サラダ・スープ・フルーツ盛り・ケーキ……
どれも力作で、美味しそうだ。
「それでは、まずは自己紹介をしようか」
父親らしくガーターさんが仕切る。
そう、ガーターさんの家で、俺の歓迎会が始まったのだ。
「まずは、わたし、ガーター・ブルックリン。
そういえば、ちゃんと名乗るのは初めてだったね。
これからよろしく頼むよ。エイジ君」
ガーターさんが果汁水の瓶を傾けながら名乗る。
「はい、こちらこそ、宜しくお願いします」
俺は急いでグラスを傾けながら、ワタワタと酌を受ける。
その様子を見ながら、奥さんのレエンさんが笑う。
「さて、こっちが妻のレエンだ」
ガーターさんが紹介する。
俺もそちらを向いて会釈した。
「よろしくね。エイジ君」
レエンさんが、ニコっとほほ笑む。
金髪の長髪。翡翠色の瞳。
耳にかかった髪をかき上げながら淑やかに挨拶された。
優しい修道女の様な雰囲気。
ほわほわっとした性格。
そして何より巨乳だ。
40代らしいが、見様によっては20代で通る。
正直、ガーターさんにはもったいない。
こんな美人にほほ笑まれては、俺も照れるしかない。
「はっ、はい」
テレッテレッと頭を掻く。
「あー、エイジ君、照れてる!」
元気いっぱいに俺をからかうのは、一人娘のライクちゃんだ。
活発な16歳の女の子。
親しみやすい笑顔を向けてくれる。
ポニーテールの様に後ろで束ねた髪が揺れる。
ガーターさんに似て瞳と髪は茶色だ。
だが、やはりレエンさんの子。
クリクリっとした瞳と桜色のほっぺ。
結構、いやかなりの美人だ。
そして、もちろん胸もレエンさん譲りの……
……いや、見なかったことにしよう。
貧乳はステータスだ。
腕まくりした細い腕を伸ばして、せっせっとサラダを取り分けている。
「ライク、サラダはいいから挨拶なさい」
ガーターさんに促され、手を止める。
「あっごめんね、エイジ君」
サラダフォークを置いて居住いを正す。
おほん、と咳払いをして。
「あたしは、ライク・ブルックリン。
将来は、冒険者ギルドのマネージャーになるの!」
手を当てて胸を張る。
自分の夢まで語ってくれた。
絵に書いた様な暖かい家庭。
これでは、ガーターさんがリストラを言いだ出せないのも頷ける。
頑張って……はいないけど、冒険者ギルドに入って良かったと思う。
最初は、居候ってことで迷惑がられるんじゃないかと不安だった。
しかし、どうやら杞憂だったようだ。
レエンさんも、ライクちゃんも本当に優しい。
明日からこんな美人2人に囲まれて生活できるのだ。
ニヤニヤが止まらないというものだ。
「あっー、美味しかったぁ!」
ご馳走をすっかり平らげた。
誇張抜きで最高だった。
異世界に来て、こんなに旨いものを食えるとは思わなかった。
「うふふ、お粗末さま」
レエンさんが、食器を下げる。
ライクちゃんは、俺の旅人設定に興味津々だ。
「ねぇねぇ、どっから来たの?」とか。
「特技は?」とか。
「この町にはどうやって?」とか。
「いままで一番美味しかった食べ物は?」とか。
「どうやって、強くなったの?」とか。
食事中も質問攻めをしてきた。
強くなったと聞いてくるから、ステータスは知っているらしい。
自分の父がSランクの担当と言うことも理解しているのだろう。
でも、ガーターさんは、約束を守って家族にすら「英雄」の件を話していないようだ。
俺も適当にお茶を濁す。
しばらく、団らんを満喫していると。
「さて、エイジ君、クエストはどうする?」
と、ガーターさんが切り出してきた。
「俺としては、なるべく簡単なのから慣らして行きたいんですが……」
正直なところを言う。
「うん、わたしも、それが良いと思っていたんだ。
その強さでも、今まで冒険者では無かったのだから、まずは仕事に慣れると良い」
ガーターさんも合意してくれる。
「そのかわり、しばらくクエストの報酬は全部ガーターさんが取ってください」
ガーターさんからは言いづらい事だから、俺から言おう。
確か、マネージャーとの取り分は自由に決めるはずだ。
「そ、それはだめだよ。ちゃんと割合をきめないと」
ガーターさんが、抗議する。
「いいんです、旅の資金があるので、小遣い程度は持ち合わせがあります。
それに居候させていただくわけですから」
嘘は言ってない。
俺には大金貨がある。まぁ使えない金だが。
それに、衣・食・住が満たされているのも事実だ。
むむむっと悩んだが、最終的に9:1の割合にすることでガーターさんが折れた。
「そのかわり、困ったことがあれば何でも言ってくれ。
わたしたちは、パートナーであり、家族の様なものなのだから」
そうだよっ! っとライクちゃんも口を出す。
嬉しい限りだ。
報酬の面から言えばパートナーは事実だが、家族とまで言ってくれたのが嬉しい。
「それでは、簡単なクエスト……か……
……そうだな、『虹色コガネの採集』なんて、どうかな?」
と、ガーターさん。
「うん、うん、それがいいよ」
ライクちゃんも頷く。
ガーターさんは気合いを入れて……
「よーし、そのランクだと、わたしも現場で手伝えるな!
明日は、はりきっちゃうぞぉ!」
あははっと笑いながら、娘にアピールする。
ピシッ
ライクちゃんが固まる。
えっ、さっきまで賛成していたのに、なんで?
ライクちゃんが俺を引っ張る。
リビングの端の方へ移動する。
「どっ、どうしたの?」
俺が不審に思って質問すると、ライクちゃんはコソコソっと話した。
「あのね。お父さん、情報サポートではSランク1番って言われてるんだけど……
ちょっと、夢中になっちゃう人でね……」
現場でのクエストには向かないっていうか……なんていうか……」
ごにょごにょと申し訳なさそうにつぶやく。
……そうだ、思い出した。
もともと、ガーターさんがリストラされそうになった理由……
ガーターさんは、ペアの冒険者に逃げられたのだ。
もちろん、リストラを秘密にする約束だから、ライクちゃんには話さない。
なるほど、クエストで足を引っ張るのが原因だったのか。
測定やギルドでのことと言い、それも頷ける。
「それでねっ」
「あのねっ」
まだ何かあるのだろうか。
「……明日、あたしと一緒に行かない?」
言いずらそうに上目使いで聞いてくる。
……その目はやめろ、断れなくなるじゃないか。
「あっ、あたしも、将来ギルドで働きたいから……
クエスト経験したいなぁって……」
……そういうことか。
ちょっとデートのお誘いみたいだったから期待したのに。
おいそこ笑うな。
くそ、お前ら爆発しろ。
「俺は構わないけど…
危なくないの?」
苦し紛れに、真っ当な事を質問する。
「そこは、エイジ君、強いんでしょ?」
くそ、ボディガードにしか見られてない。
がっかりだよぉぉお!
「がっ、ガーターさんに聞いてみないとねぇ……」
最後の抵抗。
便利な男と思われるのは癪だ。
「えっ、ライクも来るの? わたしは、べつにいいけど。
2人ともすっかり仲良しだなぁ!」
かるーい!!
すごくかるーい!
最後の牙城。
父親の許可が発砲スチロール製だったことに失望した。
こうして、俺は、初クエスト『虹色コガネ採集』を受けることになった。
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名前 エイジ・ニューフィールド
職業
略
装備
略
強さ
略
スキル
略
ゴミ箱
略
持ち物
略
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名前 ライク・ブルックリン ←NEW!
職業 【マネージャーみならい】【夢見る少女】
【世話焼きっ子】
装備 布の服
質素なしたぎ
おてごろダガ―
星屑の腕輪
強さ
レベル 1
生命力 10
攻撃力 9
守備力 7
魔法力 1
素早さ 8
友好度 20
スキル
???
ゴミ箱
持ち物
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