第11話-奥の手
「ギルド長、なぜなんですか!?」
ドンっ! と机をたたくガーターさん。
テーブルの対面には、初老の男。
くしゃっとしているが、愛嬌のある顔だ。
白い口髭をはやし、白髪ばかりの髪の毛は後退を始めている。
体躯の良さからは、かつて冒険者として活躍したことが窺われる。
見た目で比べれば、筋骨隆々の彼に、俺は勝てそうにもない。
ギルド長は腕を組んで目を瞑り、じっとガーターさんの話を聞いている。
部屋に入ってきた俺に気がつくと、ガーターさんは隣に座るよう指示した。
そして、今、3人でテーブルを囲んでいる。
「なぜって、おめぇ……」
目を開き、応えようとするギルド長。
しかし、ガーターさんはそれを遮る。
「彼のステータスはSランクとして申し分ない!
いや、成長率を踏まえれば、数十年に一度の逸材です!」
力説するガーターさん。
どうやら、俺のギルド加入で揉めているらしい。
「いや、だからな……」
気迫に押されつつも、説明をしようとするギルド長。
「そんなに、わたしをクビにしたいんですか!」
ガーターさんも必死だ。しかし、熱が入りすぎてる。
この人は、熱中すると周りが見えなくなるようだ。
「落ち着いてください。ガーターさん」
俺は横から口を挟む。
まずはギルド長の話が聞きたい。
このままじゃ状況が把握できない。
「……だからな、今日は、闇の日だ」
ギルド長が話す。
ん? それがどうした。
「どの支部もギルドは休業日だよ。
登録事務なんてできねぇっての」
あぁ……そういうことか。
リストラを回避する条件は「1週間以内に」新規で冒険者を加入させることだ。
闇の日は休業日だから、実質、期限は土の日まで。
ギルドに勤めているガーターさんが、業務日を知らないわけは無い。
これは、ガーターさんにも過失がある。
「悪いが、同じ条件の奴はごまんといる。
ガーター、あんたの腕は知ってるが、特別扱いはできねぇ。
他の奴らに、示しがつかねぇからな……」
ギルド長は申し訳なさそうに語る。
「そこの坊主には、責任をもって別のマネージャーをつける。
悪いが……あきらめてくれ」
リストラなんか、する方だって嫌なのだ。
気まずそうに、ギルド長が告げる。
しみったれた雰囲気が漂う。
「……しかし、約束は『1週間』のはずだ。」
ガーターさんは、悔しそうに下を向いている。
そう、条件は1週間。
7日の意味でとらえればギリギリセーフのはずだ。
この点は、条件を明確にしておかなかったギルドの過失だ。
俺はぼんやりと二人の様子を見ながら考えた。
俺にとっても冒険者ギルドに入ることは重要だ。
この異世界で「爺さんを探す」と言う目的が出来てしまったから。
生活費やギルドの伝手での情報収集。
サポートする後ろ盾がある方が、目的ははるかに遂げ易い。
話のなり行きからすれば、俺のギルドへの加入は認めてくれるらしい。
しかし、問題はマネージャーだ。
俺はすっかりガーターさんの家にお世話になるつもりだった。
だが、マネージャーという関係がなくなれば、居候することは難しい。
さらに素性が他人に知られるのも面倒だ。
例の約束があるガーターさんの方が安心できる。
もはやリストラ阻止は、ガーターさんを助けるだけではない。
俺自身の問題でもあるのだ。
仕方がない。
多少強引だが、この方法を使わせてもらう。
「ギルド長……
ギルド長はご結婚されてますよね」
俺はギルド長に視線を向ける。
あん? それがどうした、と言いたげに、ギルド長がこちらを睨む。
「ミスティ…リノ…ティア…クレア…エル…アルト…」
俺はぼそぼそと、だが確実に聞き取れる声で、女性の名前を呪文のようにつぶやいた。
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名前 エイジ・ニューフィールド
職業 【冒険者(仮)】【ヘンタイみならい】
【ひきょう者】 ←NEW!
装備
略
強さ
略
スキル
【考察】【諜報】【やさしい心】【おとこの友情】
【おどす】 ←NEW!
ゴミ箱
略
持ち物
略
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