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異世界クエスト  作者: 太郎
異世界クエスト上
10/95

第9話-シェイクハンド

ここは深夜の冒険者ギルド。

既に町はどっぷりと闇に染まっている。

犬の遠吠えだけが、夜のしじまに木霊する。


部屋には発汗による湿気が籠っていた。

ねっとりとまとわりつく空気。


そこに、男が2人向かい合う。


一人は、満面の笑みを浮かべた中年の男性。

もう一人は、半裸でじっとりと汗を掻く少年。


はぁ…はぁ…はぁ…

少年の呼吸は荒い。


あ~、いま、いやらしいこと考えたでしょ。めッ!



たび重なる測定に、すっかりバテ気味だ。

しかし、測定を終えたエイジの記録はまさに規格外だった。


~~~~~~~~~~~~~

強さ

   レベル  42

   生命力  420

   攻撃力 2920

   守備力  420

   魔法力  420

   素早さ  420

~~~~~~~~~~~~~






「すばらしい。その年で、これほどとは!」



おじさんは、さっきから感動しっぱなしだ。

俺は、何のことだか分からない。

というか、測定ですごく疲れた。


身体の火照りが取れるにつれ、汗が冷たくなってきた。


上半身裸なのは、鎧の皮の部分が集中していたからだ。

皮が汗を吸って臭わない様、脱いだ方が良いと言われた。



「いい……かげん……、わかる様に……説明してください」



息も絶え絶えに、おじさんに質問する。

疲労で、若干声がイラついている。



「あぁ、ごめん」



どこからか出した手ぬぐいを投げてくれる。

汗を拭きながら、話を聞く。

おじさんは、疲れた俺を気遣って、手短に説明してくれた。



まとめると、こうだ。


……どうやら「ニューフィールド」と言うのは特別な名字。

なんでも50年前、魔王を倒した「英雄」の名字らしい。

その「英雄」は魔王を倒した後、忽然と姿を消した。

そいつ以外で、名字「ニューフィールド」を名乗る者は誰もいない。

まぁ詳しいことは、図書館に行けばわかると言われた。


そして【アナライズ】。

アナライズに嘘は無い。

俺が「英雄」の名字を、さらっと名乗ったもんだから調べたそうだ。

名を語ったのかと思ったら、まさかの本物。


これでクビがつながるかもしれない!

その後は、もう夢中だったそうだ。


消えた英雄の子孫。

確かに、Sランクの素質十分だ。


そして実力をはかろうと「測定」。

……その結果も驚くべきものだったらしい。

もちろん、元の世界では、「能力の数値化」なんてしたことは無い。

でも、おじさんのテンションをみたら、凄いものなんだとは分かる。


だって徹夜明けの友達みたいに絡んでくるもの。


あっ誤解してほしくないが、俺にも友達はいるよ?


うっ、なんだ その目は……

……嘘じゃない。本当にいる。


まずは、俺のレベル。42。

これは冒険者としてみても、熟練の域に入るみたいだ。

なんせ、レベル35オーバーが、

4人パーティでも組めば、ドラゴンを倒せるらしい。

まぁ肝心のドラゴンの強さを、俺は知らないんだが。

このレベルならSランクの依頼も余裕、だそうだ。


そして、各種ステータス。

レベル42で、平均420(攻撃力はちょっと除く)。

これも異常だそうだ。

1レベルアップごとに、10上がる計算。

普通は1レベルごとに、1~8が限度らしい。

つまり、成長率も半端じゃないのだ。


最後に、攻撃力。

ぶっちゃけ、これは剣が特殊だ。

攻撃力補正が2500とかおかしい。

あのとき剣で放った一撃は、オリハルゴンの鎧を紙みたいに切り裂いた。

ダミー人形までぶっ壊れ、壁と床に亀裂も走った。

建物が無事だったのが不思議なくらいだ。


ステータスは、普通、生身の強さであって、装備品は度外視されるらしい。

しかし、この剣の場合、どういうわけか反映される。

試しに腰から剣をはずし、取り替えたダミー人形を拳で殴ると420だった。


錆びた剣、つえぇ。



つまり、おじさん曰く、総合すると……



「……磨き終えたばかりのダイヤを、道端で拾ったようだ!」



ということらしい。



「きっと絶え間ぬ修練の結果なのだろう」



おじさんは一人で納得している。

いや、置いていかないでほしい。


修練と言っても、俺は地下廊下でザコモンスターを倒したぐらいの経験しかない。

こんなチートな設定を聞いても実感がない。


しがない高校生が英雄の血筋で高能力とかすげぇ。


これが噂の異世界チートってやつか。


作者め、やっとかよ。何話かかってんだ。


……など、まともな考えが浮かばない。


具体的には最後1行が特におかしい。


そうだ。

この能力はチート。

いわゆるズルだ。


賢明な人なら、この能力は隠しておくか、不正であることを告げただろう。

俺が不幸だったのは、能力を初めから自覚していなかったこと。

そして、それを発覚させた張本人が、助けを求めていたことだ。


俺だって、無類のお人好しってわけではない。

普通は、今日出会ったばかりのおじさんに、入れ込むことはしないだろう。

同情して終わりだ。


……でも、何時間も俺に付き合って話してくれたおじさんの優しさ。

あれは本当に嬉しかったんだ。


パンツで荒みきった俺の心が、元気になったんだ。



「おじさん」



俺はおじさんの方に手を伸ばした。


親愛の表現であり、合意のあかし。

あの時、うやむやになった挨拶を今こそしよう。



「わたしは、ガーターだ。

 よろしく頼むよ」



おじさんも手を伸ばす。


男同士の熱い握手。


もう、リストラおじさんは、ここにはいない。




■■■■■■■■■■■■■■■■■■

名前 エイジ・ニューフィールド 

職業 【冒険者(仮)】【ヘンタイみならい】

装備 皮のよろい

   皮のブーツ

   すごい錆びた剣

   やせいのパンツ

強さ

   レベル  42

   生命力  420

   攻撃力 2920

   守備力  420

   魔法力  420

   素早さ  420

スキル

   【考察】【諜報】【やさしい心】【おとこの友情】←NEW!

ゴミ箱         

   しゅうちしん     

   ゆうき

   こんじょう

持ち物

   ランタン

   ラスト・ポーションEX

   たくさん食料

■■■■■■■■■■■■■■■■■■

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