身勝手な自死2
まだ日陰には固まった雪が少し残る並木道。
暖冬と聞いていたが、この地域では相も変わらず4月になっても白杖が雪に突き刺さる。
勤めている治療院からの帰り道、自宅までの帰路はまさに田舎と言わんばかりに田畑や自然に囲まれている。
同様に途中の右折して軽い登り傾斜を進むと、今年度から結衣が通い始めた北岡小学校がある。
山の中腹に位置するその学校は桜の木に囲まれて、麓から見上げるとそれは美しい風景らしい。
結衣は桜の木からたまに落下してくる毛虫が嫌だという感想しか抱いてなかったが。
「二時か。』
音声時計で時刻を確認して立ち止まる。
確か今日は五時限授業なはずだから少し待てば結衣と一緒に帰れるだろうか?
いや、友達と下校するとしたらおじさんは邪魔だよな。
そんなこと考えながらもやっぱり一緒に帰りたい。
1人微笑を浮かべながら少し恥ずかしくなって、誰に見られてるわけでもないのに照れ隠しに頭をかいた。
「あれ?結衣ちゃんパパ?』
色々考えてを巡らせる内にいつの間にか子供たちの声が通り過ぎており、その中から聞き慣れた声が聞こえた。
「その声。加奈ちゃんかな?』
「あったりー。』と明るい声を響かせながら近づいて来る足音に僕は笑顔を向けた。
内村加奈。
結衣がお世話になっていた保育所で結衣と一番仲良くしてくれていた子供だ。
保育所のお迎えの際には不思議そうに目の見えない男を眺める子供たちの中、唯一毎回声をかけてくれて結衣に迎えを知らせに行ってくれていた。
何と言うか、無邪気で子供子供している結衣に世話を焼いてくれる姉御肌な子供という印象だ。
「ばいばーい。』
恐らく手を振ってくれていた加奈に手を振りかえし見送る。
結衣と違うクラスになってしまった彼女の学校の感想を聞きながら、掃除登板だったからもう少しで来ると思うよとの結衣情報を教えてくれた。
もうすぐ結衣に会える。
朝別れたばかりだと言うのに自分でもおかしい父親だと思う。
まるで恋に恋焦がれるようなたまに耳にする何とかデレとか言うやつか?
勘違いされないように気をつけよう。
たった1人の娘。
たった1人の家族。
たった一つの暗闇の中の光。
「うっ!?』
突然の頭痛に思わず眉間に皺を寄せてこめかみを抑えた。
最近寝不足が続いているせいかたまり急な頭痛に襲われる。
他人の身体を緩和させる按摩鍼灸師がこんなんでは元もこもないな。
気をつけようと反省しながら意識を正常に戻すと、少し離れた登り傾斜のほうから賑やかな声が聞こえた。
賑やか?
いや、騒がしい声の雑踏の中に・・・鳴き声?
「パパ?ーっ!!』
その瞬間走り出した。
何も見えなくていい。
ただその声のする方へ。
「結衣っ!?』




