3話 橘ダンジョン(違法)
「国が知らないダンジョン!?それっていいの!?」
驚く総司きゅん。いい訳ねぇだろ、悪用したら国に把握されない超人育成出来るんだぞ?しかも資源も取り放題、バレたら余裕で国家転覆罪…全員死刑だわ。
「いいわけがないでしょう、だから絶対に秘密です…さぁいきますよ」
コッ…コッ…階段を降りる音が反響する。ここを発見したのはまだ若かりし頃のじじいだ。
武者修行の旅をしながら各地のダンジョンから逃げ出した、山に潜むゲキ強モンスターを狩りまくっていた時に偶然見つけたらしい。
普通ならここで国に報告するのだがじじいは報告せず一帯の土地を買い上げた。理由は簡単、ここを代々橘家の修行場にする為。
……いやぁやっぱイカレてるね!国が怖くねぇのかな!
「うわ…」
異空間へと繋がるモヤ、ゲートを見てブルりと身を竦ませる総司。
ダンジョンを初めて目の当たりにする人間はほとんどこうなる。
初めての時は俺もこうなった。なんていうのかな…心霊スポットとかでゾクゾクする感じ、アレに似てる。
「怖いですか?」
「…」
下を向く総司。俺は彼の正面に立つと頭を撫でた。
「大丈夫ですよ、私が守りますから」
普段の無表情とは違い、優しく声をかける。
さて、ここで今までの俺と総司きゅんのについてちょっと掘り下げよう。
彼と俺の出会いは6年前に遡る。あれはまだ父親が壮健であった頃、俺のマッマが病死した1年後に再婚するといって連れてきたのが新しいマッマと総司きゅん。
実は彼…義弟なのだ。
大事な事なのでもっかい言う…義弟なのだ。
当時10歳だった俺は新しいマッマとは仲良く出来なかったが総司きゅんは歓迎した。
それこそ一緒に風呂入ったり仲良く稽古もしていた。だがその幸せは長く続かない。
それから2年後にパッパとマッマがダンジョンで失踪したのだ。
パッパは橘の人間なので修羅だったが新しいマッマも高位ダンジョン探索者だった。で、どこだったか…確かドイツかなんかにある超位ダンジョン探索して戻らなかった。
当然それを知った当時俺も総司くんも泣いた、ギャン泣きだ。
じじいは戦いに生きるものとしての覚悟が…とかほざいて俺らに逆にブチギレしてきたが夜中に酒飲みながら泣いてるのを見ちゃったんだよね……。
そして過去の俺はその日以降、覚悟を改めた。強くならなければ…と。
そうして覚悟ガンギマリの俺は橘の天才的血筋もあり地獄の修行を僅か1年で完璧に乗り越え、橘流を皆伝した俺はさらなる高みを求めて13歳にして橘ダンジョンへと乗り込み今に至る。
当然その間、今までみたいに弟にかまけている時間などない。また、守りたいって気持ちとは裏腹にみんなの為に強くなろうとしてるのになんで総司はのうのうと……って鬱憤も胸の奥にあったんで関係は冷え込んだ。まぁ今考えたら総司きゅんには橘のイカれた修羅の血が宿ってないから同じ様に修練が進むわけもない、それに毎日一言二言雑談する位はしてた。
で、話は前世を思い出した今に繋がる。俺は総司きゅんが落ち着くのを待って声をかけた。
「総司…今まで昔みたいに優しく出来なくてごめんね、でも総司には強くなって欲しかったの……お父さんやあなたのお母さんみたいにいなくなって欲しくなかったから……だから甘えて欲しくなくて私は…突き放した」
「姉ちゃん……」
ちなみにここ俺泣きそうな顔ね?
「でもそれじゃダメだって気づいたの…総司には橘の血は流れてない、だからお爺様の指導だけでは絶対先に限界がくる…」
「…」
「だからダンジョンで、あなたのお母さんみたいなやり方で強くなるのも大事だって思ったの、だからここでお姉ちゃんと一緒に強くなろう…もう家族を失わない為に」
優しく総司きゅんの手を握る。そして彼はその手を強く握り返した。
「うん…分かったよ姉ちゃん……一緒に強くなろう!昔みたいにまた…仲良く一緒に笑えるように!」
そうして手を繋いだままモヤの様なゲートをくぐる。ここまでお膳立てが揃えば誰でも分かるであろう俺の目的。
そう
今日ここで総司きゅんを
俺の手で精通まで導く事だ
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